夕張市 政治

夕張市

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 04:36 UTC 版)

政治

行政

市長

  • 厚谷司(2019年4月21日選出、2019年4月22日就任、現在2期目)

ふるさと納税制度

ふるさと納税制度を採用しており、使途を指定する寄付と使途を限定しない寄付の方法がある[16]

市議会

定数:8名[17]:2019年4月実施の市議選より定数8に削減され、市議会としては歌志内市と並び全国最小定数になった[18]

任期:2019年5月1日 - 2023年4月30日

  • 議長:大山修二(おおやま しゅうじ)
  • 副議長:高間澄子(たかま すみこ)

財政

健全化判断比率・資金不足比率

平成29年度決算〜確報値 健全化判断比率

財政再建問題

財政難に陥った経緯

前述のように、かつて夕張は炭鉱の街として栄えたが、「石炭から石油へ」のエネルギー政策転換により、次々と炭鉱が閉山されていった歴史を持つ。1990年(平成2年)には最後の三菱南大夕張炭鉱が閉山し、夕張から炭鉱がなくなった。これにより炭鉱会社が鉱員向けに設置したインフラストラクチャーを市が買収することになった。1982年(昭和57年)、北炭が所有していた夕張炭鉱病院を市立病院に移管。その際、市は40億円を負担している。さらに北炭は、夕張新炭鉱での事故を理由に、鉱産税61億円を未払いのまま撤退(倒産で払えなくなったとも)。また、北炭・三菱は炭鉱住宅5,000戸(市営住宅に転換・改良住宅に建て替え)や上下水道設備などを夕張市に買収してもらい、その額は151億円に達した。結果「炭鉱閉山処理対策費」は総額583億円に達した。

旧夕張ロボット大科学館:1988年に開館。観光開発に一貫性がなかったこともあり、すぐに陳腐化、閉館に追いやられた。2006年の閉館後、転用先が無かったロボット大科学館は2008年に取り壊された。

また、こうした施設の建設に際して地元業者優先の随意契約が多く行われ、建設費も適正な価格に比べて相当高くついたケースも見られた。このほか、事業が観光客誘致よりも雇用確保に傾いたため、各施設が余剰人員を多く抱えていたことも観光関連施設の収支を悪化させる要因となった[19]

1982年12月20日の『北海道新聞』では「(市は)財政再建団体への転落必至」と報じられ、自治省財政緊縮を強く指導したが、市は従わず前年度比17%増の積極予算を組んだ[20]

市は、中田鉄治市長時代に石炭産業の撤退と市勢の悪化に対し、「炭鉱から観光へ」とテーマパークスキー場の開設、映画祭などのイベントの開催、企業誘致により地域経済の再生、若年層を中心とする人口流出の抑止、雇用創生などを図ったものの、その後のバブル崩壊による景気低迷や、それに伴う観光客・スキー客の減少もあり、ことごとく振るわなかった。観光・レクリエーション投資における放漫経営が累積赤字として重くのしかかった結果、市の財政を圧迫していった。

産炭地域振興臨時措置法が2001年(平成13年)に失効したことなどで、財政状況はさらに悪化した。

2002年3月、市はマウントレースイスキー場を26億円で買収することを決め、市債を発行し資金調達しようとしたものの、北海道庁は負担が重すぎるとして許可しなかった。そこで市は土地開発公社に買収させ、市が肩代わり返済する「ヤミ起債的行為」に手を染めた[21]

一時借入金などの活用により表面上は財政黒字となる手法をとったため、負債が膨れ上がっていった。一時借入金残高は12金融機関から292億円、企業会計を含む地方債残高が187億円、公営企業第三セクターへの債務損失補償が120億円とされ、夕張市の標準財政規模(44億円)を大きく上回っており、一般的に10年とされる再建期間での再建はほぼ不可能な状態であった。

