ビグ・ザム ビグ・ザムの概要

ビグ・ザム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/01 08:40 UTC 版)

作中の軍事勢力のひとつであるジオン公国軍の試作機。大型機が多いMAのなかでも特に巨大で、円盤のような本体に1対の「脚」をもち、強力な火器を多数搭載する。公国宇宙攻撃軍司令ドズル・ザビとその部下たちが搭乗し、主人公アムロ・レイが所属する地球連邦軍と戦う。

本記事では、外伝作品などに登場するバリエーション機や発展型などについても記述する。

機体解説

諸元
ビグ・ザム
BIG-ZAM / BYG-ZAM
型式番号 MA-08
所属 ジオン公国
建造 ソロモン
全高 59.6m[3]
頭頂高 不明[3]/80m[4]
本体重量 1,021.2t[3]
全備重量 1,936.0t[3]250t[4]
装甲材質 超硬スチール合金[5]
出力 140,000kW[3]
(35,000kW×4[6][7]
(200,000馬力[8]
推力 580,000kg[3]
センサー
有効半径
134,000m[3]
最高速度 マッハ7[8]
武装 大型メガ粒子砲
メガ粒子砲×28[5]
クロー×6
105mmバルカン砲×2[5]
特殊装備 Iフィールドジェネレーター
搭乗者 ドズル・ザビ
マイヤー
ガルマ・ザビ(ギレンの野望)

ビグ・ザムは攻撃力重視のコンセプトを末端拡大化した産物であり、一年戦争において開発された戦術兵器では最大かつ最強と推察されている[9][注 1]。機体としては対要塞攻撃用[7]、要塞防衛用とされる[6]。メガ粒子砲やIフィールド発生器といった重武装を有するが、その一方で生産コストは1機でムサイ級二隻分と高騰。また、宇宙空間では冷却能力に課題が残り、最大稼動時間はわずか20分以下であった[7][注 2][注 3]

乗員はメインパイロット1人とサブオペレーター2人の3人。高度な操縦システムを有するため、コクピットの大きさは突撃艇並となっている[11][注 4][注 5]。また、脚部は歩行ユニットであるとともに質量移動による姿勢制御システムの一部であり、緊急時には切り離す事も可能である[6]

開発はア・バオア・クーで行われた。当初の計画では量産化および地上での運用が検討されており、ビグ・ザム1機につきムサイ1隻で運搬、ジャブローへ向け降下させたあとの、中隊規模の部隊編成による要塞の瞬時発見・殲滅という運用が期待されていた。実機がロールアウトしたのは初号機のみとされている[11]。量産型では大気圏突入能力、ミノフスキーフライトによる大気圏飛行と10時間以上の戦闘継続能力を有していたであろうと想像されている[7]

武装・装備

大型メガ粒子砲
主砲。機体中央部に装備。出力は13.9MW[6]「大型偏向メガ粒子砲」と記述した資料もみられる[7][6]。ドズルがテレビ版では「前部ビーム」、劇場版では「フロントビーム」と呼称。一撃で戦艦を撃沈可能[12][6]
メガ粒子砲
胴体部の全周に装備されており、MSの接近を阻む効果を持つ[6]。出力は2.1MW[6]
「対空用偏向型メガ粒子砲」と記述した資料もみられる[6]。砲門数を28とした資料[7][3][5]と、44とした資料[6]、26とした資料[13]が存在する。
105mmバルカン砲
2門装備される[5][3][注 6]
クロー
脚部に装備する射出式のクロー[11]。「対空防御ミサイル」[6]、「対空防御用クローランチャー」と記述した資料もみられる[5]。アニメーション作品『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』劇中ではスレッガーの搭乗するコアブースターをこれで撃破した。
Iフィールド・ジェネレーター
資料によって「Iフィールド発生器」「Iフィールド発生システム」[7]、「磁気バリアー」[11][注 7]、「対ビームバリヤー」とも[14]記述される。
これによってビグ・ザムは中長距離からのビーム兵器を完全に無効化する[5]。一方でフィールド内からのビーム攻撃は防げないほか実体弾兵器の攻撃に対しては高い防御力を持たない[5][注 8]
機動兵器としてはビグ・ザムではじめて搭載された[15]

劇中での活躍

テレビアニメ『機動戦士ガンダム』第35、36話および劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』中盤に登場。地球連邦軍によるジオン公国宇宙攻撃軍の本拠地・宇宙要塞ソロモンの攻略戦で活躍する。

テレビ版第35話で、ジオン公国のギレン・ザビより援軍としてア・バオア・クーからソロモンに送られる[12]が、ザビ家三男で宇宙攻撃軍司令官兼ソロモン司令官でもあるドズル・ザビは、「戦いは数だ」と逆に憤慨する[注 9]。本機は分解された状態でパプア級補給艦に積載され、ソロモンに到着。ただちに要塞内部のファクトリーで再組み立てが行われるが、ソロモン戦の序盤には間にあわず出撃はしない。

