雪 観測・予測

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 04:02 UTC 版)

観測・予測

降水量にはだけではなく雪も含まれ、寒冷地の雨量計は雪を溶かす機能を備えている。一方、ある時点における積雪の深さを積雪量や積雪深(積雪の深さ)、また一定時間の積雪量を降雪量や降雪の深さといい、雪尺(ものさし)や積雪計により観測する。降雪量は降水量のおよそ10倍前後の値をとる(雪水比)が、気温が低いほどこの値は大きい。また積雪はやがて圧縮を受けるため、積雪量の増加量は降雪量の累計のおよそ3分の2程度になるとされる[23][24][5]

観測記録の上で雪は強さに3段階の区分があり、国際気象通報式天気の報告などに用いる。また対流性の積乱雲などから降る降ったり止んだりの強度変化の激しいものを「驟雪(しゅうせつ)」、層雲から降る雪片の直径が1mm未満のものを「霧雪」として区別する。しゅう雪性かそうでないか、止み間があったかどうか、観測時に降っているか止んでいるか、3段階の雪の強さ、雷を伴う否かなどの組み合わせで区分される。なお無人観測の場合は雪と霰などの判別をしないことが多く、"固体降水"を設けるなど少し異なった区分になる[2][25][* 4][* 5]

ラジオ気象通報などの日本式天気図では、観測時に雪が降っているときに、天気を「雪」()とする。ただし、観測時に3.0mm/h以上の強い雪では「雪強し」()、驟雪の場合は「にわか雪」()とする。「」、「地吹雪」の区分もある。なお、雹や霰(雪霰、氷霰、凍雨)を伴う場合や雷が鳴っている場合、そちらを優先する[27]。雪強しの記号は、1988年雷強しとともに追加された。

航空気象の通報式[* 6]では、「降水現象」の欄のSNが雪を表し、単独で、あるいは特性の欄のSH(しゅう雨性)、DR(低い=風で2m未満の高さに吹き上げられている)またはBL(高い=同2m以上)、TS(雷電)などと組み合わせて用いる[28]。例えば、SN DRで低い地吹雪、SN SHでしゅう雪。

気象庁は、現象の判別ができる目視観測では大気現象として雹、霰、凍雨、霧雪、細氷、吹雪などを区別し記録している。自動気象観測装置を導入したところ(アメダスやほとんどの地方気象台)では雪とほかの固体降水との判別が難しく、雨雪判別(降水が雪・霙・雨いずれかを気温と湿度から判定する)のみとし、前記の大気現象の記録を廃止し、しゅう雪などの区別も行わない[5][26][29][30]

気象庁の天気予報で雪・雨両方の可能性があるときの表現は、雨の確率が95%以上で「雨」、95%未満50%以上で「雨か雪」、50%未満5%以上で「雪か雨」、5%未満で「雪」とする[31]。なお、凍雨や雪霰は雪、氷霰はの予報にそれぞれ含めて扱う[5][26]。ただし、実際に凍雨や雪霰が降った場合でも、観測上は雪が降ったとはみなさない。

予報の場面では次のような表現を使うこともある。3cm/h以上の雪を「強い雪」、1cm/hに満たない雪を「弱い雪」、数時間降り続いても降水量が1mmに達しない雪を「小雪」、地域的に散発する一過性の驟雪を「にわか雪」と呼ぶ[5]

降雪と同時に強が吹いている状態を吹雪という。また、積雪のあるところでは、降雪がなくても雪が強風により舞い上がりこれを地吹雪という。地吹雪を伴うような寒冷な強風をブリザード(Blizzard)という[5]。吹雪やブリザードは視界を悪化させ、交通や生活に支障をもたらす。

また、各地の気候を見る資料の1つとして、その初めての雪(初雪)やその冬最後の雪(終雪)を記録しているところがある。日本では現在気象庁が有人気象観測点や雨雪判別機能付き自動気象観測装置設置点で記録をとっている。この場合には、霙も雪に含めて考える。さらに気象庁は、各地の気象台から主要な山の積雪を目視で観測しており初冠雪として記録している[5][13][30]