2006年(平成18年)6月20日に後藤健二市長(当時)が定例市議会の冒頭で、総務省に対して財政再建団体の申請を行う考えを表明した。

2006年(平成18年)8月1日に夕張市の財政状況の調査に関する「経過報告」を北海道が公表した。

道は、再建期間短縮等の観点から、赤字額の360億円を年0.5%の低利で融資(市場金利との差額は道が負担)、国も地方交付税交付金などによる支援を打ち出した。これらの動きにより、再建期間は18年間の見込みとなった。財政再建団体指定は、1992年(平成4年)の福岡県赤池町(現・福智町)以来、北海道では1972年(昭和47年)の福島町以来、では1977年(昭和52年)の三重県上野市(現・伊賀市)以来となる。

なお、当時の後藤市長は、『北海道新聞』(2007年(平成19年)4月17日)の取材に対して、2006年(平成18年)6月10日に同紙に巨額負債を報じられる以前の2月、総務省に特別交付税の陳情に行った際に財政再建団体指定を覚悟したと語っている。

2006年度決算における実質公債費比率は38.1%だった。これは全国でも長野県王滝村の42.2%に次ぐ数字であり、財政再建団体を適用しなかったとしても、2008年度決算から適用される地方自治体財政健全化法財政再生団体に該当することになっていたと想定される。

「ヤミ起債」問題について

産炭地域振興臨時措置法の失効により、同法に沿って行われていた地方交付税交付金の手厚い分配がなくなり、地方債への依存度が高まった。そもそも地方債発行には都道府県知事の許可が必要で、2006年(平成18年)4月からは、財政難の自治体を除き、国と地方自治体が事前協議したうえ、地方自治体の判断により発行する制度に移行、夕張市など6市町(他に歌志内市赤平市三笠市上砂川町芦別市)は限度額に近い金額を起債して極端な財政危機に陥った。そこで、「空知産炭地域総合発展基金」など各種基金や、銀行信用金庫など金融機関からの借り入れという形をとって急場をしのいだと言われている。こうした流れは本来、一時的に税収が不足した時や、会計制度上財政が逼迫しやすい会計年度末に少額・短期間採られることが多い常套的手段ではあるが、6市町は税収不足の補填や融資自体の返済のために借り換えに借り換えを重ね、債務は累積し、いわゆる自転車操業状態に陥った。4月1日から5月31日は決算の出納整理期間だが、その期間を悪用して旧年度の会計に新年度の会計から貸して見かけ上黒字に見せかけるなどの違法な決算操作が行われていた。

財政再建計画

市の第三セクターである株式会社石炭の歴史村観光(負債額74億8,800万円)、夕張観光開発株式会社(負債額54億6,000万円)、夕張木炭製造株式会社(負債額16億円)の3社は破産処理された[22]

2006年(平成18年)9月から市職員の給与を削減することとなり、市長は50%(月収862,000円→431,000円)、助役は40%、教育長は25%、一般職員も15%カットとなり、4億200万円の削減となる。2007年(平成19年)4月からは、さらに削減し、市長75%(月収259,000円、年収374万円)、助役70%(月収249,000円)、教育長66%(月収239,000円)、常勤監査委員も229,000円など、徹底した削減がなされ、市長の給与は全国最低となる。市議会議員の人数も18人から9人に半減、議員報酬も311,000円から180,000円に削減される。2007年の「映画祭」は中止された。

さらには新規職員の採用凍結や早期退職勧告により職員数も削減している。早期退職希望者が130人を超え、定年と自己都合を合わせ、全職員の約半数の152人が2006年度末で退職した。これは当初の削減計画の人数にほぼ合致している一方、急な退職で市政の滞り等が心配された。市は、この早期退職により、人員削減計画の前倒しとするとした。早期退職者は、役職者が約7割を占め、部長次長職は全員退職。2007年度末の退職者の内訳は部長職12人全員、次長職11人全員、課長職は32人中29人、主幹職は12人中9人、係長・主査職は76人中45人、一般職が166人中46人となっている。

また、市が保有する観光施設31施設の内29施設を運営委託、売却、廃止する方針も明らかになったが、道内観光大手の加森観光を中心に委託・売却先がほぼ決定した。

市民負担も大きくなり、市民税が個人均等割3,000円から3,500円に、固定資産税が1.4%から1.45%に、軽自動車税が現行税率の1.5倍に増額、入湯税150円も新設される。また、ごみ処理は一律有料化、施設使用料も5割増、下水道使用料が10m3あたり1,470円から2,440円に値上げ、保育料は3年間据え置くが、その後7年間で段階的に国の基準にまで引き上げる。敬老パスは廃止予定だったが、個人負担額を200円から300円に引き上げて存続されることとなった。この影響もあって転出者が相次ぎ、2006年・2007年の2年間で人口が1割近く減少した。

