魔法族とマグル
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「ハリー・ポッターシリーズの用語一覧」の記事における「魔法族とマグル」の解説
『ハリー・ポッター』シリーズでは、魔法族(魔法使いや魔女)の発祥は、ある日、突然変異で魔力を有した人間が誕生したこととされている。その後、魔力を持たない人間は「マグル」と呼ばれるようになった。 魔法力は優性遺伝とされているが、まれに劣性遺伝子が顕在化し、魔法族の家に生まれながら魔法が使えない者が誕生することがある。こうした人間は作中で「スクイブ」と呼ばれる。一方で、発祥期より引き続き、マグルのなかから突然変異で魔法使いや魔女が生まれることがある。 魔法界では出自・血統への差別が存在しており、純血の魔法族を中心に、マグルや「マグル生まれ」の魔法族を差別する傾向が少なからず見られる。 作者のローリングは「作中で以下の言葉を頻繁に使う者はその人の中にある偏見を暗示している[要出典]」と語る。 純血 魔法使いと魔女の夫婦から生まれた魔法族を指す単語。ただし、厳密には「初代以降、純血の魔法族のみで続いてきた家系の魔法族の夫婦の間に生まれた魔法族」を指す。 彼らは初代以降、マグルの血を交えないよう、何世代にも渡って純血の魔法族同士で婚姻を続けてきたため、作中に登場する純血の魔法族はみな姻戚関係にある。ただし、ゴーント家のように、純血を維持するために近親婚を繰り返した結果、遺伝病が発生した家も存在する。純血主義 マグルはもちろん、マグル生まれの魔法族や彼らを擁護する魔法族を排除し、純血の魔法族が魔法界を支配すべきであるという思想。ホグワーツ創始者のひとり、サラザール・スリザリンによって提唱され、魔法界の歴史の趨勢に伴い、次第に世論のひとつとして浸透していった。 血を裏切る者 純粋な魔法族でありながら、マグルやマグル生まれの魔法族と親密になったり結婚したりした者を指す侮蔑的な語。ウィーズリー家は「血を裏切る者」を数多く輩出してきたことで知られ、純血主義者たちに冷遇されることが多かった。 聖28一族 「純血一族一覧」という本に記された、「間違いなく純血の血筋」とされる、イギリスの魔法族の純血の名家のことを指す。このリストは匿名で作成されたが、作成者はノット家のカンケンタラス・ノットとされている。その多くが純血主義を標榜しており、ブラック家のように魔法界の王族を自称する家系もあれば、ウィーズリー家のように純血主義に否定的な家系、ゴーント家のように滅びた家系もある。以下に一覧を記す。アボット家該当者はハンナ・アボット。 ウィーズリー家ロン・ウィーズリーの出身家系。他の純血家系と異なり、マグルやマグル生まれにも寛容的であり、それらの人物と多く婚姻関係を結んでいることから、他の純血家系から「血を裏切る者」とみなされている。 エイブリー家2代続けて死喰い人を輩出している。死喰い人のエイブリーが該当する。 オリバンダー家ギャリック・オリバンダーの出身家系だが、彼自身は半純血(母親がマグル生まれ)。代々杖作りに従事してきた家系であり、その歴史は紀元前にまで遡る。 カロー家該当者はアミカス・カロー、アレクト・カロー兄妹。 クラウチ家魔法界でも最古の魔法家系のひとつだったが、バーテミウス・クラウチ・ジュニアの死により断絶する。 グリーングラス家該当者はアステリア・グリーングラス。かつては純血主義的であったが、二度目の魔法戦争を経て軟化した。代々、血の呪いを引き継いでいる。 ゴーント家ヴォルデモートの母方の家系であり、サラザール・スリザリンやカドマス・ペベレルを先祖に持つ。極度の純血主義であり、純血を保つために近親相姦を繰り返した結果、精神異常や遺伝病が発生している。また、全員がパーゼルマウスである。