オーロックス オーロックスの概要

オーロックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/26 21:12 UTC 版)

オーロックス
保全状況評価[1]
EXTINCT
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
下綱 : 真獣下綱 Eutheria
上目 : ローラシア獣上目 Laurasiatheria
: 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
亜目 : ウシ亜目(反芻亜目) Ruminantia
: ウシ科 Bovidae
亜科 : ウシ亜科 Bovinae
: ウシ属 Bos
: オーロックス B. primigenius
学名
Bos primigenius Bojanus, 1827
シノニム

Bos mauretanicus Thomas, 1881
Bos namadicus Falconer, 1859

和名
オーロックス
英名
Aurochs、Urus
下位分類群(亜種
本文を参照

形態

体格は体長約250–310 cm、体高約140–185 cm、体重約600–1000 kg。体色はオスが黒褐色または黒色、メスは褐色は大きく滑らかで、長さは80 cmほどとされる。

名称

英語でこの動物をさす名称として使われるものに "aurochs" や "urus" があるが、前者はこの動物を指すドイツ語に、後者は同じくラテン語に由来する。600年頃のセビリアイシドールス大司教によれば、"urus" はを意味するギリシャ語όροςに由来するという[2]。また、本来はバイソンをさす "wisent" という誤称もよく使われるが、バイソンとオーロックスは非常に古くから混同されてきた事実がその背景にある。ユリウス・カエサルガリア遠征のさいにオーロックスを「ゾウよりはいくぶん小さく、姿形や色はウシによく似ている」と記述した頃にはバイソンとオーロックスはそれぞれ "bonasus"、 "urus" として明確に区別されていたが[3]、それから約1世紀後の大プリニウスの『博物誌』ではすでに「人々がバイソンとオーロックスを混同する」と嘆いている[4]。この傾向はバイソンとオーロックスが双方とも個体数を減らしどんどん身近でなくなることで拍車がかかり、ついには両者が別の動物であることすら忘れ去られるに至る[5]

また学名としては、家畜種は野生種の学名を使うという慣習から、かつて Bos taurus という学名を与えていた家畜牛と、おなじく学名をBos indicus とされたコブウシについては、その祖先であるオーロックスとおなじ Bos primigenius という学名を使用する傾向にある[6]。特に家畜種を指すと明確にしたい場合には亜種として B. p. taurusB. p. indicus とするか、旧例通り Bos taurusBos indicus とする。学名として家畜牛に与えられた Bos taurus とオーロックスの Bos primigenius ではより古い名称は Bos taurus であるため、両者が同一種とされた場合の学名の優先権は本来ならば Bos taurus にあった。しかし、野生種に家畜種の学名を持ち込むことは大きな混乱を引き起こすと判断されたため、2003年動物命名法国際審議会が強権を発動し、優先権は Bos primigenius が持つこととなった[7](Opinion 2027)。

下位分類

オーロックスとステップバイソンの交配とヨーロッパバイソンに至る遺伝上の系譜図

絶滅したオーロックスには、次の3亜種があったとされている。これらは、上記の亜種としての家畜種とは別である。

ウシ科の動物は自然界においても別種同士で繰り返し交配してハイブリッドを生み出してきた経緯があり、各種の遺伝上の系統や関係を明瞭にする事が困難になっている[8]。例えばヨーロッパバイソンコーカサスバイソンは北米に流入したステップバイソンの子孫がユーラシア大陸に復帰した後に、雌のオーロックスとの間になしたハイブリッド種「ヒッグスバイソン」(ヒッグス粒子の英語名 Higgs Boson に掛けた命名)の子孫であるとされる[9][10][11][12]


