関数電卓
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/05 10:12 UTC 版)
製品の発展の歴史的経緯から、初期の製品が三角関数、指数関数、対数関数などの初等関数の値を数表に頼ることなく得られる機能を有したことから関数電卓と称される。 今日的な製品ではこれらの機能以外にも後述の各種計算機能を備える製品が流通している。 英語では scientific calculator という呼称が一般的である。
主なメーカーとしてはヒューレット・パッカード、テキサス・インスツルメンツ、カシオ計算機、シャープ、キヤノン、がある。
関数電卓の出現により数表や計算尺の初等関数の尺の機能は主要な役割を終えた。
機能
関数電卓の特徴として凡そ次の点が挙げられる。
- 四則演算を中心とした事務用途の電卓に比べて多数の計算機能を備えている。
事務用途の電卓でも実現されている機能として、百分率、平方根、消費税計算、1変数のメモリが挙げられるが、これより多くの計算機能を有する。
搭載している計算機能はメーカーや機種によって異なるが、以下のような機能および関数は多くの関数電卓が備えている。
- 数値の取扱と計算順序
- 内部の数値が浮動小数点方式であり、指数表示計算(例:1.23E8)が可能である。
- 計算の優先順位が存在し、入力順で計算されるのではなく優先順位に従って計算される。
- 計算の優先順位を指定するためのカッコを入力できる。
- 初等関数
- 三角関数(双曲線関数を搭載する場合もある)
- 角度単位の切換(度(DEG)、ラジアン(RAD)、グラード(GRAD))
- 指数関数、対数関数
- ネイピア数eを底とするもの、10を底とするもの、及びこれらから公式を用いて任意の底の指数関数、対数関数。
- 冪乗と冪根。二乗、三乗、平方根、立方根。
- 円周率πやネイピア数eなどの定数を素早く入力できる。
さらに上位機種では以下のような機能も備えている。
- 計算
- 数の種類
- 計算を補助する機能
- アンサーメモリー
- 最後に=・Entキーを押して確定した計算結果を、次の計算式の任意の場所で参照して代入できる機能
- 過去に遡っての計算式のチェックと修正、同じ計算式で変数の値を変えての再計算
- メモリーを複数個備える。
- 物理定数や数学定数の呼び出し
- 単位の換算
- 数式記憶機能、計算式のユーザ定義関数としての保存、公式の呼び出し、
- 計算の表式
- 分数や方程式を表記通りに計算
- かつてほとんどの関数電卓は、たとえば1引数の関数の場合、「3.14」次いで「sin」のように、まず引数を入力し、次いで関数のボタンを押す、という順序の入力方式が主流であった。この方式であれば、コサインの不動点を求める時などは、「1」「cos」「cos」「cos」... のように連打すればよい。後には通常の数式通り(書式通り・公式通りとも)の順序で入力する方式があらわれ、数式が表示される機種から広まっていった。カシオのようにほぼ全て切り替えてしまったメーカーもある。この数式通り方式は、数式を左から書くのと同じ順序で、たとえば「sin」次いで「3.14」のように操作する。これに対して従来の方式は標準方式などと呼ばれる。2000年代後半より、数式自然表示[注釈 1]という、分数や開平記号なども一般の数式における記法のように表示される方式が登場してきている。
- 逆ポーランド記法による計算
- 数学的演算、表計算
- プログラムとグラフ
- プログラム機能 - プログラム電卓を参照
- グラフ描画
- ハードウエア機能
- プログラムやデータの保存
- OHPやテレビ画面への投影
- 通信機能(同一機種間、若しくはパソコンとの)
- 計測器からのデータ入力
- 外部プリンタ接続による紙への印字
- 時計機能など
科学技術用途以外の分野で次のような機能を有する製品もある。これらは金融電卓、ビジネス電卓等と称される。
- 金融計算(複利計算、ローン計算など)
- 商売(原価、売価、粗利率)計算
- 減価償却計算
機能の数は、メーカーの提示によれば普及機種で300機能程度、上位機種では700機能程度に達するものが存在する。
形態
狭義には数値計算機能に特化した手帳型の専用機の形態の物を指す。一般的な事務用の電卓と同様に数値のみ1行で10桁から12桁の表示で、指数表示のため指数専用の桁が存在するのが関数電卓の特徴の一つである。製品の進化に伴い複数行表示が可能な製品が登場し、7セグメント数字表示からドットマトリクスで表示するものが登場した。
計算内容を利用者が独自に設定できるプログラム電卓も存在する。
液晶ドット表示による表示機能を発展させたものとしてグラフ電卓が存在する。 グラフ電卓は関数電卓およびプログラム電卓としての計算機能を備え、さらに入力データなどに基づいてグラフ(関数のグラフないし統計図表、チャート)を描画できる。
また初等関数の値を得られるという意味ではポケットコンピューターも関数電卓機能を有する。
パソコンやスマートフォンで動作する関数電卓アプリも多数存在する[注釈 2]。
注釈
- ^ 数学自然表示・式通り入力表示・教科書ビューとも。メーカーにより入出力をまとめて扱っている場合と、入力や出力を別にして扱っている場合とがあるので注意。なお「数学自然表示」は2004年にカシオが商標登録している(登録番号第4822181号)
- ^ パソコン上で動作する関数電卓アプリはMicrosoft WindowsのようにOSに付属するもの、別個のアプリとしてサードパーティーから提供されるものがある。例として桝岡秀昭(作)「iMemo(2023年9月5日閲覧。)」がある。
出典
- ^ 平成29年度土地家屋調査士試験の筆記試験における電卓の使用について - ウェイバックマシン(2018年8月25日アーカイブ分) - 法務省 2023年9月5日閲覧。
- ^ 土地家屋調査士試験必須アイテム - 東京リーガルマインドが土地家屋調査士試験対策の受講生向けに試験対策品を紹介するページ。カシオのfx-JP500を推奨している。2023年9月5日閲覧。
- ^ カシオが語る関数電卓のいま--「国内では地味な存在だが、海外では大スター」 - cnetjapan、2019年2月8日 2023年9月5日閲覧。
- ^ HP-9100A/B at hpmuseum.org2023年9月5日閲覧。
- ^ IEEE Milestone:Development of the HP-35, the First Handheld Scientific Calculator, 1972 - Engineering and Technology History Wiki2023年9月5日閲覧。
- ^ https://books.google.co.jp/books?id=ndQDAAAAMBAJ&printsec=frontcover&source=gbs_ge_summary_r&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false 75頁 2023年9月5日閲覧。
- ^ SR-50 page at datamath.org2023年9月5日閲覧。
- ^ Casio FX-1 Desktop Scientific Calculator2023年9月5日閲覧。
- ^ “カシオの関数電卓、地味に2000万台売れる理由”. 東洋経済オンライン (2019年10月6日). 2019年10月6日閲覧。
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