ポパイ
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戦争とポパイ
第二次世界大戦が始まると、ポパイが枢軸国軍と戦うプロパガンダ映画がフェイマス・スタジオ制作分で何種類か作られた。例えば1942年の『You're a Sap, Mr. Jap』(あんたは間抜け、ミスター・ジャップ)では、ポパイが大日本帝国海軍の戦艦を破壊するが、登場する日本人はいずれも眼鏡、出っ歯などのステレオタイプ的な要素を強調して醜く描かれている。同年制作のポパイと日本の工作艦の乗組員達との攻防を描いた『Scrap the Japs』(ジャップをスクラップにせよ)も日本人は同様のイメージである。1943年の『Spinach Fer Britain』(対英ほうれん草輸送)では、無制限潜水艦作戦を展開するナチス・ドイツ海軍の潜水艦(Uボート)と戦う。登場するドイツ兵は全員がちょび髭で、事ある毎にナチス式敬礼をして「ハイル・ヒトラー」と叫ぶなど滑稽な存在として描かれている。同年の『Seein' Red, White 'N' Blue』(星条旗を見よ)も、海軍に志願したポパイとブルートが協力して大日本帝国軍のスパイを一掃するという内容で、クライマックスではアンクル・サムの拳が昭和天皇やアドルフ・ヒトラーを殴り飛ばすシーンもあった。相手側の日本にもポパイは知られており、1945年の桃太郎 海の神兵には、投降する彼そっくりな敵兵が登場するシーンがあった。
登場人物
- ポパイ(Popeye)
- 本作の主人公。カリフォルニア州サンタモニカ出身、一人称「俺」[注釈 4]。年齢は34歳。水兵(船乗り)のセーラー服姿でいつも口にパイプを銜えている、ひしゃげた顔の小男。両腕には錨の形の入れ墨をしている。普段は温厚かつお人好しであり、子供(特にポパイに似た四つ子の甥)に対する面倒見もいい。反面、美人に弱くだらしない一面を見せることもある。喧嘩が強く腕っ節が自慢だが、ブルートと正面からの殴り合いでは圧倒されることも多い。恋人オリーブを巡ってブルートといつも騒ぎを起こし、最初は自力で対応しようとするが、物語が終盤に近づいていよいよ危機的状況になると、缶詰に入ったほうれん草を食べて超人的なパワーを生み出し、ブルートをやっつける。ほとんどの場合、缶詰は缶きりを使わず、握り潰して開封し、ほうれん草を流し食いする。地面にほうれん草の種をまき、見る見る成長したほうれん草をちぎって食べたり、わかめを食べても超人的な力を発揮する場合がある(ポパイ曰く、「ワカメは海のほうれん草」)。自分で食べるだけでなく、おんぼろ自動車のガソリンにほうれん草を混ぜて超パワーを出したり、悪役に食べさせて獲得させた超パワーを逆手に取って倒すなどの応用を見せることもある。あるエピソードではほうれん草を自家栽培している姿も描かれている。
- 水兵(船乗り)以外にも、ボクサー、消防士、野球選手、アニメーター、登山家、保安官、冒険家、タクシードライバー、芸術家、木こり、私立探偵、レーサー、パイロット[要曖昧さ回避]、映画俳優、配管工、食堂の経営など、様々な仕事をこなしている。
- 服装は原作及びフライシャー・スタジオの中盤までは、いかにも船乗りらしい黒いセーラー服だったが、ポパイがアメリカ海軍に入隊する作品「ポパイの海軍入隊(The Mighty Navy)」(1941)以来は、海軍の制服である白いセーラー服を度々着用するようになり、フェイマス・スタジオでのポパイは白いセーラー服が定着している[注釈 5]。そしてセーラー服以外の服を着用する時は必ず、セーラー帽をかぶることがある。性格は原作やフライシャー・スタジオ時代では、野性味がある荒っぽい一面が目立っていたが、フェイマス・スタジオに変わってからは性格が都会的になり、フライシャー・スタジオ時代と比べて、かなり穏やかになった。困った時の口癖は「わぉ!なんてこったい!」。初代声優の浦野によると、TBS時代に翻訳を担当した平井イサクが訳しにくいスラング等をほぼ全て「わぉ!なんてこったい!」に統一してしまったのがポパイの決め台詞として定着していったとの事[7]。
- オリーブ・オイル(Olive Oyl)
