古代祐三 来歴

古代祐三

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/25 04:33 UTC 版)

来歴

3歳でピアノ、5歳でヴァイオリンを学ぶ。ピアニストの母が久石譲の妻にピアノを教えていた縁で1974年3月3日から久石に師事[2]し、その下でインプロヴィゼーション(即興演奏)、ソルフェージュ(聴音)等の基礎的な音楽訓練を受ける[3][4]

高校生の時、電波新聞社に自作のゲームミュージックプログラムを持ち込んだ事で、同社出版のコンピューター誌『マイコンBASICマガジン』の音楽担当となり、ライター活動を行う。「YK-2」名義でゲームミュージックのパソコン向けプログラムを多数発表した他、いくつかゲームのレビューも掲載されている。また並行して、即売会での頒布を中心とした『100円ディスクシリーズ』[5](ONION software) 等の制作に参加した[3]

高校を卒業した1986年日本ファルコムにアルバイトとして入社し、商業作曲家としての活動を開始する。同社採用試験の際に持ち込んだ楽曲が『ザナドゥ・シナリオ2』で使用され、同作がデビュー作となった[4]。以降、『ロマンシア』(オープニング曲)、『ドラゴンスレイヤーIV』等への楽曲提供を経て、1987年、後にファルコムの代表作となる『イース』(オリジナル版、PC-8801mkIISRシリーズ)にてほぼ全曲[注釈 1]を担当し、音源 (YM2203) の特性を巧みに活かした斬新なサウンドが高い評価を受ける。

イースのヒットが同業者に与えた影響は極めて大きく、多数のフォロワーが出現した。イースのサウンドトラック「MUSIC FROM Ys」はキングレコード初のゲームミュージック専用レーベル「ファルコムレーベル」の第1弾になるなど、それまで一般的に馴染みの無かった「ゲームミュージック作曲家」という職種を世間的に認知させる第一人者ともなった。『ソーサリアン』では自身が開発したFM音源ドライバ「MUCOM88」を導入するなどし、メインコンポーザーとしてシステム・基本シナリオの全59曲中40曲あまりを担当した。その後、『イースII』への参加を最後に、約2年の在籍期間をもってフリーランスに転じた[4]

1988年、フリーになって初の発表作である『ザ・スキーム』(ボーステック[4]では、いち早くPC-8801用拡張音源「サウンドボードII」(YM2608) に対応し、ADPCMを積極的に利用した重厚なサウンドが話題を呼んだ(ゲームよりサウンドトラックCDの方が売れたという逸話がある[6])。その他に、サウンドボードII対応作品として作曲した『ミスティ・ブルー』(エニックス[4]等があり、サウンドトラックCDも発売され人気を集めた。

1990年、株式会社エインシャントを同年4月に設立。代表取締役社長は実母であった[7]。発表されて間もないスーパーファミコン用ソフト『アクトレイザー』(エニックス)にて、自身初となるオーケストラ調の楽曲を発表。従来の古代が使ってきた物とは概念の異なるハードウェアに苦労しつつも、ソフトウェア/ハードウェアに対する理解とゲームのBGMを作成する際の制約を熟知する古代ならではの、当時としてはリアルな金管・木管楽器の音色を実現した。サウンドトラックのライナーノーツでゲーム評論家の山下章は、『第2回初心会』で「並び立つ強力ソフト群を押さえ、間違いなく初心会の会場を独占していた」と記述し、「『アクトレイザー』のゲーム・カートリッジの中には、間違いなくオーケストラがいる」と評している。さらに、当時スクウェアにてファイナルファンタジーIVの楽曲を制作中だった作曲家の植松伸夫がアクトレイザーの楽曲のクオリティの高さに衝撃を受け、サンプリング音色を全て録り直している。植松は後年、「『アクトレイザー』の楽曲は業界内で一つの"事件"だった」と、『ファミ通』や同誌発行元のエンターブレイン社主催のゲーム音楽コンサートのステージ上や、ネット媒体等において度々述べている(詳細エピソードについては「逸話」の節にて後述)。

1991年、メガドライブ用ゲームソフト『ベア・ナックル』(セガ)にて、当時のゲーム音楽としては珍しかったダンスミュージックを取り入れ、話題を呼んだ[4]。これは1988年頃にロサンゼルスへ行った際、当時海外で流行していたハウステクノ等のダンス・ミュージックに衝撃を受け、帰国後に新宿や渋谷のレコードショップで音源を集めたり、Space Lab YELLOWなどのクラブへ赴いて研究を重ねた成果である[4]。『ベア・ナックルIII』では自作の音源ドライバにランダムでフレーズを作成する機能を導入するという試みを行い、賛否両論を巻き起こした[4]

