「友愛」「博愛」の2つの訳
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 10:19 UTC 版)
英語の fraternity にあたるフランス語は fraternité (フラテルニテ)である。このフランス語が日本で知られ始めたのは日本の開国の期間でありフランス革命に関するフランス語「Liberté, Égalité, Fraternité」の翻訳は、「自由、平等、友愛」と、他によく知られる「自由、平等、博愛」がある。その言葉が日本にもたらされた時期は日本開国の頃であり、その時期フランスではブルジョワジーにより階級特権的にフィランソロピーが行われ、fraternité が博愛の意味を含んでいた。 21世紀現在、日本の各社が出版する仏和辞典の fraternité の項目にある説明は、友愛、兄弟愛、同胞愛、友愛団体などであり、博愛の文字はほとんどない。また、日本語自体の「友愛」と「博愛」は同義語ではない。例えば英語で「友愛」を fraternity 以外に翻訳した場合は brotherhood (ブラザーフッド)、friendship (フレンドシップ)などである。「博愛」を英語に翻訳するならば、philanthropy (フィランソロピー)、charity (チャリティー)などである。 1890年発布の教育ニ関スル勅語(教育勅語)の原文に「徳目」の解釈としての友愛はあるが、「友愛」の文字自体はない。「博愛」の文字は教育勅語原文にある。教育勅語は水戸学の影響という説もあり、その博愛は人間だけでなく動植物への愛護に及ぶという説もある。ユニテリアンは教育勅語の内容に賛同していた。 福澤諭吉はユニテリアンの思想を博愛として紹介した。ユニテリアンを当初は強力に支援していた福澤であるが、1897年頃にはユニテリアンとの人間関係などに失望し、支援を止めた。福澤一門が編纂した1900年発表の『修身要領』では、その第20条によると、博愛の情は人間へ向けるだけでなく動物虐待と無益な殺生をする人間を戒めるようにすべきものである。『修身要領』は、ユニテリアン主義的であるが、教育勅語に対抗するものである。福澤は教育勅語に賛同していなかった。
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