川
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地形にもたらす作用
河道は恒久的な構造ではなく、自然の状態では水の各作用、土壌の侵食・削りだした土砂の運搬・流れが緩やかな部分への土砂の堆積によって数年から数十年(百年以上も)単位で位置を変える場合がある。また、河川はそのできてからの地形の変遷によって、幼年期・青年期・壮年期・老年期に大まかに分類される。まず平原の低いところに水が集まって河道が形成されるのが幼年期である。青年期になると、侵食が進むことで峡谷が形成される。峡谷は水量が多く侵食力の大きい下流の方が深く広くなる。また、同じ理由で渓谷は河口付近に誕生し、時とともに上流へと延びていくこととなる。壮年期に入ると侵食は流域の全域に及ぶようになり、源流である山岳も削られて鋭いものとなる。一方で下流では堆積が進んで平野が広がるようになり、堆積物による三角州も河口には形成されるようになる。老年期になると、侵食作用が著しく進み、山岳はすべて削られつくして準平原が広がるようになる。こうした準平原には山岳のわずかな残りである残丘が点在している。そしてこの準平原が地殻変動などで隆起することによって、再び幼年期からの川の成長が始まる。なお、実際には老年期にまで達する河川はごくわずかで、地球上にあるほとんどの河川は幼年期から壮年期に属する[8]。これは、地殻変動や火山噴火、気候の変化や海面の高さの変化などの様々な要因によって、老年期に達する前に地形の若返りが起こり、そこから再びサイクルが開始されるからであるとされる。こうした川を中心とした地形の変遷は地形輪廻とも呼ばれる。
侵食作用
川は水を運搬するだけでなく、水流によって川底や川岸の土砂や岩石を削りとり、長期的には峡谷を形成しながら谷を下方へと沈下させてゆく作用を持つ。このような川の作用を侵食作用と呼ぶ[9]。
河川の水源は湧水や泉などが多い。山岳地帯に存在する湧水や泉から河川は始まり、渓流として山岳の斜面を流れ下るうちに各地の水源からの流水を合わせて沢となり、太い流れとなっていく。こうした源流部においては勾配が急であるため河川の侵食作用が激しく、山体は徐々に侵食されていくが、特に侵食がはげしい河川において侵食の先端が他の河川に到達した場合、前者の河川が後者の河川の上流部を丸ごと奪ってしまう場合が存在する。これを河川争奪と呼ぶ。河川争奪が起きた場合、奪った側は流量の増大によって侵食力が大きくなり谷が深くなる一方、奪われた側は、奪われた地点から下流においては流量の低下によって土砂を運搬することができなくなり、残った支流からの土砂が堆積するばかりになるため、広い谷が形成される[10]。また、山岳地帯において侵食は一様ではなく、水流が断崖に出た場合や、河床の地質が固く侵食が食い止められる場合には侵食に段差ができ、この場合水流は滝となって落差をつけ垂直に落下する。
なお、河川は海岸で途切れてしまうわけではなく、海底谷をなして海洋のかなり深くまで地形的に連続していることがある。これは、氷期などによって海面が低下した際に河川がそこまで流れ込んでいたものが、そのまま残されたものである[11]。また、海に流れ込んだ河川の水はしばらくの間周囲の海水とはある程度異なった水塊をなすことが多く、アマゾン川のように非常に水量の多い河川の場合、河口から数百km先においても周囲とは明らかに塩分濃度や成分の違った水塊となっている[12]。
運搬作用
川によって侵食された粘土や砂礫は、流水に溶解したり、単に流されることによって、より下流へと運搬される[13]。このような川の作用を運搬作用と呼ぶ。
川の下流に堆積する堆積物のうち、特に礫や巨礫などの砕屑物は角が丸くなっているものが多い。これは岩石が砕屑された際には切断面を残し角ばっていたものが、運搬によって徐々に削られて、角が丸くなるためである。
堆積作用
川が運搬する粘土や砂礫は、勾配の緩やかな下流付近で川の流速が弱くなることにより、その粒径によってふるい分けられながら、徐々に川底や河岸に集積され、堆積物となる。このような川の作用を堆積作用と呼ぶ。
山岳地帯から平野部に河川が流出する地点においては、山岳地帯で流れ込んだ大量の土砂が扇型に広がって堆積し、扇状地を形成する[14]。特に中流域において、地殻変動により地面が隆起した場合、河川が下刻してそれまでの河岸平野を高原上に取り残してしまう場合がある。これは河岸段丘と呼ばれ、段丘という名の通り河道に沿っていくつかの段をなすことが多い[15]。流れのうち、緩やかでよどみがあり深い地点は淵と、浅く急流となっている地点は瀬と呼ばれる[16]。また、堆積物が川の中央部にたまって陸地となることがあり、これを中州という[17]。河川が運んできた堆積物によって河川の下流部には広い平野が形成されることが多く、これを沖積平野と呼ぶ。後述の氾濫原や三角州も、沖積平野の一部である[18]。また、山岳部においても勾配の緩やかな地点においては上流からの土砂が堆積し、しばしば谷底平野が形成される。