モーフィン・ゴーントの死により断絶した。 シャックルボルト家該当者はキングズリー・シャックルボルト。 シャフィク家アラブ系の一族であり、本編では出身者が登場しない。 スラグホーン家該当者はホラス・スラグホーン。 セルウィン家該当者は死喰い人のセルウィン。また、ドローレス・アンブリッジはセルウィン家出身と詐称していた。 トラバース家該当者は『黒い魔法使いの誕生』に登場するトーキル・トラバース。 ノット家このリストを作成したカンタンケラス・ノットの出身家系。その他セオドール・ノットが該当。 パーキンソン家該当者はパンジー・パーキンソン。 バーク家該当者はカラクタカス・バーク。 フォウリー家該当者は「魔法同盟」に登場するグリム・フォウリー。 ブラック家シリウス・ブラックの出身家系。イギリス最古の魔法家系のひとつであり、その歴史は中世にまで遡る。ほとんどの純血家系と縁戚関係にあることから、魔法界の王族を自称している。 フリント家該当者はマーカス・フリント。 プルウェット家モリー・ウィーズリーの出身家系で、ミュリエル・プルウェットが該当する。男系の血筋は、ヴォルデモート陣営との戦いで断絶している。 ブルストロード家該当者はミリセント・ブルストロード。 マクミラン家該当者はアーニー・マクミラン。少なくとも九代前から続いている家系。 マルフォイ家ドラコ・マルフォイの出身家系。中世フランスに起源を持つ家系であり、ウィルトシャー州にある地方領主たちから没収した一等地の豪邸に代々住んでいる。現在は純血主義に傾倒しているが、かつてはマグルと癒着していた時期もあった。 ヤックスリー家該当者はコーバン・ヤックスリー。 レストレンジ家ベラトリックス・レストレンジの嫁ぎ先の家系。出身者はリタ・レストレンジ、ロドルファス・レストレンジが該当。フランス魔法界の旧家で、純血思想に加え男尊女卑の思想を持つ。 ロウル家該当者はソーフィン・ロウル。 ロジエール家該当者はエバン・ロジエール、および「ホグワーツの謎」に登場するフェリックス・ロジエール。 ロングボトム家ネビル・ロングボトムの出身家系。魔法界でも、最古の純血家系のひとつ。 なお、ポッター家については、ポッターという姓がマグルにもありふれたものであるうえ、ハリーの曽祖父ヘンリー・ポッターが第一次世界大戦期(第一次魔法戦争)にマグルの保護を訴えて魔法省と対立したことにより、リストから除外された。しかし、ブラック家出身のドレア・ブラックがポッター家に嫁いだ際、ブラック家の家系図から抹消されなかったことから、ポッター家もまた純血であったと推定される。 半純血 (half-blood) 魔法族を片親に持つ魔法族を指す単語。厳密には「純血の魔法族を片親に持つ魔法族」を意味する。 半純血の魔法族には3種類あり、1つ目はハリー・ポッターやニンファドーラ・トンクスのように「純血の魔法族とマグル生まれの魔法族の間に生まれた魔法族」、2つ目はヴォルデモートやセブルス・スネイプのように「純血の魔法族と(魔力を持たない)マグルの間に生まれた魔法族」、もう一つはアルバス・セブルス・ポッターのように「両親のいずれかが半純血の魔法族」である。 マグル生まれ マグルを両親に持つ魔法族。 発祥期の魔法族と同様に、突然変異で魔法力を有した存在。そのため、同じ親から生まれた兄弟姉妹であっても、魔法力を持つ者と持たない者が誕生するケースと、ともに魔法力を有するケースがある。 純血主義者は、マグルやマグル生まれの魔法族を「穢れた血」 (mud-blood) と呼び、侮蔑している。 スクイブ 魔法使いや魔女を親に持ちながら魔法を使えない人物の総称。これは優性の法則上いくらかの確率で発生する劣性遺伝が表現化した者で、祖先のマグル遺伝子を持って誕生した結果である。しかし、遺伝上彼らの次世代に魔法使いが普通に誕生するので、普通に魔法族と結婚している(なかにはマグルと婚姻するケースもある)。