流星の音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 02:42 UTC 版)
地球から見て毎秒数十 km という高速で太陽系を飛びかう小さな粒子が上層の地球大気に飛び込むと、大気分子と激しく衝突し、粒子・大気分子の電子の軌道を外側へずらしたり(励起)、さらには電子を引きはがしたり(電離)してプラズマの柱を作る。 励起された電子が元に戻るときに光としてエネルギーを放出して輝いた結果、われわれはそれを流星だと認識する。 こうした上層大気の現象である流星は観察者から数十 km 以上離れているのが普通である。 流星は流れるとともに衝撃波を作り出すが、巨大な火球の衝撃波によるソニック・ブームが音速で地上まで届くのはそれが光ってから何分も後のこととなる。 大砲か雷鳴のように響くこうしたソニック・ブームは巨大な火球で実際しばしば観察されている。 一方、流星と同時に響く音が実在のものなら音波とは別の物理的機構によらねばならない。 しかしそうした機構が不明であったばかりでなく、音自体が体験例が少なく、体験内容も様々で一部の人だけに聞こえるなど一貫性を欠いていたため、学術的には花火などとの類推による心理的な錯誤や他の音との混同による思い違いとして説明されるか、単に無視されることが多かった。 しかし、この現象への関心を失わなかった研究者によって集められた記録や証言は数百にのぼった。 その表現は多種多彩で、例えば次のようなものであった。 「歯ぎしり」のような音(1706年12月1日、トボリスク) 驚いた鳥が飛び立つ羽音に似たざわめき(1908年6月30日、カンスク、ツングースカ大爆発のとき) (背後で)花火を打ち上げるときの音に似た「トシュシュシュイョフ!」という音(1925年8月20日、流星研究者のアスタポーヴィッチ) (家の中に居る時)飛行機が急旋回するような音(1933年8月8日、ネブラスカ隕石のとき) 電線がショートしたか、または、マグネシウムのフラッシュを焼いたかのような激しい爆発音(1937年夏、アシガバート) 濡れた路面を走る車のタイヤがたてる音だと思い込ませたようなシューというノイズ(1969年9月28日、ビクトリア州郊外、マーチソン隕石のとき) 高速で走る急行列車かバスのようなノイズがした後、電気的なはじけるような音(1978年4月7日、シドニー) パンクかクラッカーのような破裂音(しかし、このとき隣にいた人は何も聞いていない)(1978年4月7日、ニューカッスル) 荷物を満載したトレーラーをひいて農場にやってくるトラクターのような音(1989年、ニューサウスウェールズ州郊外) 電気かみそりの 1/3 ぐらいの大きさの音で、たき木が燃えるようなパチパチとシューという音(1990年、モスクワの北東 300 km) この現象に関心を寄せてきた天文学者のひとりであるヴィターリー・ブロンシュテン (Виталий А. Бронштэн, Vitalii A. Bronshten) によれば、実際、こうした報告の中には「火球の目撃に先行するばかりではなく、目撃者が天空を飛行する物体に注意を向ける元にさえなっている」もの存在してもおり、心理的錯誤や思い違いなど主観に原因を帰した解釈では説明できないことが明らかだとする。
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流星の音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/28 03:06 UTC 版)
流星が流れた時に音が聞こえるという現象がある。 流星の音の原因に関しては二つの種類が知られている。 一つは衝撃波が生み出すソニックブームによるもので、隕石となるような巨大な火球でよく聞かれる。 ただし、流星が輝いている高度は100 km前後であり、雷が光って時間が経ってから音が聞こえるように、流星が光ってから音が届くには普通数分の時間がかかる。 雷か大砲のような音がし、ガラスが割れるなどの被害が出ることもある。 もう二つは発光と同時に音が聞こえるもので、1980年代までは、その音は心理的なものであるとされてきた。 しかし、明るい流星が流れた際に、音が聞こえた、ということを本に書いている人が多数いる。 また、古く中国では音を伴う流星を天狗と呼んでいた。 オーストラリアのニューカッスル大学のコリン・ケイ (Colin Keay) は1980年に流星の音に関する論文を発表した。彼の考えではある程度の高度以下まで突入した大火球によって、プラズマの乱流ができる。この乱流プラズマは、地球磁気圏の磁力線に絡みつき、引きずる。直ちにプラズマが冷えるとともに、乱された状態の磁力線も元に戻る。この時に極めて低い周波数の電磁波が発生し、光の速さで地上に達し、観測者の近くの物体がその電磁波に揺さぶられれば、同じ周波数の音が出る。 電磁波が誘発する観測者周囲の物体からの音というもの果たして聞こえるのかどうかについても、ケイは実験を行った。その結果、髪の毛や眼鏡のふちなど、身の周りのありふれたものが低い周波数の電磁波に反応すること、その音が聞こえる人と聞こえない人がいることなどが分かった。 大火球から、大変低い周波数の電磁波が出ることも観測で明らかになり、ケイの考えが支持されるようになってきたが、どのようにして電磁波が発生するかのメカニズムに関してはまだ正確なことは分かっていない。 1998年11月のしし座流星群を、モンゴルで観測した研究者は、火球と同時に聞こえる音の録音に成功した(より詳しい解説は「電磁波音」を参照)。
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