ウコン ウコンの概要

ウコン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/06 15:54 UTC 版)

ウコン
ウコン
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: ショウガ目 Zingiberales
: ショウガ科 Zingiberaceae
: ウコン属 Curcuma
: ウコン C. longa
学名
Curcuma longa L. (1753)[1]
シノニム
和名
ウコン(鬱金)
英名
turmeric

東南アジア諸国には、インドネシア原産でクルクミンの含有量が多く薬効が強い変種ジャワウコン (Javanese turmeric) があり[4]、現地名由来のクニッツや別名クスリウコンという呼び名で日本でも流通している。ヒンディー語ウルドゥー語グジャラーティー語ハルディ (Haldi) でも知られる他に、琉球語ウッチンインドネシア語マレー語クニット (kunyit、通常は英語の複数形にしてクニッツ)、ハワイ語オレナ (Ōlena) などでも知られる。タイ語では、カミンチャン。

伝統医学アーユルヴェーダインド料理に使われ[4]、また、根茎に含まれるクルクミンは黄色い染料の原料としても広く用いられてきた。今日でもスパイスとして用いられている[4]。日本では、カレー粉に用いられるほか、クルクミンの肝機能への影響を期待して二日酔い対策ドリンク[注 1]の原料にも用いられる。

類似種と呼称

ウコンの花

ウコンは、別名秋ウコン[3]または赤ウコンともいう。中国植物名は「姜黄」[1]、陶穀の清異録には「金母蛻[6]」。根茎の日本薬局方の生薬名は鬱金ウコン[7]、中国薬物名は姜黄(キョウオウ)[8]。根茎の主用途は食材であり、苦みが無く濃いオレンジ色である[3]

次の「ウコン」は同属別種である。

春ウコン
キョウオウ (C. aromatica)。中国植物名と中国薬物名は「鬱金」[8][9]。日本の生薬名は姜黄キョウオウ。主用途は健康食品など。春にピンク色の花が咲く[3]黄ウコンワイルド・ターメリックとも。苦く黄色で、ミネラルや精油成分が豊富。
紫ウコン
ガジュツ (C. zedoaria)。中国植物名は「莪朮」[10]。日本薬局方の生薬名は莪蒁ガジュツ[11]、生薬名は莪朮ガジュツ。主用途は中医学漢方など。夏(7 - 10月)に白い花が咲き[3]白ウコン夏ウコンとも。ただし、白ウコンは同科ショウガ属のハナショウガ (ランプヤン、Zingiber zerumbet) を指すこともある。
ジャワウコン (Javanese turmeric, Curcuma xanthorrhiza)[4]

中国では、日本でのウコンをキョウオウ(姜黃)[1]、日本でのキョウオウをウコン(鬱金)といい、日本と逆になっている。つまり中医学漢方の生薬分類上、春ウコンと秋ウコンの根茎姜黄キョウオウ塊根鬱金ウコンとしているが、日本に漢方が書物により伝来し普及する過程で、これら情報が混乱し正しく伝わらなかったためである。故に中国から輸入のウコン類生薬は、中国の定義に基づいた名称のものもある。

形態・生態

熱帯アジア原産の多年草[7]。草丈は40 - 50センチメートル (cm) から[7]、100 cm以上になる[12]根茎は多肉で太く、輪節があり、中は鮮やかな黄色をしている[7][12]。主根茎と側根茎からなり、主根茎はほぼ卵形体で長さは約4 cm、径約3 cmある[13]。側根茎は円柱形でやや湾曲し、長さ2 - 6 cm、径1 cmほどある[13]

根茎から偽茎が発生して[14]は数個2列に互生し、長い柄が立つ[7]葉身は大きく、長さ50 - 100 cmの線形から長楕円形をなす[14]

花期は8 - 11月[7]花序は夏から秋にかけて、葉の間から高さ20 - 30 cmほどになる大型の穂状花序を出す[7][15][14]花穂は多数の淡緑色の苞葉が積み重なった姿をしており、上方のものは先端が白色、ときに淡紫紅色を帯びて目立つがこれは花ではなく、下部の苞葉の間から淡黄色の花を咲かせる[7][15]


注釈

  1. ^ 例えば、ハウス食品の二日酔い対策ドリンク「ウコンの力」など。
  2. ^ またIUPAC名では、(1E,6E)-1,7-ビス(4-ヒドロキシ- 3-メトキシフェニル)-1,6- ヘプタジエン-3,5-ジオン;(1E,6E)-1,7-bis (4-hydroxy-3-methoxyphenyl) -1,6-heptadiene-3,5-dione となる。

