軍首脳部
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「銀河英雄伝説の登場人物・自由惑星同盟」の記事における「軍首脳部」の解説
シドニー・シトレ (Sidney Sithole) 声 - 内海賢二(旧) / 佐藤正治(黄) / 相沢まさき(D) 統合作戦本部長。元帥。元士官学校校長。 物語開始時点における同盟軍の制服軍人のトップ。2メートルほどの身長を持つ偉丈夫で初老の黒人。ヤンが士官学校に在籍していた当時の校長で、ヤンの天賦の才能を早くから知っていた数少ない一人。権力中枢に近いこともあって、ロボスと派閥争いを繰り広げたり、軍政のトップであるトリューニヒトと鍔迫り合いをしているが、基本的に現実的・良識的な人物で、軍内外に広く人望がある。士官学校の校長時代(中将)には、開明的な教育家としても当時生徒であったヤンから高く評価され、さらにヤンに事実上、蔵書庫を解放する便宜を図るなど、名校長と評される。このためヤンからはグリーンヒル大将、ビュコックと共に尊敬する上官と評されるが、逆にヤンの性格を熟知しているがゆえに老練な手腕で彼を手玉にとることにも長ける。 ヤンが第13艦隊司令となると彼を呼び出し、彼の才を高く評価するがゆえにイゼルローン要塞の攻略という難題を命令する。この背景にはロボスとの軍上層部の派閥争いという側面もあり、結果として要塞攻略が成功したため、自身の立場を堅めることに成功する。ところがこれが原因で巻き返しをはかるロボス派から帝国領侵攻作戦が立案されるに至り、シトレとしてはその無謀な計画に大反対であったが、成功しても失敗しても退役する状況に追い込まれる(成功した場合はロボスを本部長に就けて功績に報いるため、失敗した場合は軍人のトップとして責任を取らされるため)。結局、戦役の失敗を受けて責任を取らされる形で退役する(元凶のロボスとは違い、巻き込まれる形となったために同情の声もあったという)。そして故郷の惑星カッシナに帰り果樹園を営み始める。 その後は同盟に民主共和制の危機が訪れると、端役としてしばしば登場する。救国軍事会議のクーデターでは隠棲先から駆けつけて、ヤンとヤン艦隊が同盟政府と民主主義を守るものだと支持を表明し、クーデター勢力に少なくないダメージを与える。物語後半に同盟が完全に帝国に併呑された後に行われたグエン・キム・ホア広場での集会及び騒乱にも参加しており、かつての同盟要人として新領土総督となったロイエンタールと引見する。ロイエンタールの問いに対して、発生した騒乱について何ら弁明せず、むしろ釈放すれば今度こそ行動を起こすと宣言したがためにラグプール刑務所に移送される。後に同刑務所の暴動に巻き込まれるも、一命は取り留める。以降は作中に登場しない。 外伝では『黄金の翼』に、第5次イゼルローン攻略戦の総司令官(大将)として登場する(この戦い自体は外伝3巻『千億の星、千億の光』でも触れられる)。乗艦はヘクトル。当時のグリーンヒル中将、ビュコック中将らを指揮し、並行追撃策を用いて、要塞主砲トゥールハンマーの使用を封じ込め、要塞壁に肉薄する活躍をする。結果としては帝国側が味方の犠牲を厭わずにトゥールハンマーを使用したため失敗に終わるが、それまで寄り付くことも不可能であった要塞壁に大きな損害を与えたことは高く評価され、後に元帥に昇進する。 OVA版ではレベロと旧知の仲という設定が加えられ、2人の会話シーンがある。 ラザール・ロボス (Lassalle Lobos) 声 - 大木民夫(旧) / 花輪英司(D) 宇宙艦隊司令長官。元帥。帝国領侵攻作戦の遠征軍総司令官。グリーンヒルの上官。座乗艦はアイアース(OVA版)。 物語開始時点における制服軍人のナンバー2。母が帝国からの亡命者という出身で、小太りの男。軍部のトップであるシトレとは四半世紀にわたるライバルとされ、現在の職責に見合う優れた戦術指揮能力で前線指揮官として輝かしい功績を挙げてきた軍人。第6次イゼルローン攻防戦ではおおざっぱな点はあるが、戦術展開能力にすぐれ、指揮官として熟練していると評され、さらに、これを堅実で理知的な幕僚のグリーンヒルが補佐するというコンビであった。ところが急速に衰えを見せたとされ、本編時間軸ではおよそ最高指揮権者らしくない無能ぶりを晒す。 帝国領侵攻作戦において遠征軍総司令官に任命され、作戦総司令部となるイゼルローン要塞に在陣する。参謀長のグリーンヒルよりもフォークを信任し、艦隊司令官らからの通信を取次としてフォークが間に介入するなど、彼の専横を許し、実質的にフォークの傀儡と化す。