投網 構造

投網

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/07 18:04 UTC 版)

構造

漁撈において、漁具に沈降力を与える目的で用いるおもり)のことは、沈子(いわ、ちんし)といい[8][9][10]英語では "sinker日本語音写例:シンカー)" というが[11]、漁網を沈下させる沈子のことは特に網石(あみいし)といい[10]、古くは網石(あみのいわ)と呼んだ[12]漁網の下端部の、つまり網口(あみぐち)の、ちょうどスカートなどのすそ)のようになっている部分は、網裾(あみすそ)といい、略して(すそ)ともいう[13]。投網でもそれらは同じ。投網には、等量の網石が網裾に均等な幅で数多く取り付けられている。上端部には手綱(たづな)が付いていて、これを握って投網を打ち、手繰り寄せる。

丸められた投網

しかるべき技術を身に着けた者が投網を打つというのは、現象面から言えば、網裾が大きな面を捉える形で水平に広がって水面に落下するよう正しい動作で投擲することであり、そうやって打たれた投網は、円錐状あるいは釣鐘状に広がって水面に落下し、網石の重さで沈下するように作られている。 漁獲対象を点ではなく面で捉えたまま、広がった網裾は自然に沈下して水底にまで達するため、囲われた面の内側にいた魚群は、水中であれ水底であれ、この囲いに一旦は閉じ込められる。網の周辺部は袋状になるよう作られているため、網の囲みから逃れようとする多くの魚はその袋に入り込んでしまう。しかし、袋に入ることなく網石の下をくぐり抜けて逃げる魚も少なくない。投網で漁獲できる魚は、袋に入ってしまうか、網目に頭を突っ込んで逃げられなくなった いわゆる“首括り(くびくくり)”の魚である。 アユ(鮎)などは袋に入ることは稀で、川底の石と網石との隙間を見つけてそこから逃げたり、川底の石の隙間でしばらくじっとしていて網を引き上げた瞬間に網石の下から逃げたりと、くぐり抜けの上手い魚として知られている。そのため、首括りでの漁獲を重視して獲れる魚のサイズにあった目合いの網を選ぶことが重要となる。網目の大きさを目合いといい、縦に伸ばした網 5(約152センチメートル[* 1])の間にいくつ結び目があるかを節(せつ)という単位で表す。また、網目の1辺もしくは1目(1辺×2)の長さを「分」「厘」で表す地方もある。網の大きさは、円周(裾回り)の長さを(約1.8メートル[* 2])で表したり、すぼめた状態での網の長さを尋で表す。

一枚の帯状に作られている投網もあり、これは投刺網/投げ刺網(なげさしあみ)という。この場合、網を打ったらすぐに魚を網のあるほうに追い込まなければならない。和歌山県の茜屋流(あかねやりゅう)で有名なのは、刺し網を投網のように投げる漁法の「小鷹網(こだかあみ[14])(こたかあみ[15][16])」である。


注釈

  1. ^ 1寸 = 約30.303mm。30.303×5 = 151.515。
  2. ^ 1尋 = 約1.818m。
  3. ^ 当節にて太字で示した季語は、記載するという形で歳時記が推奨している表現である。歳時記は俳句等においてそれ以外の日本語表現を否定するものではないが、傾向として文語体の趣を好む。つまり、「川狩り」より「川狩」が好まれ、「掻い掘り」が歳時記に記載されていないのに「かへぼり」「掻え掘り」が記載されているのは、そういった趣向による。
  4. ^ 個々の歳時記によって用語は異なるが、要するに、人の行い。
  5. ^ 親季語・子季語は、互いに深く関連した複数の季語の中で、最も重要と見なせる一つを「親」、それ以外を「子」に譬えた用語。属する季節は全て同じ。

出典

  1. ^ 掩網”. 小学館日本大百科全書:ニッポニカ』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  2. ^ 投げ網・投網”. 三省堂大辞林』第3版. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  3. ^ 打ち網・打網”. 三省堂『大辞林』第3版. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  4. ^ 投網”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  5. ^ 投網・唐網”. 小学館『精選版 日本国語大辞典』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  6. ^ a b c d 網打”. 小学館『精選版 日本国語大辞典』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  7. ^ a b c d 網打ち”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  8. ^ 沈子(ちんし)”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  9. ^ 沈子(いわ)”. 小学館『日本大百科全書:ニッポニカ』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  10. ^ a b 網石”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  11. ^ 沈子(ちんし)sinker”. 小学館『日本大百科全書:ニッポニカ』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  12. ^ 網石”. 小学館『精選版 日本国語大辞典』. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  13. ^ 網裾”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  14. ^ 紀の川でアユ解禁!かつらぎ町の〝小鷹網漁〟すてき”. 橋本新聞. 2021年6月8日閲覧。
  15. ^ 小鷹網漁 鮎釣り名人”. 熊野本宮. 2021年6月8日閲覧。
  16. ^ 落ちアユ一網打尽 伝統のハメ漁始まる”. 紀伊民報. 2021年6月8日閲覧。
  17. ^ 細川流網打ちを継承するために - 保存会概要”. 江戸屋形船組合 公式ウェブサイト. 細川流江戸投網保存会. 2019年7月5日閲覧。
  18. ^ 江戸投網保存会 - 『ぶらり途中下車の旅』”. 公式ウェブサイト. 日本テレビ. 2019年7月5日閲覧。
  19. ^ 第15回お江戸投網まつり ─江戸情緒たっぷりの伝統文化「網打ち」にカンドー!”. 公式ウェブサイト. 江戸屋形船組合 (2016年). 2019年7月5日閲覧。
  20. ^ a b 川狩”. きごさい歳時記(公式ウェブサイト). NPO法人「きごさい」(季語と歳時記の会). 2019年6月28日閲覧。
  21. ^ 瀬干”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  22. ^ 川干”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。
  23. ^ 毒流し”. コトバンク. 2019年6月28日閲覧。





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