高松琴平電気鉄道
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車両
総説
2020年10月現在、営業用旅客車80両(琴平線20編成40両、長尾線10編成20両、志度線20両)、動態保存車2両、業務用車両2両の計84両を保有する。これは鉄道線に限ると地方都市の民営鉄道としては最も多いが、軌道線(路面電車)車両を含むと広島電鉄、伊予鉄道などがこれを上回る。
琴電を構成した各社は車両を自社発注していたが、琴電成立後は一部を除き他社からの譲渡車両が投入されている[注釈 8]。出自も日本国有鉄道(国鉄)、東武鉄道、京浜急行電鉄(京急)、京王帝都電鉄(現・京王電鉄)、名古屋鉄道、名古屋市営地下鉄、近畿日本鉄道(近鉄)、阪神電気鉄道、山陽電気鉄道、山形交通、東濃鉄道、三岐鉄道、玉野市営電気鉄道と多彩をきわめ[注釈 9]、形式も細分されていたことから、鉄道ファンの間では広島電鉄ともども「動く電車の博物館」と呼ばれていた。
これは戦後復興期以降、1970年代中盤まで、一貫して輸送力の増強を行う必要があり、いわば「質より量」が求められていたためである[注釈 10]。それでも琴平線では、暫時車両の代替と、ある程度の車種統一が行われ、1970年代 - 1980年代前半は元名古屋鉄道および阪神電気鉄道、三岐鉄道の車両が投入された。1985年以降は元京浜急行電鉄および京王帝都電鉄の車両が投入され、2005年に冷房化100%を達成した。
一方、長尾線・志度線は路線規格の問題で、18m級以上の琴平線レベルの車両の入線が不可能だった。このため、大手私鉄から小型車両が淘汰された1980年頃を境に代替が止まった。ゆえに、平成時代になっても戦前 - 昭和20年代に製造された車両で運行されていた。1998年以降には名古屋市営地下鉄の車両を京王重機整備経由で導入し、車両の近代化・冷房化と車種統一を急速に進めたものの、旧型車すべてを置き換えるほどの車両の確保はできなかった。
そのため、2000年代中盤の民事再生法適用下での経営方針策定で、長尾線に関しては琴平線レベルに路線改良を行い、中型車の導入を行なうことになった。2006年に改良工事が竣工し、同年から翌年にかけて2両編成5本の中型車を投入して旧型車を淘汰した。また、冷房付き小型車にも余剰が発生したが、これらは志度線に転用され、同線の旧型車を淘汰した。これにより営業用旅客車両の冷房化率100%を2007年7月に達成した。また、非冷房車である旧型車のうち5両をイベント等のための動態保存車とした。
また、同じ頃に合理化案として列車のワンマン運転化を検討していたが、採算性が疑問視されたことから、駅の無人化と引き換えに廃案となった。その後、2022年4月16日から志度線において平日朝ラッシュ時1往復を除く全列車でワンマン運転を行っている。
2020年には、自社保有車両のうち、京浜急行電鉄からの譲渡車の比率が50%を超える状況となった[78]。
2023年7月の移動等円滑化取組計画書によると、バリアフリー化を推進するため、2024年度より車両の設計を始め、2025年度より車両の更新を行う計画がある[79]。
機器面での特徴
- 制御装置・ブレーキの特徴
- 制御装置は抵抗制御、ブレーキは電磁直通ブレーキに統一されていて、四国の電車保有会社で唯一VVVFインバータ制御や電気指令式ブレーキを一切導入していない。
- ラッシュ時と日中で輸送量の差が大きく、車両の増解結を頻繁に行うため、原則として異なる車両同士でも連結運転できるように主幹制御器を統一しノッチ段数を統一することで手動加速制御車と自動加速制御車の総括制御を実現した(なお、一般営業用の手動加速車は琴平線では2005年に廃止。長尾線・志度線では2007年に廃止され、自動加速に統一されている)。ただし、1300形はこの改造がされなかったことから、1300形同士としか連結できない。
- 手動加速車の直列制御ノッチは5段、並列制御ノッチは4段で、自動加速車もこれに合わせている。自動加速車は主幹制御器の位置に関わらず直並列制御の最終段まで自動進段する[80]。
- 自動加速車が手動加速車を併結した場合、手動加速制御車に操作を合わせる。操作は手動加速になるが自動加速車両は自動的にそれぞれの最終段まで進段する。そのため最初は起動加速力の良い手動加速車が威力を発揮し、手動加速車が並列最終段まで達した後は高速性能の良い自動加速車が手動加速車を牽引するといった運転も行われていた。
