個体数と人間との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 07:48 UTC 版)
「ニホンツキノワグマ」の記事における「個体数と人間との関係」の解説
日本国内における個体数は、10,000頭前後と推定されていた。しかし堅果類の凶作年の2004年に約2,300頭、2006年に約4,600頭のクマが捕殺 された後も、頻繁に目撃されていることから実態数は不明である。2010年の大量出没年の際に朝日新聞が、各都道府県の担当者に聞き取り調査を行った数では16,000頭-26,000頭 と幅が大きい上、数十頭の個体数と考えられていた岡山県などで推測数の半分近くが捕獲される例が相次ぎ、誤差の大きさをうかがわせている。 近年でのクマの異常出没の原因、要因として、短期的(直接・至近)要因では、堅果類の大凶作、ナラ枯れ等によるナラ枯損面積の拡大が挙げられる。また、長期的背景として、生息数の回復・増加、奥山林の変化、拡大造林地の成熟と生息地シフト、里山地域の放棄と生息変化、誘引要因の増加(カキなど放置果樹、果樹の大量放棄、残飯、ゴミ)、ハンターの減少、新世代グマの登場などが挙げられる。行政からは廃棄果樹、ゴミなどの撤去を強く指導しているほか、カキなどの誘引果樹の早期除去、追い払い体制の整備(煙火弾、轟音弾)、警戒と捕獲体制の整備(罠、駆除隊)が今後の行政の課題となっている。中期的対応課題としては、ハザードマップの作成と警戒地区の指定、ベアドッグの訓練と解禁(地区、期間限定の放し飼い)、里山の整備、回廊状構造の整備が挙げられる。また、進入防止用の電気柵の設置や樹皮剥ぎ防止用資材の設置といった非致死的防除手法が導入されるケースもある。また、神奈川県では捕獲したツキノワグマを爆竹や花火、唐辛子スプレーを用いて人の怖さを植え付けたうえで山に放す「学習放獣」を実施しており、2019年度までに28頭がこの方法で放獣されたが、再捕獲されたのはそのうちの3頭に留まっている。 日本では古来より狩猟対象となっている。一方で狩猟が禁止されている地方自治体もある。 日本でも、家畜や農作物・人間への被害が発生している。一例として2004年には全国で109人(うち死亡者2名)、2006年には145人(うち死亡者3名)、2010年には147人(うち死亡者2名)の被害者が報告されている。鹿角市において2016年に5月下旬から6月の短期間にかけて7人が被害に遭い、うち4人が死亡し遺体を食害された例もある。森林内はもとより、森林と人間の居住エリアとの境界付近であることが多い。また、クマは背中を見せて逃げるものを追う習性があるため、出遭ってしまったときは、静かに後ずさりすべきである。養蜂場や養魚場も熊による被害が大きい。日本では主に6 - 7月にカラマツ・スギ・ヒノキなどの樹皮を剥いで形成層を食べるため、林業における害獣とみなされ、クマハギ(熊剥ぎ)とも呼ばれる。ている。全周剥皮では枯死、部分剥皮では剥皮が大規模なら衰弱し、腐食などにより材木の価値が下がるなどの被害が生じる。樹皮剥ぎの理由はよく分かっておらず、食物が乏しいため樹皮を食用とする説、繁殖行動のためのメスの誘引などの説がある。樹皮剥ぎの被害は西日本の太平洋側が中心と言われてきたが、近年では西日本の日本海側や東北地方でも深刻なことが確認されている。1998 - 2000年に岐阜県で行われた糞の内容物・血中尿素濃度・血中ヘモグロビン濃度の調査ではウワミズザクラの果実の比率が下がる年は針葉樹の樹皮の比率が上昇したこと・樹皮の比率が上昇した年は血中尿素濃度が高く血中ヘモグロビン濃度が低いことから、凶作により栄養状態の悪い年には樹皮剥ぎを行われることを示唆する報告例もある 日本では2021年の時点でくま科(クマ科)単位で特定動物に指定されており、2019年6月には愛玩目的での飼育が禁止された(2020年6月に施行)。
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