公共施設に関しては、多くの施設が廃止されることになっていたが、世論の反発などもあり、見直された。全廃予定だった7ヶ所の公衆トイレのうち清水沢と沼ノ沢を存続。南部コミュニティセンターは、使用料引き上げ、町内会などによる管理運営を条件に存続。スイミングセンターは夏季限定で営業する予定であったが、2008年(平成20年)3月に雪の重みにより屋根の一部が崩落し使用不能となり、修復も検討されたが取り壊された。市立図書館は、6万冊あった蔵書のうち2万冊を保健福祉センターに移設し(「図書コーナー」として貸し出しは継続)いったん廃止されたが[23][24]、2020年に拠点複合施設「りすた」内の「りすた図書館」として復活した[25]。蔵書数は保健福祉センター図書コーナー時代の2万冊を維持している[26]

財政再建計画はその時の状況に合わせて改定されているが、現在再生振替特例債の借り入れを行い、2027年3月に再生振替特例債償還終了を予定している。平成26年度までで約52億円分を返済済みである。

政府や北海道庁以外に、東京都が職員派遣により夕張市の再建を支援した。2011年、市長に初当選した鈴木直道は都職員で、夕張派遣を経験したことから市長選出馬を要請された。鈴木は2期8年在職した後、2019年の知事選に出馬して当選した。

また夕張市財政破綻の教訓を研究し、人口減少時代のコミュニティについて考える「夕張学会」が2018年発足している[27]


