卜部兼好 経歴

卜部兼好

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 10:26 UTC 版)

経歴

国文学者の風巻景次郎の考証(「家司兼好の社会圏」)による、いわゆる通説を述べる。 卜部氏古代より卜占を司り神祇官を出す神職の家柄であるが、南北朝期に成立した『尊卑分脈』にもとづき、父兼顕は治部少尉で吉田神社の神職であったとされる。母や生年は明らかでないが、一般には弘安6年(1283年)ごろの出生と考えられている。

堀川家家司となり、正安3年(1301年)に後二条天皇即位すると、天皇の生母である西華門院堀川具守の娘であったことから六位蔵人に任じられる。従五位下左兵衛佐にまで昇進した後、30歳前後に出家遁世するが、その詳細な時期や理由は定かでない。『徒然草』に最初に注目したと言われる正徹の歌論書『正徹物語』以来、後宇多法皇の死を悲しんで発心したとする説もあったが、1324年の法皇崩御のはるか前である1313年ないしそれ以前には遁世していたことが文書から確認されており、後宇多院崩御を契機とする説は現在では否定されている。法名としては、俗名を音読した兼好(けんこう)を名乗った。

出家した後の兼好の生活については修学院比叡山横川などに籠り仏道修行に励む傍ら和歌に精進した様子などが自著から窺われるがあまり明確ではない。鎌倉には少なくとも2度訪問滞在したことが知られ、鎌倉幕府御家人で後に執権となる金沢貞顕と親しくしている。その時、現在の神奈川県横浜市金沢区上行寺の境内に庵があったと伝えられる。

南北朝時代には、現在の大阪市阿倍野区にある正圓寺付近に移り住み、清貧自適な暮らしを営んでいたとも伝えられる。正圓寺境内東側に「兼好法師の藁打石」と「兼好法師隠棲庵跡」の碑が建っている。

二条為世和歌を学び、為世門下の和歌四天王の一人にも数えられる。その詠歌は『続千載集』・『続後拾遺集』・『風雅集』に計18首が収められている。また、散文で思索や見聞した出来事を記した『徒然草』は、室町時代中期以降、高く評価され、現代においても文体や内容が文学的に評価されているだけでなく、当時の社会風潮などを知るための貴重な史料ともなっている。

晩年には、当時の足利氏執事で名高い武家歌人でもある高師直に接近した[1]正平3年/貞和4年(1349年)末、師直が公卿洞院公賢に対し狩衣着用の規則を尋ねる際に、師直の使者として遣わされている(『園太暦』貞和4年12月26日条)[1]。弟子の命松丸は、後に室町幕府九州探題とある今川貞世(了俊)と親交があり、貞世が『徒然草』の成立の関わっているとの説もある。

没年は、『大日本史料』所引の『諸寺過去帳』収載『法金剛院過去帳』の記載や、17世紀中葉の大和田気求『徒然草古今抄』の記す伝承により、観応元年/正平5年4月8日1350年5月14日)ともされ、また異説として洞院公賢の『園太暦』は観応元年2月15日に兼好が伊賀国名張郡国見山にて死去したとする記事を載せていることからこの日とする説もあったが、これらの日付以降の活動を示す史料が複数指摘され、その中でもっとも遅いものとして1352年8月の『後普光園院殿御百首』奥書に名前がみえることから、現在の通説ではこの年以後と考えられている。


書籍出典

  1. ^ a b c d 亀田俊和 2015, p. [要ページ番号], 室町幕府初代執事高師直>北畠顕家との死闘>塩冶高貞の討伐.
  2. ^ 亀田俊和 2015, p. [要ページ番号], 栄光と没落>高師直の信仰と教養>和歌.
  3. ^ 夕腸亭馬齢『近松門左衛門著 兼好法師物見車』

サイト出典

  1. ^ 宮沢天”. カラフルキャスティング. 2023年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月18日閲覧。
  2. ^ 人気声優・梶裕貴さん、Eテレ『ねこねこ日本史』のゲスト声優に決定!”. アニメイト (2019年12月5日). 2019年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月18日閲覧。
  3. ^ a b c アニメ古典文学館-4-徒然草”. サン・エデュケーショナル. 2021年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月18日閲覧。






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