気象レーダーは雪片を探知し、雨と同様雨量計と経験式の補正を加えて降水強度を算出する。雪と雨では経験式の定数が異なる[5]


注釈

  1. ^ 例えば、イヌクティトゥット語版ウィキペディアでは「雪」の項目は「ᐊᐳᑦ/aput」=「雪(一般的用法)」というタイトルが付けられている。
  2. ^ en:2007 Siberian orange snow
  3. ^ 大気中における雪片の融解現象に関する研究 気象研究所技術報告第8号、1984年3月。2章p.19-p.20に輪島、松本、日光各地のデータに基づく相対湿度と地上気温を軸にとった雨雪判別図が、同章p.15に回帰分析によって得られた近似式が掲載されている。上に挙げた二式はともに松本のもの。
  4. ^ 日本の気象庁の場合、観測時に1.0mm/h未満・視程約1km以上で強度0、同1.0mm/h以上3.0mm/h未満・0.2km以上1km未満で強度1、同3.0mm/h以上・0.2km未満で強度2[26]
  5. ^ SYNOPSHIPなどに用いる96種天気。地上天気図#天気参照。
  6. ^ METARTAF
  7. ^ サスツルギ(ロシア語: Заструга)、シュカブラ(ノルウェー語: skovla)、snow ripplesとも。
  8. ^ 山岳用語としての雪田は、高山の稜線付近に夏まで融けずに残る雪を意味し、稜線上の山小屋には貴重な水源となっている。
  9. ^ 雪祭りは、現代では北海道の札幌市および旭川市長野県飯山市新潟県十日町市などで開催される。日本以外の地域の場合、「冬祭り」「氷祭り」「雪祭り」はあまり区別されていない。
  10. ^ 経済産業省北海道経済産業局『平成26年度北海道電力需給実績(確報)』「【表-1】総需要電力量(用途別・月別) (PDF) 」「【表-3】総発電電力量(事業用+自家用)実績 (PDF) 」(2016年6月14日)によれば、北海道の総需要電力量は、2014年(平成26年)8月は2,906,419千 kWhであるのに対して、2015年(平成27年)1月は3,776,733千 kWhであり、夏より冬のほうが電力需要が多いことが分かる。また、2014年8月の北海道の水力発電電力量は641,890千 kWhであるのに対し、2015年1月は319,457千 kWhであり、夏より冬のほうが水力発電電力量が少ないことが分かる。
  11. ^ ある主要な季語について別表現と位置付けされる季語を、親子の関係になぞらえて、親季語に対する「子季語」という。「傍題」ともいうが、傍題は本来「季題」の対義語である。なお、子季語の季節と分類は親季語に準ずる。

