タツノオトシゴ 構成種

タツノオトシゴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/09 20:10 UTC 版)

構成種

ヨウジウオ科タツノオトシゴ属は1属のみでタツノオトシゴ亜科 Hippocampinae を構成し、50種類ほどが知られる。ヨウジウオ科ヨウジウオ亜科にもタツノイトコリーフィーシードラゴンなどの類似種が多いが、首が曲がっていないこと、尾鰭があること、尾をものに巻きつけないことなどの差異で夫々タツノオトシゴ属と区別できる[4]

タツノオトシゴ属は外見が互いに似る上に個体変異も大きいため同定が難しく、21世紀に入ってもなお新種が報告されている。これらの同定は体輪数(体を覆う環状甲板の数)、頭部突起の長さ、体の各所にある棘、胸鰭や背鰭の鰭条数などで区別している。以下はFishBaseに掲載されている構成種である[5]

日本近海産8種

タツノオトシゴ(竜の落とし子) Hippocampus coronatus Temminck et Schlegel, 1850
全長10cmほど。躯幹部体輪数10・尾部体輪数38-40・背鰭条数12-15で、躯幹部体輪数と背鰭条数が他種より少ない。頭頂部の突起が比較的高いのも特徴だが、低い個体もいる。また、ハナタツと同様に全身に海藻のような枝状突起をもつものもいる。体色は黄・茶・赤・黒など個体変異に富む。北海道南部以南の日本各地と朝鮮半島南部沿岸に分布し、沿岸の藻場に生息する[4][5]
ハナタツ(花竜) Hippocampus sindonis Jordan et Snyder, 1901
エンシュウタツ(遠州竜)とも呼ばれる。全長9cmほど。全身に海藻のような枝状突起があるが、これはタツノオトシゴにも見られることがある。背鰭付け根の突起が大きい。西日本と朝鮮半島南部沿岸に分布する[3][5]
サンゴタツ(珊瑚竜) Hippocampus mohnikei Bleeker1853
全長8cmほど。躯幹部体輪数11・尾部体輪数38-40・背鰭条数16-17。日本産他種に比べて体表の凹凸が低く、吻も短い。体色は褐色-黒色。北海道南部-九州と中国沿岸に分布し、内湾のアマモ場に多く生息する。学名は H. japonicus Kaup1856 とした文献もあるが、こちらはFishBaseではシノニムとされている[4][5]
イバラタツ(茨竜) Hippocampus histrix Kaup1856
全長17cmに達する。躯幹部体輪数11・尾部体輪数33-34・背鰭条数17-19。日本産他種に比べて吻が長く、和名通り体表に短い棘が列生する。体色は淡黄褐色で棘の先は黒い。インド太平洋の熱帯域に広く分布し、日本では伊豆半島紀伊半島でみられるが数は少ない。海岸からやや離れた水深20-40mの砂底や岩礁域に生息する[4][5]
タカクラタツ (高倉竜) Hippocampus trimaculatus Leach1814
全長22cmに達する。躯幹部体輪数11・尾部体輪数41・背鰭条数21。目の上と鰓蓋下に棘があるので他種と区別できる。頭頂部の突起は低く、背側面に3対の暗色斑があるが、斑点は不明瞭な場合が多い。体色は灰褐色だが濃淡は個体変異が大きい。西太平洋から東インド洋の熱帯・亜熱帯域に分布し、日本では本州以南の沿岸域に分布する。沿岸の藻場や砂礫底に生息する。学名は H. takakurae Tanaka1916 とした文献もあるが、FishBaseではシノニムとされている[4][5]
クロウミウマ(黒海馬) Hippocampus kuda Bleeker1852
全長30cmに達する大型種。躯幹部体輪数11・尾部体輪数34-38・背鰭条数17-18。吻が比較的長い。体色は黄色や褐色だが濃淡は個体変異に富む。日本の南西諸島沿岸を含むインド太平洋の熱帯域に分布する。他種と同様に沿岸浅海で見られるが、日本産タツノオトシゴ類の中では唯一汽水域にも進入し、マングローブでも見られる。ただし文献では後述のオオウミウマとの混同も見られる[4][5][6]
オオウミウマ(大海馬) Hippocampus kelloggi Jordan et Snyder, 1901
全長30cmに達する大型種。躯幹部体輪数11・尾部体輪数39-41・背鰭条数17-19。吻が長く、頭頂部の突起は小さい。体色は黄色-黒褐色で変異に富み、小黒点や斑点を帯びることもある。インド太平洋熱帯域に分布し、日本では伊豆半島以南の沿岸域に分布する。産卵期は春から夏で、産出する稚魚は600尾に達することもある[4][5]
(和名なし)Hippocampus severnsi Lourie et Kuiter, 2008
全長1.7cmの小型種。躯幹部体輪数12・尾部体輪数27・背鰭条数14。南西諸島を含む西太平洋熱帯域の各地で記録されている。沿岸の水深8-20mに生息する[5]

注釈

  1. ^ 英語での呼び名は「ポットベリード・シーホース pot bellied seahorse 」(太鼓腹のタツノオトシゴ)以外に、「ポットベリー・シーホース pot belly seahorse 」(同じ)、「ビッグベリー・シーホース big belly seahorse 」(大きなお腹のタツノオトシゴ)があり、英語版ウィキペディアでは "Big-belly" が採用されている。2012年2月のIUCNのレッドリストでは、Big-belly Seahorse と Pot-bellied Seahorse とが採用されている。また中国語ではこの種を「膨腹海馬」という。

参考文献

  1. ^ a b c d e f g h タツノオトシゴの仲間”. 沖縄市. 2019年12月5日閲覧。
  2. ^ a b c d 蒲原稔治著・岡村収補訂『エコロン自然シリーズ 魚』1966年初版・1996年改訂 保育社 ISBN 4586321091
  3. ^ a b c d 檜山義夫監修『野外観察図鑑4 魚』1985年初版・1998年改訂版 旺文社 ISBN 4010724242
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m 岡村収・尼岡邦夫監修『山渓カラー名鑑 日本の海水魚』(解説 : 渋川浩一)1997年 ISBN 4635090272
  5. ^ a b c d e f g h i Family Syngnathidae - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2010.FishBase.World Wide Web electronic publication.www.fishbase.org, version (07/2010).
  6. ^ 川那部浩哉・水野信彦・細谷和海編『山渓カラー名鑑 改訂版 日本の淡水魚』(解説 : 瀬能宏)1989年初版・2005年第3版 ISBN 4635090213


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