食の安全
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/28 08:30 UTC 版)
食品による危害と健康被害事故
食品に危険なものが入っていれば健康に重大な危害が出る[15]。我々は毎日食べる食事(食品)に関心を持ち、十分に注意をはらわなければならない[15]。
食品によって起こる危害を以下のように区分することが可能である[16]。
- 急性的危害:薬物や化学物質による急性食中毒などの健康被害
- 短期的危害:微生物や細菌が増えることによる食中毒などの健康被害
- 中期的危害:生活習慣病などの栄養素の偏りによる健康被害
- 長期的危害:環境ホルモンなどの影響による健康被害
食品事故・食中毒
食品は口から入り、消化器官で消化吸収されるので、毒物や微生物など危険なものが入っていると、人体にその影響は直接に出てくる[17]。急性のものであれば、一部は、口に入れた時に即時吐き出したり、嘔吐や下痢となって吐き出されることもある。細菌性の食中毒では潜伏期間があり、数時間から数日後に発症する。だが、慢性のものでは徐々に身体に影響(健康被害)が出てくることがある。また、食品事故で命を落とすこともある[18]。
米虫節夫は食品事故のタイプとしては以下のような分類を挙げた[19]。
- 公害に含まれる化学物質による食中毒事故 (日本では水俣病や第二水俣病などがこれに当たる[20])
- 食品メーカーの製造工程上で混入した化学物質による食中毒事故 (中国製冷凍食品による農薬中毒事件など。日本の食品メーカーの事故では森永ヒ素ミルク事件やカネミ油症事件がこれに該当[20])
- 細菌性食中毒菌による食中毒事故 (日本では1996年に岡山や堺で起きたO157事件や雪印乳業の集団食中毒事件が該当[20])
- 故意などの犯罪的要素の食中毒事故 (和歌山毒物カレー事件やアクリフーズ農薬混入事件などが該当)
食中毒の原因・要因は以下の3種類に分けられることがある[21]。
年次 | 事件数 | 患者数 | 死者数 |
---|---|---|---|
1995 | 699 | 26,325 | 300 |
1996 | 1,217 | 46,327 | 15 |
1997 | 1,960 | 39,989 | 8 |
1998 | 3,010 | 46,179 | 9 |
1999 | 2,697 | 35,214 | 7 |
2000 | 2,247 | 43,307 | 4 |
2001 | 1,928 | 25,862 | 4 |
2002 | 1,850 | 27,629 | 18 |
2003 | 1,585 | 29,355 | 6 |
2004 | 1,666 | 28,175 | 5 |
2005 | 1,545 | 27,019 | 7 |
2006 | 1,491 | 39,026 | 6 |
2007 | 1,289 | 33,477 | 7 |
2008 | 1,369 | 24,303 | 4 |
2009 | 1,048 | 20,249 | 0 |
2010 | 1000000 | 25,972 | 0 |
注釈
- ^ 米虫節夫の書籍の列挙されておらず、一般には、「食の安全」問題を扱う時には分類リストに含まれないことのほうが多いが、「食品による窒息」の事故というものもある。食品による窒息は四千例もの死亡事故を毎年生じている。原因となっている食品は、事故の件数に着目すると、餅が多く、次いでオニギリ・寿司などの米飯であり、菓子類では団子・キャンディーなどがある。ピーナツやイクラなどは、その大きさが原因で「気道内異物」になりやすい。パンは水分を含むことで付着性が増し水で流し込もうとしてもかえって逆効果になることもある。餅やこんにゃくゼリーは冷たくなると固くなり(温度による粘度の変化)事故の原因となる。こんにゃくゼリーによる窒息事故は年間1.7人と件数は少数である(宮沢賢一; 川田惇史 (2010年11月17日). “こんにゃくゼリー窒息死訴訟、両親の訴えを棄却”. asahi.com 2010年11月18日閲覧。)が、マスコミに大々的に取り上げられ日本では人々の関心事となり、その後、こんにゃく製品の大手メーカーも窒息事故を防ぐような形状の製品を開発することになった。
- ^ 国際化の申し子の多国籍企業と米国が主導してまとめ上げたWTO協定によって、日本の食の安全基準は緩和された(出典:『食環境科学入門』p.3)、ともされている。
- ^ これに関しては企業倫理の項も参照可。
- ^ A Treatise on Adulterations of Food and Culinary Poisons (1820)
- ^ イギリスの詩人、アルフレッド・テニスンも次のようにコメントしたという「白墨と みょうばんと しっくいが、貧乏人にパンとして売られている」(ジョン・ハンフリース 2002, p. 54)
- ^ 翻訳によっては「トーマス・ウェイクリー」とも。
- ^ 「Hassall」は翻訳によっては「ハッサル」とも。
- ^ FOOD AND ITS ADULTERATIONSは、その一部翻訳を青空文庫で読むことも可能[1]である。
- ^ ジャグ (jug) とは一般に、口の開いた、取手(もち手)のついた大きな容器。19世紀ではしばしば陶器製。日本語では「水差し」といった表現が近い、が他の液体を入れると表現が完全には合致しない。
- ^ 同法以前は、生鮮食品のうち、9品目の青果物にしか原産地表示の義務はなかった。
- ^ 実放送内で写真つきで言及。
- ^ 実放送内で言及。
- ^ 補助金等。
出典
- ^ 米虫節夫『やさしい食の安全』、日本学術協力財団『食の安全と安心を守る』など
- ^ 山口英昌編著『食環境科学入門 食の安全を環境問題の視点から』など
- ^ 石田英雄『クレームに学ぶ 食の安全』など
- ^ a b c 日本学術協力財団『食の安全と安心を守る』など
- ^ 『食の安全と安心を守る』p.147
- ^ a b 黒川清 2005, p. 125.
