ガーナ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/02 23:44 UTC 版)
国家安全保障
ガーナ軍(GAF)は地上軍と海軍、空軍の3つで構成されている。また、同国では国境警備隊が配備されており、警備隊の最高軍事司令官は同国軍と同じく大統領が兼任している。
地理
ギニア湾に面しており、ヴォルタ川流域の低地が国土の大半を占めるため、最高標高点は885メートルに過ぎない。ヴォルタ川水系の面積は国土面積の77%を占める。特に1965年にヴォルタ川をせき止めて作ったアコソンボダムが有名。自然湖としてボスムトゥイ湖が存在している。
気候的には全土が熱帯に属する。西部州やアシャンティ州をはじめとする南西部は熱帯モンスーン気候(Am)に属し、多量の降雨に恵まれて熱帯雨林が広がっている。ガーナ経済を支えるカカオはおもにこの地域で栽培される。海岸部でも首都アクラを中心とする東部は降水量が少なく、サバナ気候(Aw)に属する。中部から北部にかけてもサバナ気候に属し、サバンナが広がる。北に行くほど降水量は少なくなり、乾燥の度合いが強くなるが、少ない地域でも1,000ミリ前後の降水量はある[15]。
地方行政区分
ガーナは2018年以降16州(region)から構成されている。
- アハフォ州(Ahafo)
- アシャンティ州(Ashanti)
- ボノ州(Bono)
- ボノ・イースト州(東ボノ州、Bono East)
- セントラル州(中央州、Central)
- イースタン州(東部州、Eastern)
- グレーター・アクラ州(大アクラ州、Greater Accra)
- ノース・イースト州(北東州、North East)
- ノーザン州(北部州、Northern)
- オティ州(Oti)
- サバンナ州(Savannah)
- アッパー・イースト州(上東州、Upper East)
- アッパー・ウエスト州(上西州、Upper West)
- ヴォルタ州(Volta)
- ウェスタン州(西部州、Western)
- ウェスタン・ノース州(北西部州、Western North)
主要都市
最大都市は南部海岸にある首都のアクラである。第二都市であるクマシは旧アシャンティ王国の首都であり、英領となったあともカカオなどこの地域の物産の集散地として栄えた。南部海岸にあるセコンディ・タコラディも植民地時代からの都市であり、深水港を持つ。北部の中心都市はタマレである。
経済
2013年のガーナのGDPは約442億ドルであり[16]、長崎県とほぼ同じ経済規模である[17]。同年の一人当たりのGDPは1,729ドルであり、世界平均の2割程度で世界的に下位に留まっているが、近年は原油の商業生産が始まったことにより経済成長も著しい。
経済は農業・鉱業などなどの一次産業に依存し、特にカカオは世界有数の産出量を誇る。独立直後から債務超過に悩んでいたが、1983年以降、構造調整を実施して経済の再建に取り組んだ結果、1980年代後半から平均5%のGDP成長率を達成しアフリカにおける構造調整の優等生として評価されてきた。
2000年代に入ると金やカカオの国際価格の低迷、主要輸入品である原油価格の高騰などにより経済は低迷。2001年3月、拡大HIPC(重債務貧困国)イニシアティブ適用による債務救済申請を行う政策転換を行い、経済再建へ向けた努力を行っている。その結果、マクロ経済状況は改善、安定してきている。
鉱工業
ガーナ最大の輸出品は金であり、2013年度には総輸出額の42.6%を占めた[14]。金は古くからこの地域の特産品であり、アシャンティ王国の隆盛を支えた。植民地時代の黄金海岸(ゴールド・コースト)の名もこれに由来している。かつては原油の純輸入国であったが、2007年6月から沖合で油田がいくつか発見され[18]、2010年以降ガーナは原油の輸出国へと転じた。2013年には原油輸出は総輸出額の23.8%を占め、ガーナ第2の輸出品となっている[14]。
電力はアコソンボダムによる大規模な水力発電が行われており、総発電量のうち水力の割合は6割強を占める。この電力はトーゴやベナン、コートジボワールに輸出されており[19]、テマ市ではこの電力によるアルミニウム精錬も行われている。しかし水力発電は旱魃に弱く、また近年の経済成長と送電網の不備により電力不足がたびたび生じている[20]。
