手 動物の前肢

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 05:37 UTC 版)

動物の前肢

日常的には人間以外の動物の器官を「手」と呼ぶことがあるが、それはあくまで俗用で(主に、子供などが)呼ぶことがある[要出典]。学術論文、生物学の教科書などではこれを「手」とは書かない。 [注 7][注 8] 


哺乳類の前肢

現世(完新世)の動物では、特に哺乳類において生態に応じた形状の特化が確認できる。 樹上生活を送る動物の多くは手に鉤爪(かぎづめ)を持ち、これを樹木に引っ掛けて移動するが、霊長目は木や物をしっかりと掴むことのできる構造の手拇指と他の指との対向性)を進化させ、鉤爪の代わりに、指の末端を補強する役割を持つ扁爪(ひらづめ)を発達させた。霊長類の始原的動物が鉤爪を捨てて木の枝を握ったことは、後世の子孫の一つであるヒトにとってはその誕生の第一条件と言ってよい。ちなみに霊長類の多くは後肢(足)も手のように木や物を掴める構造となっているため、かつては(足が二足歩行に適した形に進化した人類に対して)「四手類」と呼ばれた。 クジラカイギュウアザラシアシカなど主たる海生哺乳類の手は、基本構造こそ陸上哺乳類と同じであるが、水中生活への進化適応の結果として魚の(ひれ)のような形態に変化している(ラッコなど例外はある)。 カモノハシは指の間に水掻きを有する(ビーバーは前肢には持たない)。 コウモリでは第1指(ヒトの親指に相当)に鉤爪(かぎづめ)があり、他の4本の指は伸張して皮翼を張る骨組みの役割を担っている(図-1の2.参照)。 現生の四足歩行をする哺乳類の指も生態に適った進化を遂げており、食肉目はその手足に、足音を消す働きを持ち衝撃をも吸収する蹠球(しょきゅう。肉球)を発達させている。 有蹄哺乳動物(奇蹄目偶蹄目長鼻目など)では、体重を支えたり走ったりするための(ひづめ)が高度に発達し、指は退化(退化的進化)を遂げて消失もしくは痕跡化しているものが多い。この方向性で最も進化を進めているのはウマ科であり、彼らは第3指(中指)一つで大地に立っている。 また、四足歩行をする動物の常として、前肢と下肢に著しい差異は見られず、とほぼ同様の構造体である。

両生類・爬虫類・鳥類の前肢

両生類爬虫類では、アシナシイモリヘビといった手足を持たないものが存在する。 海生カメ類は鰭状の手足を発達させているが、過去に目を向ければ海生爬虫類のほとんど全てが鰭状の手足を具えていたことに気づく。 中生代翼竜は、鉤爪を持つ第1・第2・第3指と、胴体との間に皮翼を張るための長い第4指を発達させていた(第5指は退化。図-1の1.参照)。 ブラキオサウルストリケラトプスといった大型の植物食恐竜や現生のゾウガメは、長鼻目と同じく、体重を支えることのできる分厚い蹄を持っている。 肉食性と樹上生のものは鉤爪を持つタイプが多く、特に現生のものでは種による著しい形態的差異は認められない。これは彼らに多様性が無いからではなく、現世が哺乳類隆盛の時代であることに起因する。

鳥類の前肢は、となった(俗用、日常的には、食用の鳥類の翼を「手羽」と呼ぶことはある)。軽量化を課題とした鳥類は進化して第1指を矮小化させ、第4指と第5指は退化・消滅させている。第2指と第3指は癒着して前腕の一部となり、翼を構成する(図-1の3.参照)。小型羽毛恐竜(前肢を有する)から分化したと考えられている。


注釈

  1. ^ インドイスラム諸国では排泄行為後は(トイレットペーパーで拭くのではなく)手桶の水を流しながら左手で肛門周囲の汚れを洗い落とすのが習慣だったため、後の時代ではトイレ備え付けのシャワーホースを使って肛門周囲を水洗浄することが通常になったとは言え、かつての習慣から左手は衛生面で不潔(不浄)な手とされており、食事の際には左手を隠し、右手でつかんで食べる文化がある。公の食事の席では左手を出すのは無礼な行為とされている。ただしインドイスラムでも左利きの人はいる。この場合食事は右でその他の動作は左で行う(ただしインドでこの食事文化が厳格なのは右手の指先だけで食べる習慣があるインド南部であり、インド北部ではほとんど意識されていない)。
  2. ^ 割り当て領域の場所は、遺伝である程度は傾向づけられているが、各人がどんな活動をどの程度行うか、行わないか、ということで、領域が広がったり狭くなったりする。例えば脚ばかりを使う人は、脚に割り当てられる領域がいくらか広がってゆく。頻繁に使うと、(神経網、シナプスが枝を伸ばし)結果として若干 割り当て領域が広がる。
  3. ^ 人にとって、口によるコミュニケーションが主たるものでついそちらばかりに気をとられがちだが、実は、「目は口ほどにものを言う」と言われており、目にも人の感情がしっかりと現れている、人の眼をよく見ると 人の気持ちが良く分かる、とか、「あの人は口では何も言わなかったけれど、眼に感情が現れていた」とか、「眼をよく見たほうがコミュニケーションも円滑になりますよ」といった意味である。そして、実は人は手でもコミュニケーションを行っている。
  4. ^ しばしば仏像が示す、さまざまな手の形。
  5. ^ 例えば聖書の次の箇所である。
    イエスがある町におられたとき、そこに全身レプラ(重い皮膚病)にかかった人がいた。この人はイエスを見てひれ伏し、「主よ、あなたならばわたしを清くすることがおできになります」とのべた。 イエスが手を差しのべてその人に触れ、「よろしい。清くなれ」と言われると、たちまちにしてその病は消え去った。 — 『ルカによる福音書』5章12~13
  6. ^ ロイヤル・タッチは結核の一種に対して有効な治療とされ、時代が下って1718世紀ごろにも儀礼化して盛んに行われ、ルイ15世は戴冠式で2,000人に触れたという。この治療対象は瘰癧(るいれき。頸部リンパ節結核。英語:Scrofula、別名:the king's evil)で、日本などでは珍しかったと思われるが、近世までのヨーロッパでは生活環境の違いなどから、儀礼的な行為も含め、ずっと多かった模様である。
  7. ^ カニサソリなど、節足動物でも前足に特徴のある場合はそれを「手」ということもあるが、これもあくまで俗用である。[要出典]
  8. ^ 生物学では、手を「ヒト前肢」と言うことがある。これは学問的で正式な表現である。だが、逆向きに、動物の前肢を「手」と呼んでしまうのは、あくまで俗用であり、学問的ではない。

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