パルプ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/01 04:32 UTC 版)
種類
パルプは原料の違いから主に木材パルプと非木材パルプに大別される。また既に紙にしたものを回収して原料とした古紙パルプに対して、木材や非木材から直接作られたパルプをバージンパルプと呼ぶ場合がある。
木材パルプ
一般に木材の幹の樹皮を取り除き、そのまま、あるいは小片(チップ)化したものを機械的、半化学的、化学的に処理して製造される。原料の木材として成長が早くパルプ化に適した樹種や品種を選定し植林して計画的に得られる植林木の利用比率が高まっている。
- N材(Nadelholz/ナーデルホルツ)
- 針葉樹(ドイツ語で Nadelbäume という)を原料とする。繊維が長く、丈夫なパルプが生産できる。但し、針葉樹は成長が遅い、生育地域が限定されるなどの要因がある。モミ、マツなどがよく使われる。
- L材(Laubholz/ラオプホルツ)
- 広葉樹を原料とする。繊維が短く、キメの細かいパルプが生産できる。強度はN材に劣る。ユーカリ、ポプラなどがよく使われる。
非木材パルプ
非木材パルプは木材パルプに比べて一般に繊維が長く、白色度が低めである。多様な種類があるが、その特性を生かして和紙や薄手の特殊紙に利用されることが多い。木材パルプに比べ、原料の集荷集積が効率的ではなく、大規模な製造もされていないため、一般に木材パルプよりも高価となっている。和紙に使うコウゾ、ミツマタなどの植物は機械による大量生産にはほとんど用いられない。
- ワラパルプ
- イネ科麦藁・稲藁などが原料となる。麦[1]・米の収穫後に供給が始まるが、収穫期以外は供給されないという欠点がある。また、生産地域、土壌、麦・米の品種によって品質が大きく変動するので、同じ品種の麦・米や生産地域からの原料集積によって生産することが望ましい。
- バガスパルプ
- イネ科サトウキビの絞りかす(製糖残渣)を原料とする[2][3]。熱帯では安定供給が可能であるが、地域によっては季節要因によりサトウキビが取れない時期は供給がストップする。
- ヨシパルプ
- イネ科のヨシを採取して原料とする[4]。中国湖南省などで実用的に使われているほか、日本の滋賀県などで宣伝的に使われている[5][6]。
- ケナフパルプ
- アサ科のケナフを採取して原料とする。
- クワパルプ
- 養蚕に使うクワ科のクワの枝を副次的に原料とする。中国広西チワン族自治区などで実用化されている。
- 果実パルプ
- オレンジ、ミカン、グレープフルーツ、リンゴなどの柑橘類の中果皮、さのうの膜、じょうのうなどの繊維質。
古紙パルプ
古紙や裁落(さいらく)を原料とするパルプ。脱墨したものをDIP(De-Inked Pulp)と呼ぶ。原料である古紙を水に溶解し、機械的な力や重力、界面活性剤などの薬品を利用して紙繊維以外の異物(金属やフィルム、粘着性樹脂、印刷インキ、コピートナーなど)を分離・除去する。さらに用途に応じて白さを高めるよう漂白処理を加え、脱水・乾燥し紙原料の古紙パルプとなる。
古紙は回収量、ルート、紙の種類、分別状態などによってその供給能力や品質・利用用途・価格などが大きく左右される。環境への負荷を下げるためには、回収ルートを確立して、利用率を上げるべきであるが、再処理の過程で環境的な負荷の発生は避け得ず、より適切な古紙の回収や古紙処理の方法を探ることが今後も必要と言える。
- ^ “小麦わらパルプ”. www.jrsj.jp. JRS(レッテンマイヤージャパン株式会社). 2023年6月24日閲覧。
- ^ “Panoco バガスパルプ事業部”. www.panoco.co.jp. 2023年6月24日閲覧。
- ^ “サトウキビからバガスパルプができるまで”. 五條製紙株式会社. 2023年6月24日閲覧。
- ^ “ヨシとは”. 株式会社オギノ. 2023年6月24日閲覧。
- ^ “琵琶湖ヨシ紙”. www.alphath.jp. 2023年6月23日閲覧。
- ^ “琵琶湖畔のヨシでノート作り、コクヨが京都・滋賀で販売”. ITmedia エンタープライズ. 2023年6月23日閲覧。
- ^ 樺太林業史編集会 『樺太林業史』 p34 1960年(昭和35年) 農林出版株式会社
- ^ “2004年(平成16年)1 - 12月度こうして倒産した・・・”. 東京商工リサーチ. 2020年11月11日閲覧。
- ^ アマゾンで植林・チップ生産輸出事業に取り組む(2010年(平成22年)) - 日本ブラジル中央協会 2020年(令和2年)11月11日閲覧
- ^ 地理 統計要覧 2014年(平成26年)版 ISBN 978-4-8176-0382-1 P,101
- ^ “森の恵み生かし、牛を元気「モリモリ」にする製紙工場…余ったパルプで飼料生産” (2023年12月14日). 2024年1月1日閲覧。
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