近年、金やダイヤモンドなどの詐欺事件が多発し、対策として高価値鉱物マーケティング公社(PMMC)という公的機関も設立されているが、公的機関の書類自体も偽造されている場合があり注意が必要である[21]。2000年代後半には金の価格が高騰し、関連産業も賑わいを見せるようになったが、次第に中国人が流入した。2013年には3万人とも5万人とも推定される労働者(鉱夫)が違法労働を行うようになり、当局に検挙される事例が増えている[22]。
2020年、フォルクスワーゲンがガーナに進出して自動車組み立て工場の建設に着手。年間生産量は5000台を計画しているが、2019年のガーナの新車登録台数は5700台となっており、余剰生産分は周辺国などへの輸出が検討されている[23]。
農林業
カカオ豆は、1879年にテテ・クワシによって導入されたのち栽培が順調に拡大し、1911年にはガーナは世界最大の生産国となった。その後も植民地期を通じてカカオはガーナ最大の産業であり続け、1960年代中盤までその地位は揺らがなかった。しかし独立後のカカオ政策の混乱と価格低落によって生産量は急減し、コートジボワールに生産量1位の座を明け渡すこととなった。その後生産量は回復し、2013年度には生産世界第2位、ガーナ総輸出額の10.9%を占めた[14]。
カカオ豆の生産は、ほとんどが貧困にあえぐ零細農家の手により行われており、農地(焼畑農業)拡大のための場当たり的な森林伐採、児童労働の誘発など環境や社会経済に大きな影響を与えている。2019年11月、アフリカへの投資フォーラムへ出席したナナ・アクフォ=アド大統領は、コートジボワールとともに豆の価格管理を進めることを発表した。演説の中で「チョコレート産業は1,000億ドル規模だが、農家が労働と引き換えに手にする額は60億ドルにすぎない」として農家への還元を求めた[24]。
農林産品としてはこのほか、カシューナッツや木材の輸出もある。自給用作物としては、キャッサバ・ヤムイモ・タロイモの生産が世界10位以内となっている[14]。
1990年時点の森林率は42%であるが[25]漸減傾向にある。これは木材生産量の95%が国内向けの燃料用材となっており、大規模な伐採が続いているためである[26]。
2022年デフォルト
2022年12月19日、ガーナは経済危機に見舞われ、事実上のデフォルト(債務不履行)に陥った[27]。
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- ^ “ガーナ大統領選 野党候補の元外相が当選”. 産経新聞. 共同通信. (2016年12月10日). オリジナルの2019年4月14日時点におけるアーカイブ。 2021年8月31日閲覧。
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- ^ “ガーナ 安全対策基礎データ 「犯罪発生状況、防犯対策」”. 海外安全情報. 外務省 (2020年1月27日). 2021年8月31日閲覧。
- ^ “ガーナで中国人大量逮捕 身勝手すぎる理由とは?”. NewSphere. (2013年6月11日) 2021年8月31日閲覧。
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- ^ 「チョコレート産業 甘み少ない農家」『読売新聞』2020年2月28日6面
- ^ 日本林業技術協会『森林・林業百科辞典』p777 丸善 2001年 全国書誌番号:20184122
- ^ “ガーナ国移行帯地域森林保全管理計画調査”. JICA (1999年). 2021年6月30日閲覧。
- ^ “ガーナが事実上のデフォルト、大半の対外債務支払いを停止”. ロイター通信. 2022年12月20日閲覧。
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- ^ Relationship: Ghanaian women rejecting men with ‘scary’ names, 2 Oct 2015, GhanaWeb.
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- ^ 高根 & 山田 2011, pp. 151–152
- ^ 高根 2003, pp. 162–168
- ^ ハリル率いるモロッコ、カメルーン、チュニジアがW杯へ 出場5カ国決定/アフリカ最終予選サッカーキング 2022年3月30日
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