  1. ^ 歌志内市、三笠市、夕張市共に、「北海道空知管内の自治体」で、「過去に炭鉱で栄えたのちに衰退した」という共通点がある。
  2. ^ 第二小学校はピーク時に児童数約2,800人、55学級を数えた道内一のマンモス校であった
  3. ^ 三井鉱山が設置した私立小学校として開校。
  4. ^ テレビシリーズでも、夕張ロケのエピソードが製作されている。
  1. ^ 郡名之儀ニ付申上候書付 / 松浦武四郎北海道大学 北方資料データベース
  2. ^ 誰か昭和を思わざる 大正ラプソディー (大正元年) Archived 2011年1月25日, at the Wayback Machine.[出典無効]
  3. ^ 誰か昭和を思わざる 大正ラプソディー (大正2年1〜6月) Archived 2011年1月25日, at the Wayback Machine.[出典無効]
  4. ^ 『図典 日本の市町村章』 p22
  5. ^ 夕張市の概要
  6. ^ 鉄道ジャーナル 2022年4月号「ダムと鉄道(第2話)夕張シューパロダムと夕張の鉄道(2)」106頁。
  7. ^ a b 日外アソシエーツ編集部編 編『日本災害史事典 1868-2009』日外アソシエーツ、2010年、143頁。ISBN 9784816922749 
  8. ^ 所長に懲役求刑 北炭夕張事故の論告公判「生産を優先、保安軽視」『朝日新聞』1970年(昭和45年)6月16日夕刊 3版 9面
  9. ^ ふるさとチョイス
  10. ^ 黄色いハンカチ想い出ひろば”. 黄色いハンカチ想い出ひろば. 2019年11月12日閲覧。
  11. ^ あしたのコミュニティーラボ[リンク切れ]
  12. ^ 拠点複合施設建設工事着工/北海道夕張市ホームページ”. www.city.yubari.lg.jp. 2019年11月12日閲覧。[リンク切れ]
  13. ^ 夕張の石炭博物館で火災 消火作業、坑道水没へ”. 朝日新聞DIGITAL (2019年4月20日). 2022年8月19日閲覧。
  14. ^ 拠点複合施設「りすた」 - 夕張市公式サイト(2020年6月4日)
  15. ^ 夕張 過去の気象データ検索”. 気象庁. 2024年3月28日閲覧。
  16. ^ ふるさと納税制度”. 2014年1月4日閲覧。[リンク切れ]
  17. ^ 市議会の仕組み”. 夕張市. 2024年4月2日閲覧。
  18. ^ 夕張市議会 議員定数1減へ 全国最少の8に - 北海道新聞 2017.1.31[リンク切れ]
  19. ^ 自治体崩壊と財政危機要因
  20. ^ “盛衰の軌跡〈3〉“2億円”寄贈話 たが外れ錬金術の沼へ”. 北海道新聞. (2006年8月30日). http://www5.hokkaido-np.co.jp/yubari/seisui/03.php3 [リンク切れ]
  21. ^ “盛衰の軌跡〈4〉レースイ買収 壮大な夢 後始末で深手”. 北海道新聞. (2006年9月2日). http://www5.hokkaido-np.co.jp/yubari/seisui/04.php3 [リンク切れ]
  22. ^ 第3セクターの倒産動向調査 (Report). 帝国データバンク. 11 July 2007.[リンク切れ]
  23. ^ 野口 (2009). “北海道夕張市における子どもの読書環境の現状と課題”. 国立青少年教育振興機構研究紀要 (国立青少年教育振興機構) 9号. https://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/9/File/kiyo0905.pdf. 
  24. ^ 『みんなの図書館』(2009年3月号)、図書館問題研究会 pp. 47
  25. ^ 『みんなの図書館』(2020年9月号)、図書館問題研究会 pp. 30-31
  26. ^ りすた図書館 - 夕張市(2021年6月18日)、2023年3月14日閲覧
  27. ^ 夕張学(2018年12月1日閲覧)。
  28. ^ a b 角川日本地名大辞典・北海道』
  29. ^ 夕張市 市営住宅・道営住宅一覧”. 夕張市. 2021年7月31日閲覧。
  30. ^ JR北海道の資料(p.10)
  31. ^ JR石勝線の夕張支線が最終運行 廃線し、バス転換へ”. 2019年4月6日閲覧。
  32. ^ 新夕張~夕張間の廃止日を自治体と合意、JR北(2018年3月26日)
  33. ^ 人口速報集計(要計表による人口集計)結果平成28年2月26日公表
  34. ^ 北海道の空き家率ランキング
  35. ^ 北海道夕張市、高齢化率50%超 全国の市で最高[リンク切れ]
  36. ^ 地域別・住民登録人口 令和4年3月末現在” (PDF). 夕張市. 2022年9月2日閲覧。
  37. ^ 地域別・住民登録人口 平成29年3月末時点” (PDF). 夕張市. 2022年9月2日閲覧。
  38. ^ 地域別・住民登録人口 平成24年3月末現在” (PDF). 夕張市. 2022年9月2日閲覧。
  39. ^ 総務省統計局統計調査部国勢統計課 (27 January 2017). 平成27年国勢調査小地域集計01北海道《年齢(5歳階級),男女別人口,総年齢及び平均年齢(外国人-特掲)-町丁・字等》 (CSV) (Report). 総務省. 2017年5月20日閲覧※条町区分地の一部に0人の地域がある場合でも他の同一区分地で人口がある場合は除いた。
  40. ^ 夕張警察庁舎. 栗山警察署
  41. ^ a b 第2次答申書 参考資料”. 江別市立病院. pp. 24-26. 2023年8月12日閲覧。
  42. ^ 夕張市立診療所”. 医療法人社団 豊生会. 2023年8月12日閲覧。
  43. ^ 石勝線(新夕張・夕張駅間)の鉄道事業廃止について』(PDF)(プレスリリース)夕張市、北海道旅客鉄道、2018年3月23日。 オリジナルの2018年3月24日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20180324040936/https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2018/180323-1.pdf2021年1月6日閲覧 
  44. ^ 石勝線(新夕張・夕張駅間)の鉄道事業廃止届の提出について』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2018年3月26日。 オリジナルの2018年3月27日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20180327194405/https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2018/180326-1.pdf2021年1月6日閲覧 
  45. ^ 「夕張方式」路線見直しモデルに JR・道 対象沿線自治体は警戒『北海道新聞』2018年3月28日(2018年12月1日閲覧)[リンク切れ]
  46. ^ 北海道文化財保護協会 1996, p. 3.






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