戦役終盤の前線の危機にも、昼寝の邪魔をするなと訓令するなど、同盟軍全体の足を引っ張る。最終盤では総参謀長グリーンヒルの撤退進言を無視してアムリッツァに部隊集結を命じ(これは同盟政府の要望でもあった。藤崎版やノイエ版では、政府の要望であることを仄めかす台詞を入れることで、それを強調している。)、ヤンの活躍で一矢報いることには成功するもさらなる犠牲を増やす。戦後は敗戦の責任を取らされる形で退役し、以降物語には登場しない。 本編以前を扱った外伝では登場頻度が多い。まず時系列上の初登場は『千億の星、千億の光』でのヴァンフリート星域の会戦で、続く第6次イゼルローン攻防戦に総司令官として登場する。上記のようにこの段階では指揮能力を高く評価されるも、ヤンが立案したラインハルト艦隊への対処案に対して、兵力を出し惜しんだ結果として彼を取り逃がし、後の禍根を残す失態を犯している。時系列上の次のエピソードである『星を砕く者』から、後の衰えの片鱗を見せるようになり、第3次ティアマト会戦で自派閥のホーランド中将を失って精神衛生にいささかの害を及ぼしたとされ、その戦後には余計な訓令でグランド・カナル事件と呼ばれる戦闘事故を引き起こさせてしまう。ただし、総司令として指揮を執った第4次ティアマト会戦は結果として敗北するが、その混戦の中でグリーンヒルの進言を受けて難しい絶妙の用兵を行い、戦術的手腕を示すなど、戦術的能力の高さを示している。 ドワイト・グリーンヒル 作品開始時の統合作戦本部次長で、宇宙艦隊総参謀長。フレデリカ・グリーンヒルの父。 →#救国軍事会議 クブルスリー (Kubersly) 声 - 田中信夫(旧) / 髙階俊嗣(D) 第1艦隊司令官、中将。後に統合作戦本部長(シトレの後任)、大将。 温厚な人柄で筋の通った性格の軍人。士官学校を優秀な成績で卒業し、堅実な成果を挙げ、いずれ軍部のトップに就くと目されていた。物語開始時点では首都警備や治安維持を任務とする第1艦隊司令官の職にあったため、アスターテ会戦や帝国領侵攻作戦には参加しておらず、いずれの敗戦の責を負っていなかった。帝国領侵攻作戦後、軍首脳部の総退陣に伴い制服軍人のトップである統合作戦本部長に就任する。ヤンを高く評価しており、本部長への着任に伴って彼を統合作戦本部の幕僚総監に就任することを望んでいた。就任後間もなく、職務復帰の直訴をしてきたフォークを正論で拒絶するが、逆上した彼に撃たれて負傷し療養を余儀なくされる。後にこれは救国軍事会議のクーデター計画の1つであったと判明する。 クーデター終結後に現場復帰するも、軍首脳部がトリューニヒト派で固められるなか病気を理由に引退する。 アレクサンドル・ビュコック 第5艦隊司令官。中将。後に宇宙艦隊司令長官(ロボスの後任)、大将のち元帥。 詳細は「アレクサンドル・ビュコック」を参照 チュン・ウー・チェン (Trung Yu Chang) 声 - 大塚明夫(旧) 元士官学校教授。ビュコック体制下での宇宙艦隊総参謀長。中将のち大将。 「パン屋の2代目」と渾名されるほど軍人としては風采の上がらない外見の男性。しかし、戦略家・戦術家としては卓越した能力を持つ。大親征当時は38歳で妻子がいる。帝国軍のフェザーン侵攻と前後して、士官学校の教授から宇宙艦隊副参謀長に抜擢される。直後に総参謀長のオスマンが病気で更迭されたため、後任として総参謀長に昇格する。のちにビュコックの元帥昇進にあわせて大将に昇進。以降、宇宙艦隊司令長官ビュコックの腹心としてマル・アデッタ星域会戦で共に戦死するまで彼に付き従い、有用な献策によってヤンに対しても多大な貢献をする。 初登場は上記の通り「神々の黄昏」作戦で抜擢されてからであり、ヤンをイゼルローンに拘泥させず、自由に動かさせるなど、有用な献策を行い、ビュコックら同盟軍首脳部の方針を決めていく。ランテマリオ星域会戦では敗北後に自決しようとしたビュコックに、ほぼ正しく今後の展望を予期してみせ、軍部で責任を取る者が必要と説得して思い留ませる(実際にはラインハルトの計らいでドーソンの拘禁のみで済む)。戦後は自身は軍に留まり、総参謀長のまま宇宙艦隊司令長官代理を兼務する。大親征に対しても、現場復帰したビュコックに従い、自分たちが指揮してもラインハルトには負けるという予測からムライらに貴重な残存戦力の一部を託し、ヤンの元へ送る。その後、マル・アデッタ星域会戦にて数にも勝るラインハルトら帝国軍本隊を迎え撃ち、民主共和制に殉じてビュコックと共に戦死する。 