レーティッシュ鉄道ABe8/12 3501-3515形電車 仕様

レーティッシュ鉄道ABe8/12 3501-3515形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/07 17:28 UTC 版)

仕様

車体

先頭部、25+4芯の重連総括制御用、ベルニナ線暖房用DC 1000 V、18+1芯のドア・電灯制御用、本線系統の暖房用AC 300 Vの各電気連結器と圧縮空気、空気ブレーキ、真空ブレーキ用の各連結ホースを装備する
本形式の屋根上、各車に空調装置、集電装置を搭載するほか、両先頭車に主変圧器、主電動機等の冷却ファン、ブレーキ用抵抗器等を搭載する
  • 本機は車軸配置Bo'Bo'+2'2'+Bo'Bo'で3両固定の固定編成で、個別形式は前位側からABe4/4 350形電車、Bi 356形客車、ABe4/4 351形電車となっているが、固定編成で使用されることを前提としており、機器類も分散配置されている。編成両端のABe4/4 350、351形は床面高さ1050 mmの高床式、Bi 356形は台車上部が993 mmの高床式で車端部がスロープを経由して1050 mmまで床面が高くなっており、その他の部分がレーティッシュ鉄道のホーム高さに対応した床面高さ480 mmの低床式となっている。客室はABe4/4 350、351形が編成端側が1等室、編成中央側が2等室自転車積載スペースが用意され、Bi 356形は全室2等室で車椅子対応トイレ、車椅子スペースおよび自転車積載スペースが用意されている。
  • 車体は急曲線のあるベルニナ線に対応した車体長16 m級の短いもので、鋼体は基本的にアルミ製で車端耐荷重800 kNに対応しており、運転台部分のみ縦方向に左右2本設置された太径の鋼管による骨組みにガラス繊維強化プラスチック製外装を装備したもの、モジュール構造となっている車体は車体側面の上部を内側に絞り、台枠は台車がはまり込む構造として屋根上機器および床下機器のカバーを装備したものとなっている。なお、車体の設計および製造の一部はdesign & technik[21]が担当している。
  • 先頭部はGTWシリーズやFLIRTシリーズの流れを引くデザインで、縦方向に曲面で大きく絞り込み前面窓ガラス下部に段差を設け、左右側面も前面下部へ向かって内側へ絞った形状であり、大型の1枚曲面ガラスの全面窓ガラスの上部にLED行先表示器が設置されており、下部の左右および上部に前照灯とLEDの標識灯のユニットが設置されている。連結器は車体取付のねじ式連結器で緩衝器(バッファ)が中央、フック・リングがその左右にあるタイプである。また、車体の前面下部に上部がステップを兼ねた大型のスノープラウが、台車先頭部にも砂撒き装置用の砂箱を兼ねた小型のスノープラウが設置されており、カーブの区間でも確実に除雪ができるようになっている。
  • 側面は窓扉配置d2D3(ABe4/4 351形) - 3D2(Bi 356形) - 2D21(ABe4/4 350形)、もしくはd2D2(ABe4/4 350形) - 2D4(Bi 356形) - 3D21(ABe4/4 351形)で、側面窓は大型の固定式を基本として1両あたり2箇所程度が上段下降、下段固定式となっており、乗降扉脇の窓下部にはLED式の行先表示器が設置されている。なお、窓高さは低床部と高床部のもの上辺を揃えて設置されている。乗降扉はABe4/4 350、351形は有効幅850 mm片開式、Bi 356形は扉下部の床内に引込式のステップを設置した有効幅1300 mm両開式で、いずれも電気駆動のスライド式プラグドアとなっている。
  • 室内はABe4/4 350、351形は運転室の背面が1等室で、2+1列の3人掛けの固定式クロスシートが2ボックス設置され、その後部が出入口および自転車積載スペース、さらにその後部が2等室となっており、2+2列の4人掛けの固定クロスシートがABe4/4 351形では3ボックス、ABe4/4 350形では2ボックスが設置され、連結部は機器室となっている。Bi 356形は全室2等室で車体両端部の高床部に2+2列の4人掛けの固定クロスシートが2ボックスずつ、低床部は前位側から自転車積載スペースおよび手荷物積載スペース、出入口、車椅子対応の真空式トイレ、折畳式座席形付の車椅子スペースとなっている。座席は1等室、2等室いずれも1名分ずつの独立した形状のバケットシートで肘掛とヘッドレスト付で、1等室のものは黒系色のモケットと白の布製ヘッドレストカバー付、2等室のものは青系色のモケットとビニール製ヘッドレスト付のものとなっている。
  • 室内には列車位置情報など各種案内用の液晶ディスプレイが設置され、車内放送装置、車外の行先表示器などと共にRuf-Gruppe[22]製のVisiWebと呼ばれるシステムによって統合されている。
  • 運転室は中央運転台のデスクタイプで、2ハンドル式のマスターコントローラーを設置しており、3面式の計器盤の各計器類は従来タイプの針式のもののほか、車両情報装置用の液晶ディスプレイが設置されており、乗降扉は左側のみの設置、側面窓には電動式のバックミラーが設置されている。
  • 車体塗装は赤をベースに車体裾部が濃赤色で赤色との境界部分に銀帯が入り、窓周りを黒としたもので、ABe4/4 350、351形は2等室窓下に、Bi 356形は後位側の窓下にレーティッシュ鉄道のロゴが、側面乗降扉横の銀帯部にグラウビュンデン州のロゴが入り、正面下部中央にはグラウビュンデン州のエンブレムがつく。また、屋根および屋根上機器、乗降扉が銀色、床下機器と台車、床下機器カバーの下辺部はダークグレーである。