出典

  1. ^ 雪の研究室 - 北海道雪たんけん館”. 北海道雪たんけん館. 2014年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月6日閲覧。
  2. ^ a b c 気象観測の手引き』、2007年改訂、pp.58-65「第12章 天気」
  3. ^ アスピリンスノーとは”. 北海道方言辞書. Weblio 辞書. 2017年7月11日閲覧。
  4. ^ 王子製紙 (1938年). “紙業提要”. Google Books. 2013年9月23日閲覧。 [要ページ番号]
  5. ^ a b c d e f g h 「予報用語 降水」、気象庁、2023年1月24日閲覧
  6. ^ アメリカ・ニューヨーク州で観測された雪結晶” (PDF). 菊地 勝弘. 2019年2月9日閲覧。
  7. ^ 菊地 勝弘, 亀田 貴雄, 樋口 敬二, 山下 晃「中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類 -グローバル分類-」『雪氷』第74巻第3号、2012年5月、223-241頁。 
  8. ^ 小倉 2016, pp. 96–97.
  9. ^ 藤原滋水、青木輝夫「氷の色・雪の色」(PDF)『天気』第40巻第3号、日本気象学会、1993年3月、1-2頁、2012年12月3日閲覧 
  10. ^ 黄砂問題検討会中間報告書”. 大気環境・自動車対策 黄砂問題検討会報告書集. 環境省 (2004年9月). 2012年12月3日閲覧。 [要文献特定詳細情報]
  11. ^ Russia probes smelly orange snow”. BBC News (2007年2月2日). 2023年1月24日閲覧。
  12. ^ Lydia Smith (2018年3月25日). “Strange 'orange snow’ phenomenon reported across eastern Europe”. The Independent. 2023年1月24日閲覧。
  13. ^ a b 雨や雪について”. よくある質問集. 気象庁. 2016年2月23日閲覧。
  14. ^ 雪と氷の辞典、pp.68-69
  15. ^ a b Buffalo Lake Effect Page”. National Weather Service(アメリカ国立気象局 (2012年3月2日). 2012年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月3日閲覧。
  16. ^ 播磨屋敏生、松尾敬世、永田雅、藤吉康志「1992年度日本気象学会秋季大会スペシャル・セッション「雪」の報告」(PDF)『天気』第40巻第6号、日本気象学会、1993年6月、pp.417-420、2012年12月3日閲覧 
  17. ^ a b c 雪と氷の辞典、pp.65-68
  18. ^ a b c d e 雪と氷の辞典、pp.69-77
  19. ^ Jeff Haby. “Lake effect forecasting”. theweatherprediction.com. 2012年12月3日閲覧。
  20. ^ 第二部大気と海の科学 3-6 空気中の水蒸気 山賀進
  21. ^ 〜こんにちは!気象庁です!平成21年1月号〜[リンク切れ] 気象庁
  22. ^ 最新気象学のキホンがよ〜くわかる本[要ページ番号]
  23. ^ 『気象観測の手引き』、2007年改訂、pp.4-8「第2章 降水」
  24. ^ 気象観測ガイドブック』、気象庁、2002年12月、p.47
  25. ^ 国際式の天気記号と記入方式」、気象庁、2023年1月21日閲覧。
  26. ^ a b c 天気記号表”. 過去の気象データ検索 利用される方へ. 気象庁. 2023年1月24日閲覧。
  27. ^ 理科年表FAQ > 山内豊太郎「天気の種類はいくつあるのですか。その記号も教えてください。」、理科年表オフィシャルサイト(国立天文台、丸善出版)、2008年3月、2022年1月21日閲覧。
  28. ^ METAR報とTAF報の解説」、那覇航空測候所、2023年1月21日閲覧。
  29. ^ 「報道発表 地方気象台における目視観測通報を自動化します」、大阪管区気象台、2019年11月16日、2023年1月24日閲覧
  30. ^ a b 雪(初雪)の観測は誰がどのように行っているのですか?」、福岡管区気象台『はれるんマガジン』36号、2022年12月27日、2023年1月24日閲覧
  31. ^ 雪に関する予報と気象情報について」気象庁、気象等の情報に関する講習会、2012年12月7日、2023年1月24日閲覧
  32. ^ "雪食作用". 『日本大百科全書』、小学館. コトバンクより2023年1月24日閲覧
  33. ^ “(風のまにまに 南会津雑記:4)只見のブナ原生林 自然首都の誇り 岡村健/福島県”. 朝日新聞デジタル(asahi.com) (朝日新聞社). (2008年5月23日). http://www.asahi.com/shimbun/nie/tenkai/kankyo4d.html 2012年5月26日閲覧。 
  34. ^ "雪田植物群落". 『世界大百科事典』第2版、平凡社. コトバンクより2023年1月24日閲覧
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  36. ^ “(4)地域の暮らしと環境を活かした事例 新潟県安塚町 ~雪の活用と田舎体験~”. 平成15年度国土交通白書 (国土交通省総合政策局). (2004年7月). https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h15/hakusho/h16/html/F1012140.html 2019年2月6日閲覧。 
  37. ^ 『近畿農政局』の『農村振興』の『農業・農村の整備』の『管内国営事業(務)所のご案内』の『国営新湖北農業水利事業』の『湖北平野の自然』”. 2010年12月7日閲覧。
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  44. ^ a b c 日本大百科全書:ニッポニカ』「季語」
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  47. ^ 大辞林 第三版 2481頁。
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  49. ^ 鈴木牧之 編『北越雪譜』〈岩波文庫〉1996年。  [要文献特定詳細情報]
  50. ^ 火星では夜に激しい雪が降る、研究成果”. ナショナル ジオグラフィック 日本語版. 2020年12月13日閲覧。






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