- ポパイの恋人。ニューヨーク州ニューヨーク出身、年齢は29歳。痩せっぽちで決して美人とはいえない(フェイマス・スタジオ版では、そのエピソードで初対面設定のブルートやポパイが「大変な美人」と一目惚れするシーンも多い)が、牧場や店を興したりなどして自活しているしっかり者の女性。気が強いところもあり、ポパイがだらしない態度をとるとブルートへ浮気に走ることもあるが最終的にポパイのところに戻ることが多い。二人に振り回されて痛い目によくあう。彼女も缶詰のほうれん草を食べるとパワーが出せ、ポパイの代わりに危機的状況を打開したこともある。新シリーズではブルートに浮気する描写がほとんどなくなった。
- ブルート/ブルータス(Bluto/Brutus)
- ポパイの同僚の水兵で恋敵。カリフォルニア州ハリウッド出身、年齢は36歳。身長2メートルを越すヒゲ面の大男。ポパイ以上の腕っ節の強さを持つ。強引で手加減知らずの乱暴な性格だが悪知恵だけは働き、力押しが通用しない相手には搦め手で出し抜こうとする。物語冒頭ではポパイと仲良くしている事が多いが、オリーブに惚れており、ポパイから何とか奪い取ろうと画策しすぐに喧嘩を始める。最初はお人よしのポパイを騙して出し抜いたり、腕力で圧倒して危機的状況に陥れることが多いが、最後には必ずほうれん草を食べたポパイにやられている。容姿が似た別の悪役が彼のポジションを担うこともあり、女性役で出た回はポパイを自分のものにしようとしてオリーブにやられた。
- 定番の悪役だが根っからの悪人ではなく、時々、ポパイと協力して彼以外の悪役キャラクターに立ち向かう場面も見せている。ポパイとオリーブと同様、彼も缶詰のほうれん草を食べるとパワーが出せ、ポパイに気付かない内に食べさせられて超パワーを扱いきれず自滅したり、ポパイとの共闘時に食べて危機的状況を打開したこともあるが、新シリーズではほうれん草が嫌いという設定になった。
- ウィンピー(Wimpy)
- 太った中年男性。無類のハンバーガー好きで、いつも片手に食べかけのハンバーガーを持ち歩いている。ハンバーガー欲しさにポパイに金をせびる事も。本名はJ.ウェリントン・ウィンピー(J. Wellington Wimpy)。ポパイと同じく、カリフォルニア州サンタモニカ出身、年齢は34歳。彼の名にちなんだハンバーガーチェーン「ウインピー」が存在する。
- スウィーピー(Swee'Pea)
- ポパイが「養子にした」という[8] ませた赤ん坊。かなり賢く、言葉を話す。時折目を放した隙に危険な場所へ出歩き、騒動を起こしてはポパイ達を困らせている。実はデモニア国の皇太子という設定。
- 1980年実写映画版の設定では、スイートヘヴンの港町で暮らす老婆の家で育てられており、捨てられる直前は家でベビードレスを着せられ、頭にベビーボンネットをかぶせたあと、おくるみにくるんでクッションが入ったクーハンに入れて寝かせつけられ、寝てる間にベビードレスの胸元にピンセットで手紙がつけられ、哺乳瓶、がらがらも添えられた後、ふたで閉じられてしまう。その夜、オリーブのバスケットとすり替えられてしまい、事実上「捨て子」となってしまう。目が覚めた時は真っ暗で、クーハンのふたを開けようとするが、外側から閉じられており、なかなか開かなかった。それでも必死に開けてもらうようにがらがらを鳴らし続けていた。この後、ポパイが開けたとたんに手を出した時に目が合い、ポパイとオリーブと対面することになる。ポパイがベビードレスの胸元についていた手紙を読み、育ての老婆が病弱の為に育児が出来なくなってしまい赤ん坊を手放すことを知った時はあまりの悲しさに号泣した。その後はポパイやオリーブに拾われ、無事に育てられることになる。
- ジープ(Jeep、Eugene the Jeep)
- 犬に似たミステリアスな動物。超能力を持っており、瞬間移動や予言をしたりする。第2次世界大戦時にアメリカが開発した4輪駆動車「ジープ」の名は、ここから採られたという説もある[9]。英語版では本名「ユージーン・ザ・ジープ(ジープのユージーン)」。
- プープデック・パピー(Poopdeck Pappy)
- ずっと昔にポパイを捨てたというポパイの父。性格はポパイと正反対。「おじいちゃんポパイ(With Poopdeck Pappy)」(1940)でのポパイの台詞によると、年齢は99歳。
- 海の魔女シーハッグ(The Sea Hag)
- 海に棲んでいる魔女。ブルートと同じく敵役的な存在。いじわるな魔法を使って、ポパイたちを困らせようとしている。
- バーナード(Vulture)
- シーハッグが飼っている、巨大なハゲタカ。
- パパイ・ピパイ・プパイ・ペパイ(Pupeye、Peepeye、Poopeye、Pipeye)
- ポパイの甥。度々ポパイを困らせている。彼等もほうれん草を食べると超人的なパワーを出せる。