- ブレーキは SME(非常弁付直通ブレーキ)に電磁給排弁を付加して応答性の向上と長編成化への対応を実現した電磁SME、ブレーキシューは鋳鉄製に統一されている。もと発電制動併用電磁直通ブレーキ (HSC-D) 装備車はセルフラップ機能のカット(ブレーキ弁の電気接点付き三方弁への交換)を行い、電磁SME-Dとしている。電磁SMEで電制を併用した場合、低速域に入り電制が失効すると制動力が半減するが、制輪子に低速域での減速性能が良い鋳鉄シューを用いることでブレーキ力を確保している。また、空気圧縮機も自動加速車はC-1000形、手動加速車はDH-25形でそれぞれ統一されている。
- なお、これらの改造が行なわれていない1300形は他車との併結ができないため、他編成との連結の必要がない長尾線で使用されている。
- 台車・主電動機の交換
- 1982年の1053形(初のカルダン駆動車)より前に導入された車両は、台車・主電動機の交換を頻繁に行っていた。従って各車両の記事にある車両の履歴は車体を基準としたものである。
- その他
- 客用扉の車掌スイッチは他の鉄道と操作が逆で、「開」は車掌スイッチを上から下、「閉」が下から上である。このタイプの車掌スイッチを使用している鉄道会社としては、他には近畿日本鉄道が挙げられる。
- 増結・解放を非常に多く行うため、正面非貫通の車両は多くが貫通式に改造されていたが、非貫通のままの車両も存在した。
- 再開発が行われる前までは瓦町駅のホームが急曲線上にあったため、18m級の3扉車では中央の扉とホームの隙間に乗客が転落する危険性があるとの理由から、1050形以降入線した一部の車両[注釈 11]は譲渡時に中央の扉を埋めて2扉に改造していた。1080形以降は扉改造をせず譲渡前のままで入線している。
車両番号
合併の際に長尾線車両を20 - 30番台に改番したほかは、もとの事業者での車両番号をそのまま使用した。これが元で、長尾線・志度線車両が00 - 99、琴平線車両が100以降という法則ができあがった(40番台と400番台は忌み数として欠番になっている)。ただし、琴平線と長尾線・志度線の間を転属した車両についてはこの限りではない。
琴平線では琴平電鉄時代の方式を踏襲し、形式より車両番号が1桁小さく、かつ2桁目が進む独特の車両番号体系が用いられた(例えば1000形の車両番号は100・110・120…となる)。1960年ごろを境に新規導入の車両形式は車両番号と同じ3桁となったが、2桁目が進む方式は相変わらずだった。一方、10000形1001-1002以降の固定編成で入線した車両及び18m級以上の車両は、1000番台の車両番号が振られている。こちらは1桁目が増えていく通常の方式である。形式も10000と12000を除いて、車両番号と同じ4桁である。
長尾線・志度線は10番単位で形式を振り、その中で1桁目が続番となる。しかし、使える車両番号が00 - 39、50 - 99に限られる(40 - 49はやはり忌み数として欠番になっていた)ため、ある形式の消滅後にすぐに2代目、3代目として同一形式・車両番号が振られる事態が多発した。結局、600形の入線時にこの法則は撤廃されている。
現存形式
形式番号の小さい順に列記する。2020年10月現在。
琴平線
2両編成20編成40両
- 600形(0番台) - 元、名古屋市営地下鉄250形・1000系列中間車 2編成4両
- 1070形 - 元、京急600形(2代) 2編成4両
- 1080形 - 元、京急1000形(初代) 5編成10両
- 1100形 - 元、京王5000系(初代) 4編成8両
- 1200形(1200番台) - 元、京急700形(2代) 7編成14両
長尾線
2両編成10編成20両
- 600形(0番台) 2編成4両
- 1200形(1200番台) 1編成2両
- 1200形(1250番台) 3編成6両
- 1300形 - 元、京急1000形(初代)4編成8両
志度線
2両編成8編成16両、その他4両、計20両
事業用車両
- 1000形・3000形 - 琴平電鉄自社発注車 各1両
- デカ1形(電動貨車)
- 13000形(無蓋貨車)
導入予定車両
消滅形式
最終配置線区別、琴電及び前身事業者での入線順に列記する。
琴平線
- 5000形 - 琴平電鉄自社発注車
- 11000形 - 元、国鉄ワフ25000形
- 10000形 - 急行「こんぴら号」用。自社発注車
- 12000形 - 急行「りつりん号」用。元、国鉄モハ1200形・クハニ7200形←93形・95形←富士身延鉄道モハ100形・クハユニ300形
- 1010形 - 急行「こんぴら2号」用。自社発注車
- 8000形・820形 - 元、国鉄クハ5610形←豊川鉄道クハ100形
- 950形 - 元、国鉄オハ31形客車
- 1020形 - 元、名鉄3700系 (2代)
