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全集

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/24 16:46 UTC 版)

個人全集

古くは漢籍の「石雲山人詩文全集」などの例がある。近代以降の文学全集では没後まもなく編まれた「一葉全集」「紅葉全集」などが先駆的である。本格的な全集としては、岩波書店の「漱石全集」のように小説評論から日記書簡、断簡零墨までを集めたものがある。これはその人物の業績や思想を全て網羅しようとするもので、一つの理想的な形態ではあろう。「漱石全集」は度々新たな編集が行われており、改訂のたびに新発見資料の収録や本文校訂が行われている。また、1970年代には、筑摩書房が、『校本 宮澤賢治全集』で、推敲の過程の作者によって消された部分まで復元したことによって、「銀河鉄道の夜」の成立史など、研究を深める材料を提供したこともある。

まだ生存している作家がこれまでの作品をまとめた全集を編むこともある。この場合、全集刊行後に発表された作品は当然、全集から漏れることになるので、不完全な全集とならざるを得ない(ただし、司馬遼太郎全集のように、生前刊行分の続巻というかたちで完全な全集を完成させることもある)。中国では、存命中に出るものは「文集」であり、存命中に全集が出ることはありえない。世界文学全集の類と並び、日本で大々的に営業上の理由から〈誤用〉されている語である。

その他の全集

古くは「陸軍法令全集」(1889年 - 1990年)などの用例がある。

クラシック音楽で「ベートーヴェン交響曲全集」のように用いる例もある。この種の全集は主要作品のみというパターンはあまりなく、一応全作品を収めるが、「断簡零墨」に類するような習作や断片を収めるかどうかは編集方針次第である(一例として、ブルックナーの交響曲全集には、交響曲第0番などの初期の習作を入れないものが多数存在する)。

付録

全集には、販促物品として、「内容見本」とよばれるパンフレットが事前に作成されることが多い。そこには、関係者のエッセイなどが書き下ろされ、その対象への証言や研究に資するものもある。石川淳がいろいろな全集類に寄せた文章が有名である。

また、刊行時の付録として、「月報」と呼ばれるはさみこみが付されることも多い。これも、対象作家の研究に資するエッセイや、同時代批評などが収録されるため、古書店などで取引される際には、月報の有無が価格を左右することもある。





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