テレビ版第36話では、起死回生の一撃としてドズルら4人(操縦1、火器管制1、航法1、機長(ドズル)1)が搭乗し、先陣を切ってソロモンのジオン軍残存兵力を糾合して出撃するも、ソーラ・システム第二照射を受けて全艦隊の1/4に相当するソロモン残存艦隊を損失。急遽作戦変更してソロモンから撤退するジオン公国軍艦艇の時間稼ぎ役となる。要塞内部に侵入した連邦軍ソロモン侵攻部隊と交戦。ボールの主砲直撃に耐えたほか、ジムのビームスプレーガンを磁界(Iフィールド)によって反射し、メガ粒子砲で殲滅する。後、過剰な火力を要塞内部で使うことは味方の損害が大きいために要塞から出撃。ビーム砲による長距離攻撃で連邦軍宇宙艦隊のマゼラン級サラミス級を多数撃沈する。その中にはティアンム艦隊旗艦「タイタン」も含まれており、この戦いにおける連邦軍ソロモン侵攻部隊の司令官であるティアンム中将は戦死した。以上の戦果から、ドズルは「ビグ・ザムが量産の暁には連邦なぞあっという間に叩いてみせるわ」とうそぶく。

圧倒的な性能で連邦軍を返り討ちにするビグ・ザムだったが、Iフィールドジェネレーターによるバリアシステムはゼロレンジからのビーム攻撃を無効化できないという弱点を連邦軍パイロットスレッガー・ロウに見抜かれ、アムロ・レイの操縦するガンダムを乗せたGファイター(映画版ではコア・ブースター)に肉薄攻撃をしかけられる。迎撃によりスレッガー機は撃墜されるものの、分離したガンダムが至近距離からビーム・ライフルで攻撃。さらにビーム・サーベルで白兵戦を挑むという攻撃により撃破される。

小説版においてはソロモン工廠にてドズル主導の元で開発が行われたという設定であり、コレヒドール宙域に出撃したドズル艦隊の旗艦ガンドワに曳航されて出撃した。メガ粒子砲の数は16門とされ、Iフィールドは搭載されておらずビームライフルでダメージを負っている。ガンドワ艦隊に切り込んだアムロ隊を迎撃するべく出撃したが、ニュータイプとして覚醒したアムロ隊には歯が立たず、ジムにより片足を失うなど苦戦。その後特攻をかけたガンドワとの連携でジムを打ち落としたものの、直後にガンダムのビームライフルで撃破された。

漫画『THE ORIGIN』では、もともとドズルがジオンのMS開発を主導していたという設定になっており、本機も小説版同様ドズル自身の命により開発されている。スレッガーの特攻はビグ・ザムの足がコア・ブースター部分を握り潰し、その結果分離したコア・ファイターが特攻するかたちに変更されている。

劇場版Ζ機軸で描かれた漫画『機動戦士Ζガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのレポートより―』では、ジオン残党軍の所有機体がカラバと協力してティターンズキリマンジャロ基地攻略作戦に参加する。少なくとも8機が確認されており、かんじきを装着している。これらの機体は一年戦争アナハイム・エレクトロニクスに吸収された旧ジオン開発者たちの手によってキャリフォルニアベース周辺で密かに生産・完成されている。


注釈

  1. ^ 小規模の宇宙艦隊に匹敵する火力を有するともされる[10][2]
  2. ^ すべてのメガ粒子砲を稼働させるために大型反応炉を全開稼働させる都合上、燃料を消費するため15分前後とした資料も存在する[11]
  3. ^ 冷却能力の問題に加え、多数装備したメガ粒子砲を運用するため、メガコンデンサに充填する必要性があるために稼働時間は20分以下とした資料もみられる[6]
  4. ^ 一方で、ビグザムは操縦手、射撃手、索敵手の3名で操縦し、コンピュータの補佐により1名でも操縦可能とした資料もみられる[6]
  5. ^ テレビ版第36話においてはドズルは部下を脱出させ、1人でビグ・ザムを操縦し、敵艦隊に特攻した。
  6. ^ 資料によっては22門ともされる[2]
  7. ^ TV版第36話劇中では「磁界」、劇場版では「ビームバリア」と呼称される。
  8. ^ 通常兵器には効果がないとした資料もみられる[11]
  9. ^ ドズルはリック・ドム10機の方がよいと怒るが、彼はシャアを重用するキシリアへの対抗意識からソロモン戦直前にコンスコン機動部隊をホワイトベース戦に投入。巡洋艦4隻とリック・ドム18機を失っている。