スクイブの次世代に魔法族が誕生する比率は確率計算上「魔法を発現する遺伝子」がその血統内にどれだけいるかで決まる。 スクイブは杖の所持と魔法の使用を禁じられており、そのため魔法学校に入学することはできないが、魔法界ではスクイブ専用の教育・勤務機関があるため、決して冷遇されるわけではない。 魔法使いや魔女であっても、魔法の腕が芳しくない者に対して「スクイブ」という言葉が使われることがある。第2巻『秘密の部屋』ではネビル・ロングボトムが自身をスクイブと自嘲し、第6巻『謎のプリンス』ではメローピー・ゴーントは家族にスクイブ扱いされる。また第7巻『死の秘宝』ではミュリエルやリータ・スキーターが、魔法学校にも通わず人前にも姿を現さなかったアリアナ・ダンブルドアをスクイブだと思っていた。 作中では、ホグワーツの管理人であるアーガス・フィルチや、不死鳥の騎士団の協力者であるアラベラ・フィッグらが該当する。 マグル 非魔法族、いわゆる「普通の人間」のこと。原始の魔法族(魔法使い・魔女)はマグルのあいだから生まれた。その歴史がどのようなものかは不明だが、マグル内の突然変異である彼らとの関係はそれほど良好ではなく、多くの魔法族はマグルにその力を恐れられ、幾度も迫害を受けてきた。そのため魔法族はマグルの目を避け、みずからの存在を隠しながら生活するようになった。ホグワーツ魔法魔術学校の建設もそのためである。 現代では魔法省の手による隠蔽が功を奏し、マグルの大半は魔法、魔法族の存在をまったく信じていない状態である。例外的にロンドンの「マグルの首相」のように仕事先や、グレンジャー夫妻やペチュニア・ダーズリーのように血縁に魔法使いがいる者などはその存在を知るが、あくまで少数であり他人にそれを話したとしてもまず信用されない。それにもかかわらず魔法界が魔法の隠蔽に躍起になるのは、ときおり魔法の実在を確信する者もおり、彼らに魔法の存在を吹聴・証明されれば魔法の存在を信じる者が多数を占めかねないため、それによる新たな魔女狩りや純血主義者たちの暴走を避けたという理由もある。1920年代に北アメリカで活動していた過激派魔法排斥団体「新セーレム救世軍 (New Salem Philanthropic Society) 」、彼らに協力していた記者のラングドン・ショーなどはこれにあたる。 マグルとの関係は魔法界にとって大きなテーマで、「マグル避け呪文」があったり、第1巻『賢者の石』ではルビウス・ハグリッドがハリー・ポッターに「魔法省の一番大切な仕事は、魔法使いを隠しておくことだ」と説明する。 歴史的対立により、マグルを敵視する時代があった。しかし現代の魔法界では公式にはマグル出身者や半純血を差別することは禁止されており、恥ずべきこととしている。サラザール・スリザリンを除くホグワーツ魔法魔術学校の創設者や、アルバス・ダンブルドアは「マグル出身者でも魔力を示せば、魔法教育を受けられる」という考えを持ち、すべての魔法学校で学生が制度として差別されることはない。 しかし、なかには伝統ある魔法族の血を重視し、マグル出身の魔法使いや魔女(ハーマイオニー・グレンジャーなど)を「穢れた血」と見なす、いわゆる「純血主義者」がスリザリン寮出身の者をはじめ根強く残っている。ただスリザリン寮もマグル出身者や半純血を公的に拒絶することはできないので、同寮にもこの種の生徒たちがそれなりに存在している。 1920年代の北アメリカではノー・マジと呼ばれていた(『ファンタスティック・ビースト』)。 日本語において「人間」と訳されることがあるが、魔法族もまた人間であるためこの訳語は不適切である。
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