旅行の友
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/30 23:55 UTC 版)
旅行の友(りょこうのとも[1])は、広島県広島市西区に本社を置く田中食品が製造販売するふりかけの商品名である[2][3]。小魚粉末を主原料とするふりかけで[2][3]、主に西日本で販売されており[3][4]、西日本では抜群の知名度を誇るものの東日本での知名度は低い[3][4]。ふりかけの元祖とされる[2][3][5][6][7][8][9][10]。120年以上の歴史を持つ[2][3]。
誕生までの歴史
田中食品の創業者・田中保太郎が1901年(明治34年)、瀬戸内海に面した広島県呉市で田中商店を創業[6]。同社の看板商品である「旅行の友」は、1904年(明治37年)ごろから保太郎が開発、製造を始めた魚の粉末に醤油で味をつけて乾燥させ、ゴマやアオサを加えた「ふりかけ食」の開発に遡る[2][3][6]。ふりかけ食の開発・発売の背景には、戦地で戦う身内や子どもたちが食べ物に困らないように、栄養価の高いものを食べてもらいたいという「子を想う親心」があった[2][11]。1890年(明治23年)、呉鎮守府の開庁以降、呉市は軍都として発展したが、田中商店は創業当時から、漬物、佃煮、味噌などを大日本帝国海軍(以下、海軍)に納品した[2][6]。日清、日露戦争のころには“かっけ”が流行し、多くの死者や体調不良者が出ていた[6]。そうした1916年、太平洋戦争中の海軍から「持ち運びに便利で日持ちが良く、栄養価の高い保存食を作って欲しい」という要望を受けて発売された[1][2][3][6][4][11]。「旅行の友」という名称は「人々の旅のお供になるように」という願いと[3]、創業者の妻に由来する[1][4][12]。ふりかけは軍隊で好評を博した[2]。
当時の商品は、スチール缶で上蓋と本体にそれぞれ穴が開いており、蓋を回してそれぞれの穴を合わせれば、缶の中のふりかけが出る仕組みになっていた[1][11]。また、デザインは欧亜連絡列車でもあった特急「冨士」の流線型国鉄C55形蒸気機関車が描かれていた[11]。2022年には復刻版が販売されている[11]。
1954年以降は、デザイナーの大智浩による旅行をテーマとしたパッケージデザインが使われており[1]、赤・黄・緑の切符をモチーフとした絵が使用されている[12]。のちに「トモちゃん」と名付けられ、2016年7月22日からは、LINEクリエイターズスタンプにもなっている[13]。
2010年3月、広島市による「ザ・広島ブランド」に「旅行の友」が認定された[12][14]。
2016年、発売開始から100周年を迎えた。
脚注
出典
- ^ a b c d e 山口育孝、望月恭子『学研まんがでよくわかるシリーズ ふりかけのひみつ 電子版』株式会社学研プラス、2019年3月、39-52頁 。2020年10月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “食品製造販売業 田中食品株式会社”. 商工労働総務課. 広島県庁 (2025年3月26日). 2025年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年7月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “長く愛されるふりかけの元祖「旅行の友」創業者が「子を想う親心」を唯一無二の美味しさを届ける長く愛されるふりかけの元祖「旅行の友」 創業者が示した「子を想う親心」を受け継ぎ唯一無二の美味しさを届ける 広島市/広島 田中孝幸 田中食品”. SUTEKI COLLECTION. 西日本旅客鉄道 (2025年3月19日). 2025年4月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年7月1日閲覧。
- ^ a b c d “関東人は知らない?広島県民が愛する謎のふりかけ「旅行の友」とは(全文表示)|Jタウンネット” (jp). Jタウンネット. J-CAST (2020年2月12日). 2022年3月10日閲覧。
- ^ 応援します!#パートナーシップ構築宣言 ひとふりに、からだ想う。ふりかけの田中食品 (PDF) 中国経済産業局 2024年3月18日
- ^ a b c d e f 「田中食品「旅行の友」製造121周年 ふりかけの元祖 日本最古の歴史史料、国内外にアピール」『日本食糧新聞』日本食糧新聞社、2025年5月12日。オリジナルの2025年5月14日時点におけるアーカイブ。2025年7月1日閲覧。「全国ふりかけ協会、3年ぶり総会で原料高を確認 元祖認定は取り下げて再調査」『日本食糧新聞』日本食糧新聞社、2022年7月8日。2025年7月1日閲覧。
- ^ “物価高の救世主 ご飯にかけるだけじゃない「ふりかけ」超簡単!絶品アレンジレシピ”. SASARU. 北海道文化放送 (2025年1月15日). 2025年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年7月1日閲覧。
- ^ “旅色お取り寄せグルメ 山陰・山陽エリア 田中食品株式会社 創業120余年・愛され続けるふりかけの元祖”. トラベルウェブマガジン旅色. 2025年7月1日閲覧。
- ^ 「看板商品「旅行の友」でJRとコラボ 田中食品」『食品新聞』食品新聞社、2025年4月16日。オリジナルの2025年6月30日時点におけるアーカイブ。2025年7月1日閲覧。
- ^ “ふりかけ元祖問題について”. 田中食品 (2023年1月4日). 2025年7月1日閲覧。
- ^ a b c d e “ザ・広島ブランド認定品:復刻版 旅行の友”. ザ・広島ブランド認定品:復刻版 旅行の友 - ひろしま夢ぷらざ公式・通販サイト、広島の特産品、銘品(お土産)を全国へ:広島本通. 広島県商工会連合会. 2022年3月10日閲覧。
- ^ a b c “旅行の友 小魚のふりかけ TAU -ひろしまブランドショップ-”. TAU -ひろしまブランドショップ-. 2022年3月10日閲覧。
- ^ ふりかけ 旅行の友 トモちゃん - LINEクリエイターズスタンプ
- ^ “ザ・広島ブランド「旅行の友」”. 広島市 経済観光局 産業振興部 商業振興課. 2023年5月14日閲覧。
外部リンク
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