作者の設定では漢字表記は「淳于建」であるが、中国語版では「邱吾權」、「邱吾权」の字が当てられている。 ドーソン (Dawson) 声 - 島田彰(旧) / 黒田崇矢(D) 統合作戦本部次長で大将。後に統合作戦本部長(クブルスリーの後任)。のち元帥。元士官学校教官。 性格は小心で陰気、神経質な小役人タイプの軍官僚。初登場時の年齢について、ヤンがユリアンに対して「40半ばだろう」と語っているが、ビュコックより14歳年下との記述があることから、実際は50代後半である。士官学校教官、憲兵隊司令官、国防委員会情報部長、第1艦隊後方主任参謀を務めた経歴を持ち、アムリッツア会戦後は現職にある。おおよそその要職に見合うだけの能力や人望はなく、自分より士官学校時代の一番だけ席次が良かった同期生が何かしらのミスで降格処分となってドーソンの部下となった時、ねちねちいびり抜いたり、後方主任参謀時代には各艦の調理室のダストシュートを調べてまわり、じゃがいもの廃棄する部分が多いと小言を言って周囲をうんざりさせたといったエピソードにあふれる。士官学校時代の生徒であったアッテンボローからもその嫌味ぶりな逸話の数々を披露される。他にも「建国後、30年か50年くらいの外敵がいない時期だったらドーソンでも無難に務まっただろう(要約)」と酷評され、救国軍事会議からは「大将に昇進したのさえおかしい程度の男」と評され、本部長代行になった時には宇宙艦隊司令長官であるビュコックから、(統治原則に反するが)自分が統合作戦本部長を兼任した方がマシだったと皮肉られる。また、救国軍事会議のクーデターの序盤では、ヤンに対する個人的な嫉妬心から彼にそれぞれ離れた場所にある4ヶ所の蜂起の鎮圧を命じ、その主客転倒した現状認識で逆にクーデター勢力の目論見を外して計画を頓挫させられるのではないかとまでヤンに期待される。そのような能力にも関わらず栄達したのは一部政治家とのコネによるとされる(トリューニヒト閥であることが示唆されている)。一方で、秘密保持の必要な種の任務には無能ではなかったと評され、銀河帝国正統政府の面々の亡命の受け入れなどでは手腕を発揮している。 作中への登場は統合作戦本部長のクブルスリーがフォークの凶弾で療養を余儀なくされ、本部長代行に就任した時から。事実上の制服軍人のトップとなるが、救国軍事会議のクーデターには何も対処できず容易く拘禁される。クーデター終結後、しばらくしてクブルスリーの引退に伴い正式に本部長となるが、間もなく「神々の黄昏」作戦が開始される。フェザーンが帝国軍に占領された後の同盟の存亡に関わる非常事態に際し、あからさまに狼狽することはなかったが、何ら有効な対策を講じることなく現実逃避の日常業務を行うばかりで、統合作戦本部の機能を実質的に停止させてしまう(ビュコックらはドーソンを叱咤激励したりなだめたりして、何とか統合作戦本部の機能を回復させた)。最終的には帝国軍によるハイネセン占領に伴い軍事の最高責任者として拘束される。以後の消息は不明。 ロックウェル (Rockwell) 声 - 江原正士(旧) 後方勤務本部長。大将。後に統合作戦本部長(バーラトの和約後)。 トリューニヒト派の軍人として知られる人物。軍人としてよりも、政治的思惑や自己保身で行動することが多く、作中では一貫してヤンの足を引っ張る。初登場はヤンに対する査問会であり、トリューニヒト派の軍人としてヤンを糾弾する(また、彼が後方勤務本部長にいることがトリューニヒトの軍への強い浸透をヤンに悟らせる)。バーラトの和約でドーソンが帝国に拘束されると、後任の統合作戦本部長に就任する(階級は大将のまま)。そしてレンネンカンプやレベロの意を受けてヤンの拘束や奪還阻止の作戦の指揮を取る。その後、大親征において、マル・アデッタ星域会戦で同盟軍が敗北し、帝国による首都占領が間近となると、帝国の故・レンネンカンプの首席補佐官フンメルに煽られたこともあって保身のためにレベロを殺害する(ただし、これはまったく無意味な行為だとレベロにも指摘される)。ラインハルトの引見の際にレベロ殺害を以て助命を乞うが無意味な主殺しを侮蔑され、思惑が外れたことから咄嗟にラインハルトの傍らにいたファーレンハイトを「自分と同じ」転向者として弁明してしまう。これが決定的となり、ラインハルトより任されたファーレンハイトに「処断」される。
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