走行機器

  • 制御方式は主変換装置IGBTを使用したものであり、交流区間ではコンバータ・インバータ式、直流区間ではインバータ式で主電動機を駆動しており、1台の主変換装置に2組のインバータと1組の補助電源装置を装備し、1組のインバータで1台の主電動機を制御することで、さまざまな天候下でも駆動力を確保できるように配慮したものとなっている。パンタグラフはシングルアーム式のものを各車に1基ずつを搭載しており、両端のABe4/4 350、351形のものが舟体を3本装備した大電流対応の直流用、中間のBi 356形のものが舟体2本の交流用のものであるが、3基は母線引通で接続されており電気的には差異はなく、直流用の電磁式遮断器および交流用の真空遮断器の双方が接続されている。
  • 主変圧器はABe4/4 350、351形のそれぞれ床下中央にABB製で重量4800 kgのTyp LOT 1250が1基ずつ設置されており、入力は架線からAC 11 kV・16.7 Hz、出力は主変換装置用のAC 850 V・263 kVAを4組、暖房用としてAC 1000 V・200 kVAおよびAC 320 V・200 kVAを1組ずつ[23]となっており、冷却は油冷式で冷却油は屋根上に搭載された冷却ファンにより冷却される。
  • 主変換装置はABB-Schweiz製のBordlineシリーズのうち、小型の交流/直流両用Typ Bordline CC700をABe4/4 350、351形床下に各2基搭載している。これらは補助電源用出力の違いでTyp CC700 SR1およびTyp CC700 SR2となっており、前者はコンバータ1基と主電動機制御用の出力各350 kWのインバータ2基、補機用三相AC 400 V・50 kVA (10 - 50 Hz)および蓄電池充電用DC 36 V・8 kW出力の補助電源装置1基を、後者は同じく主電動用インバータ2基と補機用三相AC 400 V・50 kVA (10 - 50 Hz)および三相AC 400 V・60 kVA (10 - 60 Hz)出力の補助電源装置をそれぞれ一体の筐体に収めたものとなっているほか、発電ブレーキ用の125 kW用の抵抗器2基を屋根上に搭載している。
  • 車両情報装置は力行、ブレーキ指令や空転制御やブレーキ力調整などの制御伝送や、乗降扉、空調装置、モニタ装置、各種表示装置の制御が可能であり、主な伝送にCANopenを使用しており、データレコーダーとしてはHASLER Rail[24]製のTeloc1200を搭載する。
  • ブレーキ装置は電気ブレーキとして主変換装置による回生ブレーキと屋根上に搭載したブレーキ用抵抗器を使用する発電ブレーキを装備するほか、列車用空気ブレーキ、入替用直通空気ブレーキ、列車用の真空ブレーキおよび電磁吸着ブレーキを装備する。
  • 主電動機は連続定格出力250 kWのかご形三相誘導電動機 をABe4/4 350、351形に各4基ずつ搭載し、最大出力は交流区間で2600 kW、直流区間では2400 kW、牽引力260 kN、最高速度100 km/hの性能を発揮し、本線系統の35 ‰区間では245 t、ベルニナ線の70 ‰区間では140 tを牽引することができる。
  • 台車はStadler製の低床式台車で、ABe4/4 350、351形の動台車は車輪径810 mm、軸距2000 mm、Bi 356形の従台車は車輪径685 mmで軸距1800 mmのいずれもボルスタレス式台車枕ばね空気ばね、軸ばねはコイルばねで軸箱支持方式は軸梁式となっており、動台車には電磁吸着ブレーキを装備する。主電動機は台車枠に装荷され、動力は駆動装置出力軸と動軸に設置された中空軸間および、中空軸と動軸間に装備されたクイルと積層ゴムブロックを使用した継手で変位を吸収するクイル式駆動方式の一種で動輪へ伝達される。
  • そのほか、電動空気圧縮機、電動真空ポンプ空調装置蓄電池などを搭載する。