- 1050形・1053形・1060形 - 元、阪神5001形・5231形・5101形
- 1013形・1063形 - 元、三岐鉄道モハ120形・130形・クハ210形
長尾線・志度線
- 01形 - 東讃電気軌道自社発注車
- 変1形 - 四国水力電気自社発注車
- 20形 (初代) - 高松電気軌道自社発注車
- 30形 (初代) - 高松電気軌道自社発注車
- 50形 (初代) - 四国水力電気自社発注車
- 7000形→880形・9000形 - 元、東武←総武鉄道モハ1000形・クハ1200形
- 60形・70形 (初代) - 元、東急クハ5100形←京浜電気鉄道29号形、山陽1000形他
- 80形 (初代) - 元、山陽36形
- 20形 (2代) - 元、京急デハ110形
- 2000形 - 元、国鉄←宮城電気鉄道クハ301←サハ301形
- 6000形 - 元、国鉄1形・6形←15形・10形←23500形・33500形
- 920形 - 元、山陽100形
- 10形・90形 - 元、京急クハ120形←東急5120形←京浜電気鉄道41形
- 20形(3代) - 元、近鉄モ5620形←大阪鉄道デロ20形
- 30形 (2代)・50形 (2代) - 元、阪神881形
- 850形 - 元、国鉄クハ6010形←南武鉄道クハ250形
- 750形 - 元、玉野市←備南電気鉄道モハ100形
- 70形 (2代)・80形 (2代) -元・東濃鉄道モハ100形・クハ200形(一部は←日本国有鉄道←南武鉄道モハ100形)
- 780形→860形 - 元、山形交通三山線モハ111形←西武モハ221形(クハ1221形)←モハ251形←モハ200形
- 740形→890形 - 元、山形交通高畠線モハ4←西武クモハ151形←モハ550形
- 30形 (3代) - 元、京急デハ230形←東京急行電鉄←京浜電気鉄道・湘南電気鉄道
保存車両
廃車後はほとんどの車両が解体処分されていたが、2000年代に入り、他者の手で静態保存された事例がある。公共施設に保存された例は公式サイトでも挙げられている。また、レトロ電車として動態保存していた20形23号・5000形500号・1000形120号・3000形300号を2021年5月までに廃車する計画があり、引き取り手の募集が行われた[82]。同年10月までに23号・500号は保存先が決定したが[83]、120号・300号は同年11月のさよならイベント後も当面仏生山工場で作業用車両として使われる[84]。
- 62号:さぬきこどもの国(高松市香南町由佐)[82]
- 760号:玉野市総合保健福祉センター(通称・すこやかセンター 岡山県玉野市) 玉野市電保存会による保存[82]。
- 335号:道の駅「源平の里むれ」(高松市牟礼町原)[82]
- 23号:通称・お遍路さんのお休み処(高松市牟礼町大町)NPO法人88(エイティエイト)による保存[85]。
- 500号:南部開発(高松市勅使町)[83]
- 810号・820号:(丸亀市内)個人所有
注釈
- ^ 店舗は天満屋が譲り受け、2001年に高松天満屋として再発足した。
- ^ 頭端式ホームの4・5番ホームのみ設置。
- ^ 頭端式ホームの3番ホームのみ設置。
- ^ 頭端式ホームの3番ホームのみ設置。
- ^ ことでんの営業用旅客車と動態保存車はすべて運転台付きの車両で、2009年度当時は片運転台タイプ車両が80両、両運転台タイプ車両が4両(両運転台タイプ車両はすべて動態保存車)であった。
- ^ 1911年9月から1923年6月29日まで愛媛県の旧松山電気軌道線も1435mm軌間を採用していた。なお、香川県内の私鉄線でも琴平急行電鉄と琴平参宮電鉄は1067mm軌間を採用していた。
- ^ 香川県の鉄道全体で見ても、県境の駅間を除くと、トンネルは高徳線の1箇所(高松市内)しかない。
- ^ 琴電成立後に台枠を含めて車体を新製した車両は、10000形と1010形のみである。
- ^ しかも、国鉄出身車は買収国電であったり、山形交通から購入した車両は同社が西武鉄道から購入したものであったりなど、さらに前歴を持つ車両が多かった。
なお、京急、名古屋市営地下鉄、近鉄、阪神、山陽以外は種車の軌間が、名古屋市営地下鉄は種車の集電方式がそれぞれ異なるため、それらの場合は琴電入りの際に台車や集電装置を交換する。 - ^ そのため、かつてはクロスシート装備であった車両もすべてロングシート化された。
- ^ 1050形・1053形・1060形・1063形
出典
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