ハモ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/25 13:28 UTC 版)
ハモの利用史
日本列島ではハモは縄文時代から利用されている[7]。京都市中京区の本多甲斐守京邸からは多数の動物遺体が出土し、ハモの前頭骨が出土している。この前頭骨は正中方向に切断されており、椀物に用いる出汁を引くために切断されたものと考えられている[7]。また、別の前頭骨には刃物による横方向の切痕が残り、目打ちで頭部を固定した際に暴れまわるハモの頭部を包丁で叩いた傷と考えられている[7]。また、現在のハモ調理では行われないが、歯骨からは包丁で危険な歯を取り除いた傷も見られる[7]。
調理法
ウナギ目やニシン目は骨格が複雑な魚が多く、脊椎骨(背骨)から肋骨以外に、上椎体骨・上神経骨、上肋骨(いわゆる血合い骨)などと呼ばれる肉間骨がいくつも体側筋の内部へ放射状に伸びている。これらがいわゆる魚の小骨と呼ばれるもので、ハモはこの小骨が多い上に硬く、調理の際には極めて稀な料理人が行う「骨取り」以外は一般的に「骨切り」という特殊処理が必要である。これは腹側から開いたハモの身に、皮を切らないように細かい切りこみを入れて小骨を切断する技法で、下手にこれをやると身が細かく潰れてミンチ状になってしまい、味、食感ともに落ちてしまうため熟練が必要で、はも切り包丁と呼ばれる、専用の包丁がある。京料理の板前の腕の見せ所であり「はもの骨切り 手並みのほどを見届けん」の句がある。「一寸(約3cm)につき26筋」包丁の刃を入れられるようになれば一人前といわれる。骨切りの技術により京都ではハモの消費が飛躍的に増えたが、関西圏以外では骨切りができる調理師も少なく、ウナギやアナゴに比べ需要及び知名度が低い。
比較的臭みが強い上、ウナギ同様に加熱しない状態では血液に毒性があるため刺身など生では食べられず、必ず加熱処理する。骨切りを施したハモを熱湯に通すと反り返って白い花のように開く。これを湯引きハモ(鱧ちりと呼ぶこともある)または牡丹ハモといい、そのまま梅肉やからし酢味噌を添えて食べるほか、吸い物、土瓶蒸し、鱧寿司、天ぷら、鱧の蒲焼や唐揚げなどさまざまな料理に用いられる。また、骨切りしたハモと玉ねぎを醤油ベースの割下で煮た「鱧すき」という鍋料理もある。またハモの身は上質なカマボコの原料に使われる。その際残った皮を湯引きして細かく切ったものは、キュウリとあえて「鱧キュウ」という酢の物にも利用される。漁船の生簀に入れると互いに噛みあって殺し合うため、市場に生きたまま運ぶのが難しい魚であるが、生きたハモを捌かないと湯引きがきれいに開かないといい、活きたハモは珍重され高値で取引される。
漁獲
おもに底引き網と延縄で漁獲される。釣りで揚がることもあるが、咬みつかれる危険がある上に調理に技能が必要(前述)なため、ハモを狙って釣る人は少ない。
陸揚げ漁港
2014年の上場水揚量[8]
順位 | 漁港 | 県 | 上場水揚量(t) | 単価(円/kg) |
---|---|---|---|---|
第1位 | 八幡浜漁港 | 愛媛県 | 270 | 602 |
第2位 | 由良漁港 | 兵庫県 | 98 | 1,066 |
第3位 | 小松島漁港 | 徳島県 | 90 | 604 |
第4位 | 銚子漁港 | 千葉県 | 48 | 307 |
第5位 | 長崎漁港 | 長崎県 | 36 | 666 |
第6位 | 豊浜漁港 | 愛知県 | 18 | 870 |
第7位 | 床波漁港 | 山口県 | 16 | 276 |
第7位 | 庵治漁港 | 香川県 | 16 | 413 |
第9位 | 観音寺漁港 | 香川県 | 12 | 240 |
第10位 | 鶴見漁港 | 大分県 | 11 | 194 |
ハモに関する行事
- ^ “魚介類の名称表示等について(別表1)”. 水産庁. 2013年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月29日閲覧。
- ^ 日本おさかな雑学研究会 『頭がよくなる おさかな雑学大事典』 p.73-74 幻冬舎文庫 2002年
- ^ 白井翔平 監修 太平洋資源開発研究所編 全国方言集覧 【動植物標準和名⇨方言名検索大辞典】 【第一期】東北/北海道編 [上巻][下巻]生物情報社(直販)2001年
- ^ 馬渕和夫 編著 古写本和名類聚抄集成 第三部 勉誠出版株式会社 2008年 635-6頁
- ^ 小津安二郎監督の1962年映画『秋刀魚の味』は川崎市の話だが、恩師の佐久間(東野英治郎)が教え子の宴会に呼ばれる。
「美味しい美味しい。こんな美味いものは、生まれてこのかた食ったことがありません。これは、なんというものですかいの?」教え子の一人が、「先生、それは、ハモです」すると先生、「ハム?」「いや、ハムじゃなくハモ」「アア、ハモ——なるほど、結構なもんですなア。ウーム、鱧か・・・。サカナ偏にユタカ・・・」…と先生、納得した様子。酔いつぶれて畳に臥している先生をみた教え子の一人が「ヒョータン(先生のあだ名)、ハモの字は知っていても、食ったことがねえんだぜ」と知識だけの教師を皮肉っている。
- ^ 食・漢方薬・健康のブログ
- ^ a b c d 岡嶋(2014)、p.70
- ^ 一般社団法人漁業情報サービスセンター. “漁港別品目別上場水揚量・卸売価格”. 産地水産物流通調査. 水産庁. 2015年11月19日閲覧。
- ^ 「祇園祭」良くある質問から
- >> 「ハモ」を含む用語の索引
- ハモのページへのリンク