吸い出し式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/16 06:50 UTC 版)
車両の走行中に車体の空気抵抗等によって生じる気流を通風器内に導き、そこでのベンチュリ効果により通風器出口付近の気圧が下がることを利用して、車内の空気を吸い出す方式のものである。 水雷形(トルペード形) 2組の円錐形に成形した板材を、円形の面が向かい合わせになるように置き、その向かい合わせになっている部分を覆い隠すように円筒を被せ、両端が尖ったそろばん玉状の部品を構成したもの。 これら2つの円錐と円筒の間には隙間を設けた状態で組み立ててあり、客室からの換気用円筒をその円筒と2つの円錐形部品で構成される空間内に貫通させる。これにより一方の円錐の側の隙間から円筒に進入した気流は、もう一方の円錐の側から出る際に断面積の変化によるベンチュリ効果で気圧低下を起こして車内の空気を吸い出す。日本国有鉄道(国鉄)では突端を進行方向(レール方向)に向けていたがやがて直角(枕木方向)に変更している 単純であるが原理に忠実な構造であるため、効果が比較的大きかったことなどから鉄道の黎明期より使用され、日本では鉄道国有化前の各私鉄などで客車に採用されたほか、国有化後最初の制式客車である鉄道院基本形客車にも採用された。 もっとも雨水の浸入防止の観点では充分とは言い難い面があり、以後はより確実に雨水の浸入を防止できる方式に置き換えられた。なお、日本では形状が初期の水雷に似ていたことに由来するTorpedo Ventilatorを直訳して水雷形通風器あるいはトルペード形通風器と呼ばれたが、元々は考案者であるウィリアム・サミュエル・レイコック(William Samuel Laycock:1842-1916)の名を取ってレイコック式通風器(Laycock's Ventilator)と呼ばれたものである。 ガーランド形 主に鉄道車両に用いられるもので、平面形では十文字に近い形をしている。車両の走行によってベンチレーターに当たった空気を内部の通路によって両側に排出し、その負圧によって車内の空気を外部に排出する。一部、半分に切った形(T字形)のものも見られる。旧国鉄などの旧型客車で主流のほか、その後の新形車両でも、食堂車の調理室やデッキ部などに補助的に使われている。通称は「ガラベン」で、半分のものは「半ガラ」と呼ばれる。 グローブ形 アメリカの鉄道部品メーカーであるグローブ社(Globe Ventilator Co.)が考案し、インターアーバンの車両などに使用されたものが本来のグローブ形ベンチレータである(グローブとは球形の意)。日本では、鉄道院基本形客車のうち丸屋根の寝台車に小型の物を採用したのが初めで、戦時形の通勤型電車であるモハ63形に大型化したものを採用して以来、国鉄の通勤形電車(国電)を中心に使用された。車両が走行することによって、車内の空気を外へ吸い出す構造になっているが、停車中でもある程度の換気が可能な点が通勤電車向きとされた。換気量が大きい反面、降雪時に雪が室内に入り込む欠点があったため、積雪地の車両や近郊型電車では下記の押し込み型に変わっていった。通称「グロベン」。バスでもほぼ同等のものがあり、その形状から「丸型通風器」と称されることが多い。 お碗形 かつて旧形電車等で見ることができた。お椀を伏せた形状。 角形 西武鉄道の車両に搭載される角形ベンチレーターは、形状こそ押し込み形そのものであるが、中身は吸い出し型(ハーフガーランド形)になっている特殊タイプである。 エアアウトレット 自動車のエンジンルームの廃熱や、室内気の排出口の呼称。設置場所は、エンジンルーム用がエンジンフード(正圧となるフロントウインドシールド中央下端を避け、中程上面や左右方向に開口される)やスカットル(片側のみの場合もある)、室内用がリアピラー、リアクォーターパネル、リアウインドウの周囲、リアバンパー取付部などで、いずれも負圧の発生しやすい箇所である。
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