- アリス(Alice the Goon)
- 腕とすねが毛深い乱暴者の大女。ポパイのことが好き。
- ショーティー(Shorty)
- ポパイの海軍時代の友人で背が低く、丸眼鏡をかけている。
日本語吹き替え
※短編アニメなどでの担当声優を記載。長編での声優についてはそれぞれの項目を参照。
媒体 | ポパイ | オリーブ | ブルート/ブルータス | ウィンピー |
---|---|---|---|---|
テレビ(TBS) | 浦野光[10] | 京田尚子[11] | 熊倉一雄[12] | 明石一 |
テレビ(NHK) | 高松しげお | 山本嘉子 | 小松方正 | ? |
VHS(大陸書房版) | 緒方賢一 | 深見梨加 | 内海賢二 | 原田一夫 槐柳二 |
VHS(DRS版) | 肝付兼太 | すがのえみこ | 川村拓央 | 波多野和俊 |
VHS・LD(ハミングバード版) | 浦野光 | 山村美智子 篠塚まゆみ |
内海賢二 | 上田敏也 |
VHS(徳間ジャパン版) | 京田尚子 | 玄田哲章 | 小室正幸 | |
VHS(パック・イン・ビデオ版) | ||||
DVD(IVC版) | 長島雄一 | 水谷優子 | 島香裕 | 鈴木勝美 |
パチスロ ポパイ | 高木渉 | 三石琴乃 | 郷里大輔 | |
パチスロ ポパイ・ブリッド | 長島雄一 |
作品リスト
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不二家の時間
判明分
サブタイトル | 原題 | 日本放送日 |
---|---|---|
ポパイの空中戦 ??? ??? |
??? ??? ??? |
1962年7月1日 |
ポパイと原始人 あやつり人形恋騒動 ??? |
Caveman Capers ??? ??? |
1963年7月7日 |
赤ちゃん時代の思い出 海辺騒動 ??? |
??? ??? ??? |
1964年7月5日 |
ポパイの山の美人 | 1965年 1月3日 | |
インディアン | ||
不明 | ||
ポパイはお年頃 | 1月10日 | |
オリーブ・オイルの運転練習 | Wimmin Hadn't Oughta Drive | |
不明 | ||
電話のいたずら | 1月17日 | |
泣く子に弱い | ||
不明 | ||
オリーブの大統領 | Olive Oyl for President | 1月24日 |
あしたは結婚式 | Nearlyweds | |
不明 | ||
裏切られた友情 | 1月31日 | |
砂漠の冒険 | ||
不明 | ||
ポパイと魔術師 | A Balmy Swami | 2月7日 |
ポパイと闘牛師 | Bullfighter Bully | |
不明 | ||
火事場の大げんか | 2月14日 | |
助け合い運動 | ||
カーニバル騒動 | ||
飛行レース | 2月21日 | |
赤ちゃん騒動 | ||
不明 | ||
ポパイの親孝行 | 2月28日 | |
遊園地騒動 | ||
子どもたちの名演奏 | Riot In Rhythm |
注釈
出典
- ^ 1963年1月27日放送、ビデオリサーチ調べ、関東地区
- ^ 朝日新聞で判明(1968年2月24日の番組表より)
- ^ 「毎日新聞」で判明(未検証)。
- ^ カートゥーンネットワーク 1999年10月番組表
- ^ ケーブルテレビ完全ガイド HYOTAN 1998年8月号 (OCCN・大阪セントラルケーブルネットワーク 39頁) ※1998年8月13日 15時00分の放送。
- ^ 大野智、実写版「ポパイ」に、BARKS、2020年3月19日 4時0分。
- ^ 『僕らを育てた声 浦野光編』、密林社、p35より
- ^ popeye.com Swee'Peaの項
- ^ 監修:石川弘義ほか『アメリカンカルチャー : 日本の戦後にとってアメリカとは 1 ('45-50年代)』三省堂、1981年、156頁。 NCID BN01019440。
- ^ 『声優事典 第二版』キネマ旬報社、1996年、49頁。ISBN 4-87376-160-3。
- ^ 小川ぴい『こだわり声優事典'97』徳間書店、1997年、47頁。ISBN 4-19-720012-9。
- ^ 小川ぴい『こだわり声優事典'97』徳間書店、1997年、49頁。ISBN 4-19-720012-9。
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