料理文化の伝道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/12 07:10 UTC 版)
「チャールズ・エルミー・フランカテリ」の記事における「料理文化の伝道」の解説
フランカテリは口の肥えた王侯貴族を料理で楽しませるに足るだけの華やかな経験や洗練された技術を持っていたが、簡素な料理をこよなく愛しその普及に尽くした。彼の最初の著書『現代の料理人』 (The Modern Cook) は、評判の高い彼の贅沢な料理のレシピの一部を一般の手の届くように工夫、簡素化したものを盛り込んだ本である。ただし、全般的な内容は本質的には彼がフランスで学んだオートキュイジーヌの様式に基礎を置く高級フランス料理であり、例えば冒頭は104種類のソースのレシピの体系的な紹介から説き起こされている。本書は1845年にイギリス、翌1846年にアメリカ合衆国で出版されると大西洋の両岸で大いに世間の好評を博し、29版を重ねる定番書となった。 フランカテリはイギリスの有名な貴族や郷紳たちに豪華で手の込んだ料理を日々提供する一方で、料理においては倹約家としても知られていた。彼が述べた「毎日ロンドンで捨てられる食べ物だけで千軒の家族が食べていける」という言葉は、彼の倹約家振りを象徴する言葉としてよく引き合いに出される。このような倹約主義的な考え方に沿って、フランカテリは労働者階級にとって実用的価値がある情報を収載した『労働者階級のための気取らない料理の本』 (A Plain Cookery Book for the Working Classes) を1852年に出版した。彼はその中で牛足のスープ、バブルアンドスクイーク(牛肉とキャベツなどの残り物野菜の炒め物、bubble and squeak)、羊もつ、鳥のプディングなどの経済的で気が利いた料理をいくつも紹介した。 その後、1861年にフランカテリが出版したのが、イギリス内外の料理に関する実践的な手引書である『料理人の手引と家政婦・執事の案内』 (The Cook's Guide and Housekeeper's & Butler's Assistant) である。本書は多数のレシピのほか、ワインの出し方、病人食の調理法、食通向けのサラダ、健康飲料、酒を含むアメリカの飲み物などについても紹介しており、英米の多くの家庭で座右の書として重宝されることとなった。 フランカテリの4冊目にして最後の料理書は、菓子製造の技法について書いた『大英帝国と海外の菓子の本』 (Royal English and Foreign Confectionery Book) である。彼は1862年に出版した本書で、凝った芸術的な菓子の作り方、果物・果肉・果汁の保存法、ジャム・ゼリー・シロップの作り方、酒・飲み物の作り方、デザートケーキ、パン、キャンディー、ボンボン、コンフィット(ドライフルーツ・ナッツ入りの糖菓)、エッセンス、コーディアル(ノンアルコール果汁飲料)の作り方、そして流行のデザートの経済的な作り方などを紹介している。 このように、フランカテリはフランスで身につけた料理に関する高度な技能を、卓越した料理人として王侯貴族など富裕な上流階級に豪華な料理を供するためだけに活用するにとどめず、一般市民に利用しやすいよう創意工夫した著作を出版して広く知識を共有し、洗練された料理文化の英米の中産階級および労働者階級への普及に大きな影響を与えた人物としても歴史にその名を残した。
※この「料理文化の伝道」の解説は、「チャールズ・エルミー・フランカテリ」の解説の一部です。
「料理文化の伝道」を含む「チャールズ・エルミー・フランカテリ」の記事については、「チャールズ・エルミー・フランカテリ」の概要を参照ください。
- 料理文化の伝道のページへのリンク