国事行為
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/07 14:12 UTC 版)
国事行為に関する天皇の実質的権能
日本国憲法第4条は、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」と規定しているが、上記に掲げた日本国憲法上の「国事行為」には国会の召集や衆議院の解散など政治的機能に対して行うものがある。
この点につき、憲法草案の審議の過程では、天皇の意思が政治的決定に影響を及ぼすことも考えられ、第4条の趣旨につき、国事行為の他は国政に関する権能を有しないと解する見解もあった(国務大臣金森徳次郎の答弁)。このような解釈は第4条の文言からは無理とされており、国事行為を行う場合か否かを問わず国政に関する権能を有しないと解する見解が支配的である。
内閣法制局は衆議院内閣委員会での答弁で以下の見解を示している[22][23][24]。
- 国事行為に際しての内閣の助言と承認に対して、天皇はこれを拒否する権能、変える権能はない
- 海外旅行は国事行為に含まれないので、内閣の助言と承認に拘束されることなく、理論上、終局的には天皇の意思によって決定することになる
- 内閣の助言と承認事項が著しく国民のためにならず、天皇の良心に反する場合、天皇は国事行為について内閣に質問をすることができる
なお、天皇の政治的無答責は「象徴」としての地位に内在するものではなく日本国憲法第3条に定める国事行為についての内閣の責任と日本国憲法第4条に定める政治的諸関係からの厳格な隔離から導き出されるものと解されている[5]。
国事行為の代行
皇室典範の定めるところによって摂政が置かれている場合、摂政は天皇の名においてその国事に関する行為を行う(日本国憲法第5条前段)。また、天皇に精神もしくは身体の疾患または事故(海外訪問による日本国内不在を含む)で国事行為が遂行できない場合は、国事行為臨時代行に国事行為を委任できる(日本国憲法第4条第2項)。国会における政府答弁では憲法第4条第2項に規定される「国事行為臨時代行への委任」も国事行為に含まれるとしている。
順位 | 名・身位 | 生年月日 | 性別 | 備考 | 皇位継承 順位 | |
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1 | 秋篠宮文仁親王 (皇嗣) |
1965年(昭和40年)11月30日(58歳) | 男性 | 皇室典範第17条1項1号 「皇太子」(皇嗣)[摂政就任順位 2] |
1 | |
2 | 常陸宮正仁親王 | 1935年(昭和10年)11月28日(88歳) | 男性 | 皇室典範第17条1項2号 「親王及び王」 |
3 | |
3 | 皇后雅子 | 1963年(昭和38年)12月9日(60歳) | 女性 | 皇室典範第17条1項3号 「皇后」 |
- | |
4 | 上皇后美智子 | 1934年(昭和9年)10月20日(89歳) | 女性 | 皇室典範第17条1項4号 「皇太后」(上皇后 ) [摂政就任順位 3] |
- | |
5 | 愛子内親王 | 2001年(平成13年)12月1日(22歳) | 女性 | 皇室典範第17条1項6号 「内親王及び女王」 |
- | |
6 | 佳子内親王 | 1994年(平成6年)12月29日(29歳) | 女性 | - | ||
7 | 彬子女王 | 1981年(昭和56年)12月20日(42歳) | 女性 | - | ||
8 | 瑶子女王 | 1983年(昭和58年)10月25日(40歳) | 女性 | - | ||
9 | 承子女王 | 1986年(昭和61年)3月8日(38歳) | 女性 | - | ||
脚注 |
- ^ 伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、139頁
- ^ a b c 伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、149頁
- ^ a b 伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、150頁
- ^ a b c d 伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、129頁
- ^ a b c 水島朝穂「天皇と民事裁判権」『別冊ジュリスト No.187 憲法判例百選II 第5版』、有斐閣、2007年
- ^ 伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、132頁
- ^ 天皇皇后両陛下のご活動
- ^ 『週刊ダイアモンド 2016 9/17 36号』 ダイヤモンド社 p48
- ^ 『週刊ダイアモンド 2016 9/17 36号』 ダイヤモンド社 p48
- ^ 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法 I (第4版)』有斐閣、2006年、124頁
- ^ a b 吉川和宏「法令公布の方法」『別冊ジュリスト No.187 憲法判例百選II 第5版』、有斐閣、2007年
- ^ 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法 I (第4版)』有斐閣、2006年、127頁
- ^ 伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、146頁
- ^ a b 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法 I (第4版)』有斐閣、2006年、130頁
- ^ a b c 伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、140頁
- ^ “立皇嗣の礼を国事行為に 天皇陛下退位で政府”. 日本経済新聞. (2018年2月20日)
- ^ “ご大喪・ご即位・ご結婚などの行事”. 宮内庁. 2016年3月10日閲覧。
- ^ “衆議院会議録情報 第126回国会 内閣委員会議録 第5号”. 国会会議録検索システム. 国立国会図書館. 2016年3月10日閲覧。
- ^ 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法 I(第4版)』 有斐閣、2006年、126頁 - 127頁
- ^ 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法 I (第4版)』有斐閣、2006年、118頁 - 119頁
- ^ a b 伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、152頁
- ^ 衆議院内閣委員会議事録 昭和39年3月13日
- ^ 衆議院内閣委員会議事録 昭和39年3月14日
- ^ 衆議院内閣委員会議事録 昭和39年3月19日
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