  1. ^ スウェーデン王立武器庫の収蔵品に、最後のオーロックスの角で作ったという酒盃がある。

出典

  1. ^ Tikhonov, A. (2008). "Bos primigenius". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2008. International Union for Conservation of Nature. 2008年1月5日閲覧
  2. ^ 世界動物発見史 1988, p. 145.
  3. ^ 地上から消えた動物 1983, p. 57.
  4. ^ 地上から消えた動物 1983, p. 59.
  5. ^ 世界動物発見史 1988, p. 147.
  6. ^ 動物大百科4 1986, p. 112.
  7. ^ ICZN (31 March 2003). “Opinion 2027 (Case 3010): Usage of 17 specific names based on wild species which are pre-dated by or contemporary with those based on domestic animals (Lepidoptera, Osteichthyes, Mammalia): conserved”. Bulletin of Zoological Nomenclature 60 (1): 81–84. https://www.biodiversitylibrary.org/page/34357823#page/97/mode/1up. 
  8. ^ Buntjer, J B; Otsen, M; Nijman, I J; Kuiper, M T R; Lenstra, J A (2002). “Phylogeny of bovine species based on AFLP fingerprinting” (英語). Heredity 88 (1): 46–51. doi:10.1038/sj.hdy.6800007. PMID 11813106. 
  9. ^ Soubrier, Julien; Gower, Graham; Chen, Kefei; Richards, Stephen M.; Llamas, Bastien; Mitchell, Kieren J.; Ho, Simon Y. W.; Kosintsev, Pavel et al. (18 October 2016). “Early cave art and ancient DNA record the origin of European bison” (英語). Nature Communications 7: 13158. doi:10.1038/ncomms13158. ISSN 2041-1723. PMC 5071849. PMID 27754477. オリジナルの2017-04-19時点におけるアーカイブ。. https://www.nature.com/articles/ncomms13158. 
  10. ^ The Higgs Bison - mystery species hidden in cave art” (英語). The University of Adelaide (2016年10月19日). 2017年1月13日閲覧。
  11. ^ Palacio, Pauline; Berthonaud, Véronique; Guérin, Claude; Lambourdière, Josie; Maksud, Frédéric; Philippe, Michel; Plaire, Delphine; Stafford, Thomas et al. (2017-01-01). “Genome data on the extinct Bison schoetensacki establish it as a sister species of the extant European bison (Bison bonasus )” (英語). BMC Evolutionary Biology 17 (1): 48. doi:10.1186/s12862-017-0894-2. ISSN 1471-2148. PMC 5303235. PMID 28187706. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5303235/. 
  12. ^ Marsolier-Kergoat, Marie-Claude; Palacio, Pauline; Berthonaud, Véronique; Maksud, Frédéric; Stafford, Thomas; Bégouën, Robert; Elalouf, Jean-Marc (2015-06-17). “Hunting the Extinct Steppe Bison (Bison priscus ) Mitochondrial Genome in the Trois-Frères Paleolithic Painted Cave” (英語). PLOS ONE 10 (6): e0128267. doi:10.1371/journal.pone.0128267. ISSN 1932-6203. PMC 4471230. PMID 26083419. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4471230/. 
  13. ^ Telefon (2011年5月18日). “Bos primigenius” (英語). www.nhm.uio.no. オスロ: Naturhistorisk museum(オスロ大学付属自然史博物館). 2020年7月31日閲覧。
  14. ^ 動物大百科10 1987, p. 30.
  15. ^ 黒沢弥悦(奥州市牛の博物館)「モノが語る牛と人間の文化 ②岩手の牛たち」(pdf)『LIAJ News』第109号、家畜改良事業団、2008年3月25日、29-31頁。 
  16. ^ 高橋啓一, 楊平, 2019年, 中国黒竜江省ハルビン市周辺のマンモス動物群を訪ねて-中国東北地域の後期更新世哺乳動物群から日本のマンモス動物群を考える, 化石研究会会誌, Vol.51(2), 第43-52頁, 化石研究会
  17. ^ 絶滅動物データファイル 2002, p. 184.
  18. ^ 知られざる歴史:ナチスは絶滅種の動物を復元するプロジェクトを行い、それを成功させていた。”. カラパイア. 2020年7月31日閲覧。
  19. ^ 野生絶滅から1世紀、欧州のバイソン再野生化へ:オランダで4頭を野生復帰、現代に調和した新しい「野生」目指す”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 日経ナショナル ジオグラフィック社 (2016年3月28日). 2020年7月31日閲覧。


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