主要諸元

  • 軌間:1000 mm
  • 電気方式:AC 15 kV 16.7 HzおよびDC 1000 V 架空線式
  • 最大寸法:49500(ABe4/4 350、351形:16690、Bi 356形:16120)mm、全幅2650 mm、全高3800 mm
  • 床面高さ:
    • ABe4/4 350、351形:1050 mm
    • Bi 356形:993 mm(高床部)、480 mm(低床部)
  • 軸配置:Bo'Bo'+2'2'+Bo'Bo'
  • 車輪径:
    • ABe4/4 350、351形:810 mm
    • Bi 356形:680 mm
  • 自重:106 t
  • 座席定員:24名(1等座席)、76名(2等座席)、14名(折畳座席)、2名(車椅子)
  • 走行装置
    • 主制御装置:IGBT使用のVVVFインバータ制御
    • 主電動機:かご形三相誘導電動機、連続定格出力250 kW×4台×2両
  • 最大出力:2600 kW(交流区間)、2400 kW(直流区間)
  • 起動時牽引力:260 kN
  • 最高速度:100 km/h(設計最高速度120 km/h)
  • ブレーキ装置:回生ブレーキ空気ブレーキ真空ブレーキ電磁吸着ブレーキ

  1. ^ ABe4/16 3101-3105形として2013年から運行開始、シュタッドラー・レール製
  2. ^ レーティッシュ鉄道ABi 5701-5706形客車として当初予定の5両編成から展望車・制御客車付の7両編成とした6編成が2016年より順次運行開始。シュタッドラー・レール製
  3. ^ エンガディン線用の機体も含めたABe4/16 3111-3146形4両36編成を2019年以降に導入することを2015年に決定
  1. ^ a b Stadler Rail AG, Bussnang
  2. ^ レーティッシュ鉄道では2007年11月1日より新しい5桁からなる機番体系に移行しており、本機も当初計画時はABe4/4 861-875形、Bi 2811-2825形、ABe4/4 811-825形であった
  3. ^ Gelenktriebwagen
  4. ^ Flinker Leichter Innovativer Regional-Triebzug、軽量高速で革新的な近郊用電車の意
  5. ^ 1時間定格出力3200 kW、最大牽引力200 kN。35パーミルの坂・300 tを60 km/hで牽引可能
  6. ^ ABB Schweiz AG, Baden、ABBグループにおけるスイス国内会社の一つ
  7. ^ レーティッシュ鉄道の創始者
  8. ^ 建築家、アルブラ線建設時の設計責任者
  9. ^ グラウビュンデン州出身のアルペンスキー選手
  10. ^ グラウビュンデン州出身のクロスカントリースキー選手
  11. ^ グラウビュンデン州で活動した画家
  12. ^ 1400年代のグラウビュンデン州の英雄
  13. ^ グラウビュンデン州出身の土木建設家、レーティッシュ鉄道の橋も手掛ける
  14. ^ グラウビュンデン州トゥルン出身のベネディクト会修道士でアルプス探検家
  15. ^ グラウビュンデン州出身の彫刻家
  16. ^ グラウビュンデン州シャンフ出身の作曲家オルガニスト
  17. ^ グラウビュンデン州サメダン出身の政治指導者
  18. ^ グラウビュンデン州クール出身の政治家、連邦参事会の一員
  19. ^ グラウビュンデン州出身で、スイス唯一の国立公園であるグラウビュンデン州のスイス国立公園の設立提唱者
  20. ^ グラウビュンデン州トゥルン出身で絵本画家として知られる画家、グラッフィックデザイナー
  21. ^ design & technik AG, Altenrhein、FFA(Flug- und Fahrzeugwerke Altenrhein)やSWP(Schindler Waggonfablik)の流れを汲んでおり、鉄道車両の車体および内装のデザインおよび設計、製造を行う
  22. ^ Ruf Informatik AG, Ruf Telematik AG, Ruf Multimedia AG, Ruf Services AG, W&W Informatik AG, Ruf Diffusion SAで構成される鉄道情報システムメーカー
  23. ^ レーティッシュ鉄道では古くから暖房用電源はAC 300 Vを使用していたが、長編成化などによる使用電力増に対応するため、これを順次AC 1000 Vとするよう機材の改造を進めている
  24. ^ Hasler Rail AG, Bern
  25. ^ なお、それまでの最高記録はベルン-ソロトゥルン地域交通(RBS)のRABe4/12 21-26形(通称NExT)が2009年7月1日に記録した134 km/hである
  26. ^ RegioExpress、ドイツではレギオナルエクスプレス
  27. ^ Einheitswagen II






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