第6次イゼルローン攻防戦
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「銀河英雄伝説の戦役」の記事における「第6次イゼルローン攻防戦」の解説
宇宙暦794年/帝国暦485年10月~12月10日。ラインハルト・フォン・ミューゼルが少将として参加、2千数百隻の分艦隊を指揮した。所属した母艦隊は不明。 同盟軍の兵力は艦艇約36,900隻、総司令官はラザール・ロボス元帥。他には総参謀長ドワイト・グリーンヒル大将、作戦参謀ヤン・ウェンリー大佐、補給担当キャゼルヌ准将、駆逐艦エルムⅢ艦長アッテンボロー少佐、シェーンコップ率いるローゼンリッター連隊、本隊所属の空戦部隊にポプランとコーネフが参戦している。また、OVA版では第7艦隊司令官ホーウッド中将、第8艦隊司令官アップルトン中将、第9艦隊司令官アル・サレム中将が登場し、さらに劇中には登場しないがアンドリュー・フォーク中佐が作戦参謀として参戦している事がキャゼルヌの口から語られている。 帝国軍はイゼルローン要塞と駐留艦隊(約20,000隻)。ミュッケンベルガー元帥が要塞で総指揮を執り、駐留艦隊はメルカッツ大将が指揮を執った。参謀として装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将、ゼークト大将、シュトックハウゼン大将(当時から要塞司令官だったかは不明)、シュターデン少将が参戦し、前線指揮官として、ミッターマイヤー准将、ロイエンタール准将、ビッテンフェルト大佐、ケンプ大佐、彼らの部下としてレッケンドルフ大尉、オイゲン大尉が参戦している。また、ケスラーが病気のグリンメルスハウゼンの代理として要塞に赴き、リューネブルク夫人が起こした事件とグリンメルスハウゼンが記した機密書類についてラインハルトと会話している。 ラインハルトに限らず、この戦いでは一個艦隊司令以上の上級指揮官よりも、ミッターマイヤー、ロイエンタールら下位の指揮官の活躍が目立った戦いであった。10月から11月にかけてはイゼルローン回廊同盟側出口付近にて宙域の争奪戦が行われた。ミューゼル分艦隊は前哨戦でワーツ分艦隊、キャボット高速機動集団を撃破するなど数々の戦果を挙げ、約36,900隻を擁する同盟軍を悩ませた。学生時代ヤンに敗れた秀才ワイドボーンもこの時ラインハルトの奇襲をうけて戦死している。同盟軍のグリーンヒル大将は作戦参謀ヤン・ウェンリー大佐に対策を命じ、ラインハルトの手の内を読んだヤン発案による時間差の包囲作戦を実施した。ラインハルトは危機に直面したが、同盟軍が戦力の出し惜しみをしたため助かった。その後、帝国軍は同盟軍を要塞におびき寄せるべく後退し、前哨戦は同盟軍の勝利に終わった。 12月1日に開始された要塞攻防戦で、同盟軍は過去5度の攻略失敗を踏まえてホーランド少将が立案した作戦を実施した。これは要塞主砲トゥールハンマーの射程の境界をD線(デッド・ライン)と称し、同盟軍本隊がそのD線を出入りして帝国軍を挑発する「D線上のワルツ作戦」を展開して囮となり、帝国軍を退きつける間に、ホーランドが小型ミサイル艦隊を潜入させて要塞本体への奇襲攻撃を実行するというものであった。だが、ホーランドの策を看破していたラインハルトはミサイル艦隊を捕捉撃破し、さらに同盟軍本体を側面から強襲して損害を与えた。同盟軍本隊とラインハルト率いるミューゼル分艦隊の戦力差は15対1と圧倒的に同盟が優勢であったが、同盟軍はトゥールハンマーの射界と回廊の航行不能宙域の間に狭い紡錘陣形でしか展開できず、ラインハルトは15倍の敵の先端部のみと互角に渡り合った。しかし、同盟軍の伸びきった陣形を見たミュッケンベルガーはトゥールハンマーの使用を諦めて他の帝国艦隊に側面を突かせた。対する同盟軍もヤンとグリーンヒルの発案で予備兵力を投入、結局戦闘は第5次イゼルローン攻防戦と同様の混戦となってしまった。 藤崎版では帝国軍と同盟軍が混戦状態に至ったのは、「D線上のワルツ作戦」とその陰に隠れていたホーランド率いる小型ミサイル艦隊を看破したラインハルトがミサイル艦隊を側面から強襲して損害を与え、そこからさらに同盟軍本体を攻撃するところまでは原作と同様であるが、ラインハルトばかりが活躍するのを妬んだ貴族出身の艦隊司令官たちが、同盟軍を攻撃しようとしてトゥールハンマーの射程内を横切ったところを、グリーンヒルが好機と判断して攻勢を仕掛け、そのままD線内で両軍が混戦状態に陥るという流れになっている。ラインハルトにとっては、帝国側が優位に立っていた戦況が貴族出身の艦隊司令官の愚行によって覆されるのは予想の内であり、「これだから何の功績も無く貴族の特権で出世してきた奴らは!」と愚痴をこぼしている。 混戦の打開を図ったラインハルトは積極的な献策によってミュッケンベルガーの了解と密かな敵意を得て、同盟軍と帝国軍を引き離してトゥールハンマーを使用できるようにすべく、自らの艦隊を囮として同盟軍を要塞から引き離すことに成功し、それを見たメルカッツも艦隊を後退させ、同盟軍を要塞主砲の射程内におびき寄せることに成功した。策に乗せられトゥールハンマーを撃たれた同盟軍は大損害を受け、敗走した。ラインハルトはこの功績によって中将に昇進する。ヤンはラインハルトの意図を見抜き、自分でも精力的と思える程様々な作戦を立案したが、悉くロボスに却下され、同盟軍の敗退を傍観することしかできなかった。しかし、いくつかの作戦立案の功績が評価され准将に昇進している。圧倒的戦力差があった第5次と比較して、今回は帝国・同盟の艦隊はほぼ同数であり、その割に同盟は健闘したと言えるが、それは戦略面で何ら意味の無い事であった。 この乱戦の最中、シェーンコップ率いるローゼンリッターは、リューネブルクとの決着をつけるべく強襲揚陸艦で帝国艦を次々と襲撃、リューネブルクへの「伝言」を書き残して挑発するという策でリューネブルクを追い込んだ。元々帝国軍内部で肩身が狭かった亡命者リューネブルクはこの件で居場所がなくなり、司令官であるミュッケンベルガーに呼びつけられて責任を取らされる形で自ら揚陸艦で出撃し、シェーンコップとの一騎討ちに及んで敗死した。 なお、本会戦と既述のヴァンフリート星域会戦をあわせた長編「千億の星、千億の光」は、原作発表順では帝国側の最終エピソードである(1988年)。
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