関数解析学的な側面
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/19 15:13 UTC 版)
正方行列はユークリッド空間 Rn(n は行列の次元)上の線形作用素を表現する。そのような空間は有限次元であるから、この作用素は実際に有界である。 正則汎函数計算(英語版)の道具立てを用いると、複素数平面内の開集合上で定義された正則関数 f(z) および有界作用素 T に対し、f(z) が T のスペクトル上で定義される限りにおいて、f(T) を計算することができる。 関数 f(z) = ln z は、複素数平面内の原点を含まない任意の単連結開集合上で定義することができて、かつそのような領域上で正則である。このことは T のスペクトルが原点を含まず、原点から無限遠点へ向かう T のスペクトルを横切らない径路が存在するならば ln T が定義できることを示している(例えば、T のスペクトルがその内側に原点がくるような円ならば、ln T は定義できない)。 ユークリッド空間の場合に立ち戻ると、この空間上の線形作用素のスペクトルはその表現行列の固有値全体の成す集合であり、それは有限集合である。そのスペクトルに原点が含まれない(行列が可逆)である限りにおいて、前段落で述べた径路に関する条件などは明らかに満たされるので、その論法により ln T が定義可能である。この種の行列の対数が一意でないことは、行列の固有値集合上で定義される対数函数の分枝が複数選びうるという事実から生じる。
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