投網
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/07 18:04 UTC 版)
季語
季語・季題としての投網(とあみ)は[* 3]、夏の季語(三夏の季語)である[20]。分類は行事/人事/生活[* 4]。川狩/川狩り(かわがり、歴史的仮名遣:かはがり。意:川で魚を獲ること)を親季語とする子季語の一つで[* 5]、他の子季語には、瀬干/瀬干し(せぼし。意:流れを堰き止めて行う川狩)[21]、川干/川干し(かわぼし、かわほし、歴史的仮名遣:かはぼし、かはほし。意:瀬干)[22]、掻え掘り(かえぼり、歴史的仮名遣:かへぼり。意:池や堀の水を汲み出して干して行う川狩。掻い掘り)、毒流し(どくながし。意:毒物を使った川狩)[23]がある[20]。
転用
網打/網打ち(あみうち)とは、第1義には、投網で魚を獲ること、および、その人をいうが[6][7]、第2義には、相撲の決まり手の一つである[6][7]。これは、漁師が投網を打つように、相手力士の差し手を両手に持ちながら、土俵外へ放り投げる技であることに由来する[6][7]。第2義については別項「網打ち」に詳しい。
派生
捕具
漁具の網を相手に投げることで包み絡め行動力を奪う捕具として利用されることもあった。
現代でも人間や小型無人航空機を絡め取るのに使う例がある。
網闘士
レーティアーリウス(長音省略音写例:レティアリウス、ラテン語:rētiārius、cf. en, wikt:en)は、古代ローマの剣闘士(グラディアートル)の一種で、投網を使って敵を絡め取るという独特な闘い方をする者をいう。retiarius の語構成[ la:rēti〈= en:of net、jp:網の〉+ -ārius〈= en:男性用の-er、jp:…男〉]に基づき、日本語では意訳で「網闘士(あみとうし)」と呼ばれ、時に「投網闘士(とあみとうし)」「投網剣闘士(とあみけんとうし)」などとも呼ばれる。鉛入りのレーテ(rēte、網)と、トリデーンス (tridēns) とも呼ばれるフッキナ(fuscina、三叉槍)、もしくは銛(もり)を主要武器とし、対戦相手にとどめを刺すためのプーギオー(pūgiō、短剣)を携えた軽装の闘士である。他の剣闘士と違って兜は被らず、また、盾の代わりに「肩ガード」を意味する「ガレールス (galērus, cf. en)」と呼ばれる青銅製防具を利き手でないほうの肩に装着して闘った。三叉槍を主要武器とするのは、海神ネプトゥーヌス(※古代ギリシアのポセイドーンと同一視された海神)の得物であることに由来するという。
スポーツ投網
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投網を打つ蜘蛛
メダマグモ科のクモは、自ら分泌する粘着性が高く丈夫な糸で蛛網(ちゅもう。蜘蛛の作る網)を作り、獲物に被せて絡め取るという極めて特殊な待ち伏せ型の狩りをする。8脚のうちの4脚の脚先に蛛網の端を引っ掛けておいて四方に引き伸ばすと正方形の伸縮自在な網の罠を仕掛けたことになる(■右列に画像あり)。この体勢で待ち伏せ、獲物が近くを通りかかると全身を伸長させて襲いかかり、4脚で張った蛛網を獲物に覆い被せて動きを封じる。その後は普通のクモと同じように新たに分泌する糸で完全に絡め取ってしまう。
日本語にはこのクモ類を投網と関連付ける名称が無いが、英語では "Net-casting spider(日本語音写例:ネットキャスティング スパイダー)" といい、まさに「投網を打つ蜘蛛」という意味の名で呼ばれている。また、先述した「網闘士」になぞらえた "retiarius spider(日本語音写例:ラティアリアス スパイダー)" という別名もある。
注釈
- ^ 1寸 = 約30.303mm。30.303×5 = 151.515。
- ^ 1尋 = 約1.818m。
- ^ 当節にて太字で示した季語は、記載するという形で歳時記が推奨している表現である。歳時記は俳句等においてそれ以外の日本語表現を否定するものではないが、傾向として文語体の趣を好む。つまり、「川狩り」より「川狩」が好まれ、「掻い掘り」が歳時記に記載されていないのに「かへぼり」「掻え掘り」が記載されているのは、そういった趣向による。
- ^ 個々の歳時記によって用語は異なるが、要するに、人の行い。
- ^ 親季語・子季語は、互いに深く関連した複数の季語の中で、最も重要と見なせる一つを「親」、それ以外を「子」に譬えた用語。属する季節は全て同じ。
出典
- ^ “掩網”. 小学館『日本大百科全書:ニッポニカ』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “投げ網・投網”. 三省堂『大辞林』第3版. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “打ち網・打網”. 三省堂『大辞林』第3版. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “投網”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “投網・唐網”. 小学館『精選版 日本国語大辞典』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ a b c d “網打”. 小学館『精選版 日本国語大辞典』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ a b c d “網打ち”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “沈子(ちんし)”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
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- ^ a b “網石”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “沈子(ちんし)sinker”. 小学館『日本大百科全書:ニッポニカ』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “網石”. 小学館『精選版 日本国語大辞典』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “網裾”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “紀の川でアユ解禁!かつらぎ町の〝小鷹網漁〟すてき”. 橋本新聞. 2021年6月8日閲覧。
- ^ “小鷹網漁 鮎釣り名人”. 熊野本宮. 2021年6月8日閲覧。
- ^ “落ちアユ一網打尽 伝統のハメ漁始まる”. 紀伊民報. 2021年6月8日閲覧。
- ^ “細川流網打ちを継承するために - 保存会概要”. 江戸屋形船組合 公式ウェブサイト. 細川流江戸投網保存会. 2019年7月5日閲覧。
- ^ “江戸投網保存会 - 『ぶらり途中下車の旅』”. 公式ウェブサイト. 日本テレビ. 2019年7月5日閲覧。
- ^ “第15回お江戸投網まつり ─江戸情緒たっぷりの伝統文化「網打ち」にカンドー!”. 公式ウェブサイト. 江戸屋形船組合 (2016年). 2019年7月5日閲覧。
- ^ a b “川狩”. きごさい歳時記(公式ウェブサイト). NPO法人「きごさい」(季語と歳時記の会). 2019年6月28日閲覧。
- ^ “瀬干”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “川干”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
- ^ “毒流し”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
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