出典

  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Curcuma longa L. ウコン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月7日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Curcuma domestica Valeton ウコン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023-+01-07閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 103.
  4. ^ a b c d e f Herbs at a Glance - Turmeric (Report). アメリカ国立補完統合衛生センター. 30 November 2016.
  5. ^ 小曽戸洋「『日本薬局方』(15改正)収載漢薬の来源」『生薬学雑誌』第61巻第2号、2007年、p.69、ISSN 00374377NAID 40015616633 
  6. ^ 『清異録 江淮異人録』上海古籍出版社、2012年。 
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n ウコン Curcuma longa L.”. 熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース. 熊本大学薬学部. 2023年1月7日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k 貝津好孝 1995, p. 120.
  9. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Curcuma aromatica Salisb. キョウオウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月7日閲覧。
  10. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Curcuma phaeocaulis Valeton ガジュツ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月7日閲覧。
  11. ^ ガジュツ Curcuma phaeocaulis Valeton”. 熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース. 2023年1月7日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i j 磯田進. “今月の薬草:ウコン Curcuma longa L. ( ショウガ科 )”. 薬学豆知識. 日本薬学会. 2023年1月7日閲覧。
  13. ^ a b c d e f 新常用和漢薬集:ウコン(鬱金)”. 東京生薬協会. 2023年1月7日閲覧。
  14. ^ a b c d 薬草の花:ウコン(鬱金)【10月】”. 生薬ブログ. 日野製薬 (2019年10月1日). 2023年1月7日閲覧。
  15. ^ a b c d 季節の花(東京都薬用植物園):ウコン(ショウガ科)”. 東京生薬協会. 2023年1月7日閲覧。
  16. ^ a b c d e f g h i j k 金子美登 2012, p. 165.
  17. ^ “Turmeric--chemistry, technology, and quality”. Crit Rev Food Sci Nutr 12 (3): 199–301. (1980). doi:10.1080/10408398009527278. PMID 6993103. 
  18. ^ 日本のハーブ事典 村上志緒 東京堂出版
  19. ^ 日本のハーブ事典 村上志緒 東京堂出版P85
  20. ^ 大澤俊彦、「がん予防と食品」『日本食生活学会誌』 2009年、20巻 1号、11-16頁、doi:10.2740/jisdh.20.11
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  23. ^ Iwata K.,et al.2006."Iron content and consumption of health foods by patients with chronic hepatitis C." J Gastroenterol. 2006 Sep;41(9):919-20.(PMID 17048058)
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  26. ^ Jun-ichi NAGATA and Morio Saito (2005) Evaluation of correlation between amount of curcumin intake and its physiological effects in rats. Food Sci. technol. Res.,11(2), 157-160,2005
  27. ^ 健康・栄養ニュース第15号P5(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
  28. ^ 木村 吉秀 「ウコンによる薬物性肝障害により影響を受けた自己免疫性肝炎の1例」 ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA 46(1), 26-32, 2005-01-25
  29. ^ 中本譲 「う金(ウコン)の人体に及ぼす影響及び副作用についての検討」 日本栄養・食糧学会総会講演要旨集 巻:49th 頁:206
  30. ^ 矢島 純 「Database of side effect cases. New trial of presentation of drug information. Dermatological medicines. A case of allergic contact dermatitis by external-use drug containing curcuma」 診断と治療 巻:84頁:760 特殊号:増刊号
  31. ^ ウコン摂取で、肝機能障害、悪化し死亡”. 医学雑談. 三田国際ビルクリニック. 2012年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月3日閲覧。
  32. ^ ウコン摂取で肝障害 肝硬変の60代女性、症状悪化し死亡 「産経新聞」2004年10月19日
  33. ^ 伊藤弘康「臨床医の立場から見た肝臓(肝障害)と健康食品について」(PDF)『生物試料分析』第32巻、第1号、生物試料分析研究会、66頁、2009年。 オリジナルの2014年4月14日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20140414225725/abs2009.umin.jp/summary/sf3.pdf2010年10月3日閲覧 
  34. ^ 小池麻由, 大津史子, 榊原仁作 ほか、「「原著」健康食品・サプリメントによる健康被害の現状と患者背景の特徴」 『医薬品情報学』 2013年 14巻 4号 p.134-143, doi:10.11256/jjdi.14.134
  35. ^ 小島裕治 「健康食品, 特にウコンによる肝障害の検討」『日本消化器病学会雑誌』 101 : 607, 2004
  36. ^ 「ウコンについて」日本医師会


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