M240機関銃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/30 07:28 UTC 版)
M240B | |
M240機関銃 | |
---|---|
種類 | 軍用機関銃 |
製造国 | アメリカ合衆国 |
設計・製造 |
FNハースタル(設計・製造) USオードナンス(製造) |
仕様 | |
種別 | 汎用機関銃 |
口径 | 7.62mm |
銃身長 | 627mm |
使用弾薬 | 7.62x51mm NATO弾 |
装弾数 | ベルト給弾式 |
作動方式 | ガス圧利用(ロングストロークピストン式)、ティルティングボルト、オープンボルト |
全長 | 1,245mm |
重量 | 12,500g |
発射速度 | 650-950発/分 |
銃口初速 | 905m/秒 |
有効射程 |
800m(二脚) 1,800m(三脚) 3,725m(最大射程) |
歴史 | |
設計年 | 1958年 |
製造期間 | 1977年- |
配備期間 | 1977年- |
配備先 | アメリカ軍 |
関連戦争・紛争 |
湾岸戦争 イラク戦争 アフガニスタン紛争 |
概要
基本的には、NATO加盟国軍が採用しているFN MAGをアメリカ軍向けに改修設計したもので、他の機関銃と違い、まず同軸機銃として採用され、後に歩兵用に採用されたという経緯を持っている。
1970年代から使用され始め、歩兵部隊、戦車の同軸機銃、車両・ヘリコプター・舟艇への搭載用まで幅広く運用されている。中量級の機関銃としてはもっとも軽く、高い信頼性を持っている。また、結果的にNATO諸国との火器の標準化を果たしたこととなり、これらの点が高く評価されている。
M240の制式名はシリーズ全体を識別するために割り振られている。しかし、この他にも特殊モデルや同軸機銃モデルが存在する。多数の派生型が運用に就いているが、大まかには次のように分類される。
- M240
- 1977年に陸軍が戦車の同軸機銃として採用した。このバージョンはFN MAGの改修型であり、それまでのM60E2やM73A1(M219)などの従来の同軸機銃(MG3やAA-52の同軸機銃バージョンも含む)を置き換えた。1980年代には、M1エイブラムス戦車の同軸機銃として採用された。
- M240E1
- 1980年代に海兵隊が装甲車搭載機銃として採用した。ピストルグリップにかわりスペードグリップを持ち、銃床は装着されない。
- M240B
- 1991年から陸軍が地上戦用として配備し始めたバージョン。油圧式の反動吸収バッファと前部過熱ガード(ヒートシールド)を装備している。ガスレギュレーターは常時固定式のため、調節はできない。M60を始めとする他の軽機関銃を置き換えるために採用された。
- M240G
- 1994年に、M60に代わり海兵隊が採用し始めたバージョンで、歩兵が携行する他、車両搭載用としても採用された。
すべてのモデルは、射撃直後に自動分解する金属製M13 リンクにより7.62x51mm NATO弾(通常弾、曳光弾、徹甲弾など)を給弾する方式となっている。これらの派生型は全て機関部が共通となっており、重要パーツすら他のモデルやNATO加盟国のFN MAG(またはその派生型)と交換が可能になっている。これらのモデルとM240の主要な相違点は、重量と若干の特徴(反動吸収バッファなど)である。製造は、武器に関して長い歴史を持つFN社の、アメリカ子会社で行われている。
歴史と設計
M240は、アメリカ軍のための汎用機関銃として選ばれ、サウスカロライナ州コロンビアにあるFN Manufacturingで製造されている。異なる役割のために多数の派生型が運用されているが、特に戦車の同軸機銃として使われているM60機関銃が減耗して使用できなくなり次第、順次M240に交換されていった。
M240は、ベルト給弾式・ガス圧利用式・空冷式・ヘッドスペース固定式の機関銃である。用途により二脚、またはM122A1三脚で運用されるか、あるいは車両の同軸機銃・搭載機銃、ヘリコプター用のドアガン、舟艇用の搭載機銃として使用される。しかしながら、未だにM60が車輌搭載機銃・ヘリコプター用ドアガンとして残っている。
