鬱陵島 噴火活動

鬱陵島

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/11 03:43 UTC 版)

噴火活動

鬱陵島東北部の放射状節理

今から約10,300年前に鬱陵島は大規模な噴火を起こしたことが明らかになっている[56]。このときの噴火の火山灰は鬱陵島から東南東方向に長軸を持ち、日本海本州における広域テフラの一つ(鬱陵隠岐 (U-Oki))として年代測定の材料の一つとして使われている[57]。最新の噴火は約5,000年前で、この時にアルボン溶岩ドームを形成した[58]

鬱陵空港建設計画

鬱陵島では、滑走路長1200メートルの空港2025年に開港する予定で建設する計画が立てられている(鬱陵空港)。建設期間は5年、建設費は6400億ウォンとみている。

経緯

1970年に朴正煕大統領が最初に空港の妥当性の調査をしていた。

2010年12月20日、KDI(Korea Development Institute 韓国開発研究院)は鬱陵島の空港の経済性がない(B / C 0.77、AHP0.43)という結論を下した[59]。鬱陵郡守はこれに対して異議を唱えた。

2011年1月5日、国土海洋部は、第4次空港開発中長期総合計画(2011年 - 2015年)を策定し、官報に告示。ここに鬱陵島空港の建設が含まれていた。ボンバルディア社製Q300モデルやATR社のATR42など、50人乗り旅客機が運航できるとみている。2030年になれば、年間100万人程度の航空需要で、経済性は十分だと予測した[60]。2012年、予備妥当性調査を再度実施したが経済性分析(通常1.0以上で妥当)は6月にB / C 0.38、10月にB / C 0.70とされ、実現が遠のいた。[59]

2013年7月8日、鬱陵空港建設事業が企画財務部の予備妥当性調査(B / C 1.19、AHP 0.655)を通過[61]。B / Cを中国人による観光の増大が、AHPを日本との領有権紛争がそれぞれ押し上げた形。[62][63]

2015年11月24日、2021年の開港を目指し第一期工事(2182億ウォン)の入札が公告された[64]。第二期工事は2869億ウォンの予定(総予算5805億ウォン)だったが1度目の入札過程でポスコエンジニアリングによる地質調査が不十分で追加事業費が最低600億必要と判明しポスコ建設、大林(テムリン)産業など入札参加企業が相次いで辞退した[65]。5月30日に再公告したが、滑走路建設の埋め立て岩石(島内至近のもの)の強度不足が明らかで追加工事費(岩石の採取と運搬など)が600~800億ウォンと予想され、期限である6月14日までに事前資格審査申請する企業が一つもなく入札が撤回された[66][67]

2017年11月15日、釜山地方航空庁は、他の場所の岩石を埋立に使うコストを避けコンクリート構造物を使用する方式を適用[68]

2019年5月1日、2025年の開港を目指し、政府は発注依頼計画を公示、事業費6633億ウォンに増額し策定。同年12月、大林産業コンソーシアムが選定され基本設計技術提案と実施設計へ。2020年7月、大林産業コンソーシアムとの契約が締結され同年11月27日着工。総事業費は6651億ウォン[69]

領有権争いのある竹島との関わり

鬱陵島から東南東へ約90 kmのところには、日韓で領土問題となっている竹島(韓国名:独島)がある。現在、韓国がこの島を自国領であるとして、鬱陵郡に属する形で実効支配しているが、これに対して日本は「不法占拠」として抗議している。

竹島へは2005年3月28日より、鬱陵島の道洞港から大亜高速海運によって毎日観光船が運航され、日本人を含め外国人も乗船できる。竹島では、観光客は韓国が建設したコンクリート製の埠頭には上陸できるが、領土である岩には韓国人であっても足を踏み入れられない。

2005年6月1日、鬱陵郡は、旅客船会社が入島定員(1日140名)を守らなかったとして竹島の出入を無期限中断させた。同年3月24日から竹島への出入が許可制から申告制に変わり旅客線会社(独島観光海運と大亜高速海運)が事実(1回に70人まで、毎日140人まで)を通知することになっていた。秩序維持と竹島保護のための出入中断までに郡の集計では5,954人が島に上陸したという[70]

竹島への船の発着場でもある道洞の港や船には、竹島が韓国領であることをアピールする巨大な看板などが並び、「独島」を冠した店名の食堂や土産物店などが林立している。道洞港から徒歩約15分の道洞薬水公園内には独島博物館があり、ここよりケーブルカーで登った展望台(標高317 m)からは、晴天で空気が澄んでいれば、双眼鏡で竹島をかすかに望むことができる。この独島博物館は竹島の韓国領有をアピールするための博物館で、韓国のサムスングループの会長が国に寄付し、鬱陵郡が運営している。

竹島は鬱陵島の標高約200 m以下では水平線の下に隠れるため海岸付近からは見ることはできないが、晴天で空気が澄んでいるときに高い山の中腹まで登れば、肉眼でもかすかに見ることができる(但し、肉眼で確認できるチャンスは年間に数日と言われている)。竹島(独島)を肉眼で見ることができるので「古来より朝鮮人が日本人より先に独島を発見していた」として、韓国側の竹島領有の根拠の一つとしている。

1964年には、江戸時代に発生した竹島一件の原因となった漁民安龍福を顕彰する「安龍福将軍忠魂碑」が鬱陵島に建立される[71](安龍福は将軍ではないが韓国では将軍と呼称されることが多い。)。

2011年8月1日自民党国会議員である新藤義孝稲田朋美佐藤正久が鬱陵島の独島博物館などを視察するため韓国に向かったが、金浦空港で入国拒否され日本に引き返した[72]。その前日の7月31日には、3人と合流する予定だった下條正男拓殖大教授も仁川空港で入国拒否された[73]

上記のような事例があったことから、日本人が鬱陵島へ渡航する際には、出港地において韓国警察による取り調べ(渡航目的)を受けることになる。また、竹島航路を運営するフェリー会社は、日本人と判明した者へのチケット販売を行わない旨を告知している[74]


注釈

  1. ^ 長崎オランダ商館医であったフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト1840年、ヨーロッパにおいて『日本図』を刊行したが、彼は前もって隠岐島と朝鮮半島の間には西から「竹島」(現在の鬱陵島)、「松島」(現在の竹島)の2島があることを知っていた。その一方、ヨーロッパの地図からは、西から「アルゴノート島」「ダジュレー島」という2つの名称の島が並んでいる知見を得たため、彼の地図では「アルゴノート島」が「タカシマ」、「ダジュレー島」が「マツシマ」として記載し、それにより、従来「竹島」又は「磯竹島」と呼称されてきた鬱陵島が「松島」とも呼ばれる混乱が生じた[18]
  2. ^ 1900年大韓帝国高宗勅令をもって鬱陵島を江原道鬱島郡に昇格させ、鬱陵島の領土画定を宣言した[21]。日本政府もこれを認めた。

出典

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