- ^ a b 黒川清 2005, p. 147
- ^ 米虫節夫 2002, p. 172
- ^ ジョン・ハンフリース 2002, 第三章
- ^ 山口英昌 2006, p. 6
- ^ 黒川清 2005, p. 138
- ^ 米虫節夫 2002, pp. 3–4
- ^ a b 『第2節 安全な食料の安定供給と消費者の信頼確保』平成18年度食料・農業・農村白書(農林水産省)
- ^ 川本伸一「技術解説: 食品安全分野における研究」(PDF)『食品と技術』、独立行政法人 農研機構 食品総合研究所、2009年2月、2010年11月18日閲覧。
- ^ a b 米虫節夫 2002, p. 3
- ^ 急性的・短期的・中期的・長期的危害の区分の出典:米虫節夫 2002, p. 3
- ^ 米虫節夫 2002, p. 6
- ^ 米虫節夫 2002, pp. 22–23
- ^ 米虫節夫 2002, pp. 7–9
- ^ a b c 米虫節夫 2002, p. 8
- ^ 米虫節夫 2002, p. 12
- ^ a b c 山口英昌 2006, p. 1
- ^ a b c 山口英昌 2006, p. 2
- ^ a b 山口英昌 2006, p. 3
- ^ a b c d 黒川清 2005, p. 11
- ^ 黒川清 2005, p. 34
- ^ a b 黒川清 2005, p. 12
- ^ ジョン・ハンフリース 2002, p. 53
- ^ ジョン・ハンフリース 2002, pp. 53–54
- ^ a b c ジョン・ハンフリース 2002, p. 54
- ^ ジョン・ハンフリース 2002, p. 55
- ^ a b c ジョン・ハンフリース 2002, pp. 55–56
- ^ ジョン・ハンフリース 2002, p. 56
- ^ a b c d e f g 2007年9月4日号 週刊エコノミスト
- ^ 石田英雄 2005, p. 133
- ^ 「主婦連たより」第一号 (PDF) 昭和23年12月5日。主婦連たよりデーターベース。
- ^ 黒川清 2005, p. 60
- ^ a b c d e f g h 米虫節夫 2002, pp. 6–9
- ^ 石田英雄 2005, pp. 15–16
- ^ 石田英雄 2005, p. 22
- ^ a b 石田英雄 2005, pp. 22–23
- ^ 米虫節夫 2002, p. 29
- ^ 須坂市における缶入り飲料毒物混入殺人事件捜査本部からのお願い/長野県警察[リンク切れ]
- ^ 『やさしい 食の安全』p.68
- ^ a b c 石田英雄 2005, p. 24
- ^ 石田英雄 2005, p. 196
- ^ 黒川清 2005, p. 22
- ^ a b c d 日経新聞「牛の生レバー禁止 ほかの肉はどうなっているの?」
- ^ 牛の生レバー提供の疑い
- ^ a b 『27都道府県で発覚 毎日新聞まとめ』2007年11月18日付配信 毎日新聞
- ^ a b 『便利の落とし穴:中国製ギョーザの警告/下 原産地、オープンに』2008年2月6日付配信 毎日新聞
- ^ 『外食における原産地表示に関するガイドライン』2005年7月28日 農林水産省
- ^ 黒川清 2005, p. 23
- ^ 食品安全委員会ホームページ
- ^ 太田農相:消費者軽視?…「やかましいから」安全徹底 2008年8月10日付配信 毎日新聞
- ^ a b 石田英雄 2005, p. 15
- ^ 『食品偽装の余波ジワリ 買い物客、原産地や表示じっくり』2007年11月20日付配信 産経新聞
- ^ a b c d 藤原邦達 2003, p. 271
- ^ 『日本の食と農』p.63、p.68
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa NHK解説委員石川一洋による解説 「食の安全・ベラルーシから学ぶこと」2011年11月7日1:05〜1:55の「スタジオパークからこんにちは」の枠内で放送。概要は解説委員室 解説アーカイブスでも検証可能。
- ^ (出典)河田昌東「チェルノブイリからみた福島原発震災」『土と健康』No.427
- ^ (出典)*現代用語の基礎知識2012年版
- ^ a b c 輸入食品中の放射能の濃度限度
- ^ a b 厚生労働省 放射能暫定限度を超える輸入食品の発見について(第34報)(別紙)暫定限度(放射能濃度)を超えた輸入食品一覧
- ^ “食安発0317第3号 平成23年3月17日 厚生労働省医薬食品局食品安全部長 放射能汚染された食品の取り扱いについて” (PDF). 厚生労働省 (2011年3月17日). 2012年5月7日閲覧。
- ^ “厚生労働省告示第百二十九号 平成二十四年三月十五日” (PDF). 厚生労働省 (2012年3月15日). 2012年5月10日閲覧。
- ^ “厚生労働省告示第百三十号 平成二十四年三月十五日” (PDF). 厚生労働省 (2012年3月15日). 2012年5月10日閲覧。
- ^ “厚生労働省令第三十一号 平成二十四年三月十五日” (PDF). 厚生労働省 (2012年3月15日). 2012年5月10日閲覧。
- ^ “Drinking Water Contaminants”. United State Environment Protection Agency (2004年). 2011年4月15日閲覧。
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