春日局
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/15 10:19 UTC 版)
異説
- 将軍家の乳母に登用された経緯には、京都所司代板倉勝重が一般公募した話などが伝えられる。あるいは、秀忠の正室・江の侍女である民部卿局の仲介で乳母となったともされる。また、家康の手が付いていたという見方もある。乳母に過ぎない身分の者[注釈 5]が将軍世継ぎ問題で家康に直訴したとしても、通常家康が会うとは考えにくいとして、お福がかつて愛妾の一人であったとする説もあるが、定かではない。映画『女帝 春日局』(1990年)はこの異説で描かれている。
- 春日局は通説では徳川家光の乳母であるが、小説家の八切止夫は春日局が家光の生母という説を立てている。江戸城で徳川将軍家の蔵書を保管した紅葉山文庫に伝来する『松のさかえ』のなかの「東照宮御文の写し」の末尾に、「秀忠公御嫡男 竹千代君 御腹 春日局 三世将軍家光公也、」とある[11]。歴史学者の福田千鶴も、家光の姉である初姫の実際の誕生を慶長8年7月とした上で、正室・江がちょうど1年後に家光を生むのは不可能ではないが当時の医学では厳しいとして家光の生母を江以外の秀忠の妻妾と推定し、状況的に春日局しかいないと推定する[12]。
縁故により出世した人たち
- 春日局が参内できるよう画策した三条西実条は、後に朝廷から武家伝奏に任じられ、最終的には右大臣になった。子孫の玄長は、幕府に高家肝煎として迎えられた。その際、縁のあった武家名字「前田」を名乗った。
- 春日局が強く望んで大奥入りさせられたお万の方は、三条西家の同僚の和歌の家である六条家の娘である。後に彼女の弟・氏豊も幕府から高家として迎えられ、その際にこちらも縁のあった武家名字「戸田」を名乗った。
- 離縁した稲葉家の再興にも尽力し、浪人していた元夫の稲葉正成は松平忠昌の家老として召し出され、のち大名に取り立てられた。家光の小姓から老中に出世した者は多いが、その中には春日局の縁者も多い。特に実子である稲葉正勝と義理の孫に当たる堀田正盛が著名である。
- 姪・祖心尼とその夫・町野幸和が蒲生氏改易に伴い浪人した際には、祖心尼を自分の補佐として出仕させ、また祖心尼の外孫・お振を大奥に入れた。お振は家光の側室となり千代姫を産んでいる。幸和も幕府直参旗本として取り立てられた。
- 海北友雪:海北友雪の父・友松は春日局の父・斎藤利三が山崎の戦いで敗死すると、利三一家を厚く庇護したことがあった。そのことより春日局の推挙で徳川家光に召し出され、その御用を仰せ付けられた。
- 斎藤利宗:春日局の実兄。明智家滅亡後は、加藤清正に仕えていたが、後に徳川家光に5千石の旗本として、取り立てられた。
関連作品
- 小説
- 春日局(堀和久・著)
- 春日局(杉本苑子・著)
- 徳川の夫人たち(吉屋信子・著)
- 火宅の女 -春日局-(平岩弓枝・著)
- 小説 春日局(北原亞以子・著)
- 江戸の鼓 -春日局の生涯-(澤田ふじ子・著)
- 破談変異 (松本清張・著)
- 漫画
- 映画
- テレビドラマ
- 江戸を斬る 梓右近隠密帳 第18話(1974年・ナショナル劇場、演:北城真記子)
- 徳川の女たち 第一部 華麗春日局(1980年、フジテレビライオン奥様劇場、松尾嘉代)
- 大奥(1983年・関西テレビ、演:大谷直子→渡辺美佐子)
- 春日局[13](1989年、NHK大河ドラマ、演:安間千紘→尾羽智加子→大原麗子)
- 葵 徳川三代(2000年、NHK大河ドラマ、演:樹木希林)
- 将軍家光忍び旅シリーズ(テレビ朝日・東映、演:三ツ矢歌子)
- 大奥 第一章(2004年~2005年、フジテレビ木曜劇場、演:山田夏海→松下由樹)
- 江〜姫たちの戦国〜(2011年、NHK大河ドラマ、演:富田靖子)
- 大奥〜誕生[有功・家光篇](2012年、TBSのテレビドラマ、演:麻生祐未)
- どうする家康(2023年、NHK大河ドラマ、演:寺島しのぶ)
- 大奥(2023年、NHKドラマ10、演:斉藤由貴)
注釈
- ^ 外祖父である一鉄の妻は三条西公条の娘であり、三条西家は母方の祖母の実家にあたる。
- ^ 通説では彼女の出身地である但馬国春日郷にちなんだ命名とされる。 なお、春日局の名を下賜した事績については池上ほか (1995, p. 506)に詳しい。
- ^ 旗本の豊島信満。
- ^ 井上正就は徳川秀忠の乳兄弟であり、大御所として秀忠が健在だった寛永5年(1628年)当時の春日局にそれほどの権勢があったのか、通説を疑問視する見方もある
- ^ ただし、当時の乳母の位置づけは重要であり、池田恒興が信長の乳兄弟であったように、乳母の子は最も近い側近となりうる存在だった。また、大坂冬の陣では、家康は使者として送り出された淀殿乳母大蔵卿局に面会している。
出典
- ^ a b 宮本 1988.
- ^ 宮本 2010, pp. 204–205.
- ^ 宮本 2010, p. 206.
- ^ 『国史大辞典』 第二巻、吉川弘文館、1980年、913 - 914頁。
- ^ 「徳川幕府家譜 乾(家光)」『徳川諸家系譜』 第一、続群書類従完成会、1970年、45頁。
- ^ 「幕府祚胤伝 四(家光妾)」『徳川諸家系譜』 第二、続群書類従完成会、1970年、78頁。
- ^ 下重清『幕閣譜代藩の政治構造』岩田書院、2006年、203-204頁。
- ^ ブリタニカ百科事典
- ^ 小学百科大辞典 きっずジャポニカ
- ^ “春日局、実は部下思い? 西本願寺で自筆の手紙”. 日本経済新聞. (2012年11月30日) 2013年7月24日閲覧。
- ^ 福田千鶴『春日局』ミネルヴァ書房2017年、p.64
- ^ 福田千鶴『大奥を創った女たち』吉川弘文館〈歴史文化ライブラリー549〉、2022年5月23日、76-80頁。ISBN 978-4-642-05949-7。
- ^ 大河ドラマ 春日局 - NHK名作選(動画・静止画) NHKアーカイブス
- ^ https://www.city.bunkyo.lg.jp/bunka/kanko/kasuganotsubone/isetsu.html
- ^ https://www.sankei.com/article/20191026-NXRWG5JEKNKF7DB2QUDXZ3KPWA/
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