2004年には、高校時代の同級生がプロデューサーを務めるレースゲーム『湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE』で、初となるアーケードゲームに進出。また、それまではインストゥルメンタルの楽曲制作が主体であったが、2005年には『NAMCO x CAPCOM』で初の歌物(「すばらしき新世界」:歌 flair)を発表。翌2006年にはコナミ社の代表的なタイトルである『悪魔城ドラキュラ』シリーズにも楽曲を提供する等、意欲的に新しい取り組みを行った。

2012年には、ゲームミュージックの演奏を目的とした日本初のプロオーケストラ集団「社団法人日本BGMフィルハーモニー管弦楽団」(現・JAGMO)の発起人・市原雄亮の要請を受け、遠藤雅伸と共に同オーケストラの代表理事に就任。現在は遠藤と共にJAGMO名誉会長を務める。

2013年には、テレビアニメ『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』の二期オープニングテーマを手がけるなど、ゲーム以外の仕事も始めている。


注釈

  1. ^ 「MUSIC FROM Ys」収録曲のうち、FM音源版16曲中15曲、没作品13曲中11曲、PSG版5曲中1曲。

出典

  1. ^ * 古代祐三プロフィール”. エインシャント. 2011年9月10日閲覧。
  2. ^ a b yuzokoshiroのツイート(750981536334229504)
  3. ^ a b 「ザ・ゲームミュージック・コンポーザー 〜古代祐三インタビュー〜」
  4. ^ a b c d e f g h i j 古代祐三『古代祐三インタビュー』(インタビュアー:Nick Dwyer)、レッドブルhttp://www.redbullmusicacademy.jp/jp/magazine/yuzo-koshiro-interview2020年5月15日閲覧 
  5. ^ 「100円ディスクシリーズ」(1999年2月9日時点のアーカイブ
  6. ^ 「古代祐三 BEST COLLECTION vol.1」(VGCD-0081)ブックレット掲載プロフィールより。
  7. ^ https://twitter.com/yuzokoshiro/status/1416281826054721537”. Twitter. 2021年8月29日閲覧。
  8. ^ 舟野治樹、松川純一郎、ソフト・コミュニケーションズ(編)、1993、『ゲーム・ミュージック大事典』 〈宝島コレクション〉 ISBN 978-4796605595 pp. p.103
  9. ^ OnlinePlayerEX 2010年11月24日付テーマ曲は古代祐三氏! メモ帳に気になるポイントを書き込める新作DSiウェア「RPG脱出ゲーム」が本日配信
  10. ^ Gpara.com 2010年10月19日付『ミステリールーム』最新画像が到着。楽曲に古代祐三氏の起用も決定
  11. ^ 古代祐三 (2019年4月2日). “公式発表がありました通り、この度メガドライブミニのメニュー画面の曲を担当させて頂きました。メガドラのFM音源を実際に使用して、ラインナップされている数々のゲームの音色を使ったメドレー的な楽曲となっております。 #メガドライブミニ”. @yuzokoshiro. 2019年8月27日閲覧。
  12. ^ * 岩崎啓眞、2019、『イース通史I』  p. 26
  13. ^ 『3D ベア・ナックルII』セガ 3D復刻プロジェクト注目作の顛末をオリジナル開発者と移植スタッフとが語らう【特別企画】(4/5)
  14. ^ 志田英邦『ゲーム・マエストロ VOL.3 コンポーザー編』毎日コミュニケーションズ、2001年、p.76。植松伸夫のインタビュー中の発言。
  15. ^ a b FF展レポート「FFVII 15周年記念ステージ」 & 「植松伸夫トークステージ」「FFVII」から「FF音楽」まで、ゲームファン必見のトーク満載でお届け!!
  16. ^ a b FFシリーズのオーケストラコンサート「Distant Worlds」は年末開催。植松伸夫氏がFF25年のエピソードを披露したトークイベントをレポート
  17. ^ 阿部美香「特集ゲームオンガク INTERVIEW植松伸夫」『DTM magazine 2014年9月号』寺島情報企画、2014年、p32-33
  18. ^ 『キングスナイト』の曲は『ドルアーガの塔』を意識した──作曲家・植松伸夫が語るスクウェア初期作品の思い出”. 電ファミニコゲーマー. 2016年12月14日閲覧。
  19. ^ a b c 週刊ファミ通 2010年6月24日号「桜井政博のゲームについて思うこと」
  20. ^ a b PRESS START 2010演奏曲紹介より(2010年6月14日時点のアーカイブ
  21. ^ Nintendo DREAM 2008年4月号『スマブラ談X』、および同誌2010年5月号『楽曲魂』第7回の古代自身に対するインタビューより。






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