1977年に陸軍により戦車の同軸機銃として初めて使用され、以来ゆるやかに1980年代-1990年代にかけて各種用途に採用されてきた。以後、陸軍と海兵隊の歩兵部隊のために汎用機関銃として採用され、これらの実績がさらに用途を広げることとなった。どのような用途に対しても、機関部の基本的な機構は同一であるため、従来の各種機関銃、特にM60に比べてメンテナンスや部品交換に融通が利くこともこの傾向を後押しした。M240はM60よりはるかに複雑なガス反動システムを持つが、より低いメンテナンス要件でより高い信頼性を確保している。
他の機関銃と比較して重いこともあり、動作不良発生平均間隔弾数(MRBF:Mean Rounds Between Failure)が26,000発と、古い設計の重機関銃と同程度の信頼性があると実証されている。
M240とM60、およびいくつかのM249軽機関銃は、開発中の新軽機関銃(JSSAP/PMSW)に置き換えられる予定である。同様にFN社の製品であるSOCOM用途の新7.62mm機関銃Mk 48(M249を大口径にして全体を小型にした派生型)は、2006年から特殊部隊で採用され始めている。
初期の歴史
試験と派生
M240の採用にあたっては、1960年代後期-1970年代初期にわたって検討された7.62mm同軸機銃(およびM85 50口径(12.7mm)同軸機銃)更新プロジェクトが発端となっている。この計画は、1980年代から運用する同軸機銃を選定することが主目的であったが、同時に歩兵用途・車両搭載用途としても転用できるように考慮したものであった。さらに、1990年代-2000年代にかけて、別の用途にも応用できるように見越してあった。
この計画が進行している間、1970年代に陸軍は装甲車・車両搭載用の新しい7.62mm機関銃を探していた。1950年代のM73はトラブルが多く、これを元に開発されたM73E1・M219は大して改善されなかった。このため、他国のいくつかの機関銃を採用することも検討され、最終的にはM60E2とFN MAGに絞られた。M219を含め、これらは大規模な射撃試験にかけられた。
採用経緯から、特に二つの重要な要因が重点的に試験された。
- 射撃停止発生平均間隔弾数 MRBS(Mean Rounds Between Stoppages、数分以内に解決するジャム)
- 動作不良発生平均間隔弾数 MRBF(Mean Rounds Between Failure、例えば部品の破損)
この試験の評価結果は下記の通り。
形式 | 発射弾数 | MRBS | MRBF |
---|---|---|---|
FN MAG 58 | 50,000 | 2,962 | 6,442 |
M60E2 | 50,000 | 846 | 1,669 |
M219 | 19,000 | 215 | 1,090 |
基準最低値 | 850 | 2,675 | |
要求最低値 | 1,750 | 5,500 |
注意すべき点は、このリザルトは1970年代に製造されたものの試験結果であるということである。M240自体もFN MAGに対して幾分かの改良を施され、M60E2も同軸機銃版に特化された。M60の性能は派生型により異なり、改良された派生型、例えばM60E4やM60Cでは結果が異なることが予想される。
テストの結果、FN MAGのみが完全に要求を満たし、満足できる結果を出して陸軍のコンペに勝利し、1977年に「M240」という名称で制式化された。1980年代の間に同軸機銃と車両搭載用機銃を置き換えた。後に歩兵部隊用にM240B・M240Gとして採用された。1991年から陸軍の作戦で運用され、また、海兵隊においては摩耗したM60E3を置き換えるために配備された。ただし、必ずしもM60のすべての用途をM240が置き換えるという訳ではない。
- 1 M240機関銃とは
- 2 M240機関銃の概要
- 3 派生型
- 4 操作方法
- 5 実戦報告
- 6 関連項目
固有名詞の分類
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