出典

  1. ^ 「WORLD - MS」機動戦士ガンダム公式Web、創通・サンライズ
  2. ^ a b c 『データコレクション 機動戦士ガンダム 一年戦争編』メディアワークス1996年11月、41頁。ISBN 4-8402-0531-0
  3. ^ a b c d e f g h i 『ENTERTAINMENT BIBLE .1 機動戦士ガンダム MS大図鑑【PART.1 一年戦争編】』バンダイ、1989年2月20日、58-59頁。(ISBN 4-89189-006-1)
  4. ^ a b 『テレビマガジン』1981年3月号付録『機動戦士ガンダム大事典』下巻(講談社)
  5. ^ a b c d e f g h 『機動戦士ガンダム MS大全集2015』メディアワークス、2015年6月発売、295頁。(ISBN 978-4048650960)
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m 『ENTERTAINMENT BIBLE .1 機動戦士ガンダム MS大図鑑【PART.1 一年戦争編】』バンダイ、1989年2月20日、86-87頁。(ISBN 4-89189-006-1)
  7. ^ a b c d e f g 『ガンダムセンチュリー』みのり書房、1981年9月、銀河出版、2000年3月(復刻版)、54-56頁。ISBN 4-87777-028-3
  8. ^ a b 『講談社ポケット百科シリーズ15 ロボット大全集1 機動戦士ガンダム』(1981年)
  9. ^ 『機動戦士ガンダム モビルスーツバリエーション(2) ジオン軍MS・MA編』講談社、1984年4月30日、2006年7月(復刻版)、50頁。ISBN 978-4063721768
  10. ^ 『ENTERTAINMENT BIBLE .1 機動戦士ガンダム MS大図鑑【PART.1 一年戦争編】』バンダイ、1989年2月20日、126頁。(ISBN 4-89189-006-1)
  11. ^ a b c d e f 『機動戦士ガンダム モビルスーツバリエーション(2) ジオン軍MS・MA編』講談社、1984年4月30日、2006年7月(復刻版)、140-143頁。ISBN 978-4063721768
  12. ^ a b 機動戦士ガンダム公式Web「メカ-ジオン軍-ビグ・ザム」
  13. ^ 『機動戦士ガンダム宇宙世紀 vol.2 大事典編』ラポート、1998年9月、73頁。(ISBN 4-89799-294-X)
  14. ^ 『機動戦士ガンダム MS大全集2003』メディアワークス、2003年4月、119頁。ISBN 4-8402-2339-4
  15. ^ 「052 ビグ・ザム」『機動戦士ガンダムMSV COLLECTION FILE 宇宙編』講談社、1999年11月。(ISBN 4-06-346550-0)
  16. ^ a b c d e f g h i ガンダムエース06 2023, p. 531-533, 「0083 REBELLION PLAY BACK 01」.
  17. ^ トレーディングカードアーケードゲーム『ガンダムトライエイジ』BPR-034「ビグ・ザム(アクシズ仕様)」裏書より。
  18. ^ 毎弾好評のトライエイジオリジナルMSの裏話が満載!「ガンダムトライエイジ BUILD G1弾」特集【第4回】”. GUNDAM.INFO (2014年10月2日). 2018年7月3日閲覧。
  19. ^ 『SDガンダム ジージェネレーションウォーズ 公式コンプリートガイド』バンダイナムコゲームス、2009年9月、468頁。
  20. ^ a b c 『SDガンダム GGENERATION-0 ガイドブック』アクセラ、1999年7月、133頁。
  21. ^ 『SDガンダム ジージェネレーションワールド 公式コンプリートガイド』バンダイナムコゲームス、2011年3月、494頁。
  22. ^ 『SDガンダム GGENERATION-0 設定解説ファイル』ローカス、2000年1月、109頁。
  23. ^ 『SDガンダム GGENERATION-0新聞』勁文社、1999年10月、49頁。
  24. ^ 『ガンダムエース』2017年7月号、角川書店、436頁。
  25. ^ a b c d e f g AOZ ReBoot57 2018.
  26. ^ AOZ ReBoot69 2021.
  27. ^ a b c d e f g h 「ムーンガンダム メカニカルワークス Vol.27 ギガッザム」『月刊ガンダムエース』、KADOKAWA、2021年8月、212-213頁、JAN 4910124010815。 
  28. ^ a b MJ03 1989, p. 43, 「MS90'S」.
  29. ^ a b c d e f g h 『機動戦士ガンダム MS大全集2003』メディアワークス、2003年4月、89頁。ISBN 4-8402-2339-4
  30. ^ 『機動戦士ガンダム MS大全集2003』メディアワークス、2003年4月、199・200頁。ISBN 4-8402-2339-4






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