河川の増水時に河道から水が氾濫する一帯を氾濫原と呼び、水が得やすく土地が肥沃なため古くから農業に利用されてきたものの、河川が増水した場合には当然本来なら水没してしまうため、それを抑えるために様々な治水が行われてきた地域でもある。氾濫原の河道のそばには河川が運んできた土砂が堆積して微高地をなすことが多く、これを自然堤防と呼ぶ[19]。これに対し、その背後に広がる低地は後背湿地と呼ばれる。なお、人類が堤防を建設して河道を固定した場合、上流から流れてきた土砂は河道の中に限定して堆積するため、河道自体が周辺の平野よりも高くなってしまう場合がある。これを天井川と呼ぶ[20]。特に下流部においては河道は蛇行することも多いが、洪水などでその流れがショートカットされた場合、残された旧河道にはしばしば河道の形の湖が形成される。これを三日月湖と言い、自然の流路変更のほか人間による河川改修によって流路が変更された場合などにおいても形成される[21]。
河口部には上流から流れてきた砂やシルトなどの堆積物が集まりやすく、大型の河川では三角州を形成することが多い。三角州といっても、堆積物の量や注ぎ込む海の状況によって様々な形状があり、海流が弱い場合はミシシッピ川のように海に長く張り出す形を取り、また強い場合はニジェール川のように、河口部では海岸線が膨らむものの直線的な海岸線となる。またガンジス川のように潮汐の影響が強い場合は、三角州のそれぞれの洲は沖合に細長く、また三角州全体では扇形に幅広く広がる[22]。三角州は上流からの肥沃な土が堆積しており、また河川の水も豊富なため、各地で農業開発が進められ、大穀倉地帯となっていることが多い。ガンジス川やメコン川、ナイル川のデルタ地帯がその例である。
注釈
出典
- ^ 宇野木 2010, p. 156.
- ^ 青木ほか 1995, p. 4 表1-1.
- ^ 新谷ほか 2006, p. 5.
- ^ 藤岡 2014, p. 135.
- ^ 藤岡 2014, p. 139.
- ^ 宇野木 2010, p. 181.
- ^ 宇野木 2010, p. 66.
- ^ 宇野木 2010, p. 145.
- ^ 宇野木 2010, p. 127.
- ^ 大矢 2006, pp. 77–78.
- ^ 藤岡 2014, p. 114.
- ^ 宇野木 2010, p. 285.
- ^ 宇野木 2010, p. 129.
- ^ 藤岡 2014, p. 163.
- ^ 藤岡 2014, pp. 62–65.
- ^ 新谷ほか 2006, p. 109.
- ^ 藤岡 2014, pp. 164–165.
- ^ 宇野木 2010, p. 86.
- ^ 宇野木 2010, p. 89.
- ^ 藤岡 2014, pp. 56–58.
- ^ 藤岡 2014, p. 177.
- ^ ピネ 2010, p. 410.
- ^ “What Is A Stream In Geography?”. World Atlas (2018年3月19日). 2022年9月5日閲覧。
- ^ “IMPORTANCE OF RIVERS AND STREAMS”. Basic Biology (2016年1月16日). 2022年9月5日閲覧。
- ^ a b 中尾 2014, pp. 169–170.
- ^ 宇野木 2010, p. 78.
- ^ 新谷ほか 2006, p. 11.
- ^ 新谷ほか 2006, pp. 149–150.
- ^ 新谷ほか 2006, pp. 110–111.
- ^ 新谷ほか 2006, p. 136.
- ^ a b 末次 2005 [要ページ番号]
- ^ 宇野木 2010, p. 111.
- ^ 高橋 2012, pp. 26–27.
- ^ ヴィクトルほか 2007, pp. 87–89.
- ^ a b “ナイル川流域国間の水資源問題”. 公式ウェブサイト. 国際協力機構 (JICA) (2010年12月21日). 2015年7月8日閲覧。
- ^ 新谷ほか 2006, pp. 158–159.
- ^ 瀬川 1999, p. 76.
- ^ 三浦ほか 2008, p. 73.
- ^ 新谷ほか 2006, p. 132.
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