モスク モスクの内部と付属設備

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モスク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/03 14:18 UTC 版)

モスクの内部と付属設備

礼拝堂内部(東京ジャーミー)

内部には、イスラーム教の偶像崇拝の徹底排除の教義に従い、天使預言者聖者の像(偶像)は置かれることも描かれることもない。装飾はもっぱら幾何学模様のようなものだけである。マッカ(メッカ)の方角(この方角をキブラقبلة‎ qibla)という)に向けて、壁にミフラーブمحرابmiḥrāb)と呼ばれる窪みがある。これは、『コーラン』の規程に従ってメッカの方向に対して行わる礼拝の方向をモスクに集う人々に指し示すためのもので、礼拝の場であるモスクに必須の設備である。その向かって右隣にはイマームが集団礼拝の際に説教を行う階段状の説教壇がある。付属設備としては、礼拝の前に体を清めるための(ウドゥー、泉がない場合はシャワールームで代用)などが見られ、礼拝への呼びかけに用いるミナレット(マナーラ)を有する場合も多い。

モスク建築

建築構造は、回廊に囲まれた四角形の広い中庭と礼拝堂を持つ形が基本形である。アラブ圏ではダマスカスウマイヤ・モスクのようにキリスト教教会の構造を取り入れた多柱式のモスクが主流であったが、イランではイーワーン(半ドーム)を多用した形式が起こった。アナトリア半島では中庭をドームで覆う形式が起こり、オスマン帝国に至ってビザンツ帝国キリスト教教会建築を取り入れ、大ドームを小ドームや半ドームで支えることで柱のない広大な礼拝堂空間を持つ形式を生み出した。オスマン帝国はコンスタンティノープル(現・イスタンブール)征服後、教会だったアヤソフィアをモスクに転用した(トルコ共和国建国後、博物館とされた)。

図像を廃した内装と外観を持つモスクは、その装飾美・建築美から、非イスラーム教徒にとっても観光施設としての役割も果たしている。イスタンブールのスルタンアフメト・モスクトルコ語名スルタンアフメット・ジャーミー。通称ブルーモスク)や、イラン、イスファハーンのイマーム・モスク(ペルシア語名マスジデ・エマーム。旧名はマスジデ・シャーで、意味は「王のモスク」)などの著名なモスクは世界遺産に登録されており、世界中から観光客を集めている。

日本におけるモスク

ムスリムの居住者や旅行者が増えると、イスラム圏以外でもモスクが新設される。日本では1935年開設の神戸ムスリムモスク兵庫県神戸市)が最古である[4]早稲田大学教授の店田廣文によると、1980年代末に3カ所だった日本国内のモスクは、2018年末時点で36都道府県105カ所へと増えている。1980年代のバブル景気時にイスラム圏のイランやパキスタンバングラデシュから労働者が、1990年代以降は留学生や研修生、技能実習生としてインドネシアなどから来日するムスリムの増加を背景に、三大都市圏から各地の県庁所在地などへ広がった[5]。日本国内のモスクは礼拝のほか、在日ムスリムの結婚式に使われることもある[6]

2019年時点で日本国内には約20万人のムスリムが暮らすと推定されており、うち約4万3000人は改宗・入信した日本人である。日本全体では少数であるため、近隣でのモスク設立に不安・反発を表明する日本人も多い。このため町内会に加盟するなど地域活動に参加したり、街並みに調和した外観にしたりするといった配慮をするモスクもある[5]


注釈

  1. ^ マウソレウムとしての機能を持つものが現在2ヶ所存在している。サウジアラビア預言者のモスクムハンマド霊廟として存在、トルクメニスタンテュルクメンバシュ・ルーフ・モスク英語版は初代大統領であるニヤゾフ家族を葬っており、そのモスクの隣にはニヤゾフの霊廟が設けられている。
  2. ^ ムスリムは金曜日にモスクに集まって皆で一緒に礼拝するため、金曜日はアラビア語で「集まる」を意味する動詞 جَمَعَjama`a に由来する جُمْعَةjum`aと呼ばれる。このため、特にその地区や地域で重要であったり大きなモスクを「ジャーミイ」「ジャーミウ」 جامعjāmi` と呼ぶ。
  3. ^ トルクメニスタンアナウに存在していたセイット・ジュマール・アッディン・モスク(SEYIT JAMAL-AD-DIN MOSQUE)がその一例
  4. ^ マリ泥のモスクがその一例

出典

  1. ^ 「難民を勧誘するイスラム過激派-警戒強めるドイツ」ウォール・ストリート・ジャーナル』2015年12月1日(2019年11月28日閲覧)
  2. ^ Shrine complex of Jamal al-Din, Anau, Turkmenistan”. Square Kufic. 2016年8月27日閲覧。
  3. ^ 50人超が礼拝できる「モスクカー」開発 五輪でのもてなしに[リンク切れ] - NHK 2018年7月23日
  4. ^ 「神々の戸を開いた街」『日本経済新聞』朝刊2019年1月13日(NIKKEI The STYLE)。
  5. ^ a b 【追跡】増えるモスク 共存課題/36都道府県に105カ所/残る偏見 交流少なく/イスラム圏から留学生、労働者増加毎日新聞』朝刊2019年11月28日(総合面)同日閲覧。
  6. ^ 【ズームアップ】ご近所のムスリム読売新聞』夕刊2019年2月18日(5面)2019年2月26日閲覧。


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