基準振動
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/21 09:34 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動基準振動(きじゅんしんどう、Normal Vibration、Normal mode)とは、さまざまな振動の基本となっている、特定の単振動のことである。
基準モード、ノーマル振動、ノーマルモードなどと呼ばれることもある。
概要
自由度が 2 以上である系の、平衡状態からの変位を表す一般化座標をq 1 , q 2 , ... , q n とすると、運動エネルギーT およびポテンシャルエネルギーV は(平衡状態を基準にして)
- (qの3次以上の項)
と表せる。V にq の一次の項がないのはでが平衡状態だからである。系が振動系で |qi | があまり大きくならないとき(微小振動)を考えるとq の 3 次以上の項は省略できるから、T もV も二次形式になる。変換Q i :
によって新しい一般化座標Q 1 , Q 2 , ... , Q n へ変換した時に、T もV も標準型
に変換される場合には、と置くと、系は
にしたがって単振動するn 個の独立な調和振動子の集まりと同等である。このQ 1 , Q 2 , ... , Q n を基準座標と呼び、それらが表す単振動を基準振動(あるいは規準振動)、ν1 /2π , ν2 /2π , ... , νn /2π を規準振動数という。つまり基準座標は、その基準振動の振幅である。
Q i は一般にq 1 , q 2 , ... , q n の一次結合であるから、その振動は特定の振幅比でq 1 , q 2 , ... , q n がそろって振動数νi /2π の単振動を行う集団運動である。その振幅比が決める振動の様式に着目した場合に、規準振動を基準モードあるいはノーマルモードと呼ぶことがある。連続体の振動は波動方程式に境界条件を課して解けば得られるが、それは定常波の重ね合わせで表されるので、定常波が基準振動に対応する。連続体では基準振動の種類は無限個である。
基準座標の求め方
運動エネルギーT と位置エネルギーVは2次形式なので、対称行列で表せる。この2つの対称行列は、合同変換によって同時に対角化できる。このとき新たに変換された座標(基底)が基準座標である。[1]
分子振動
分子振動では、n 原子分子の自由度 3n から並進運動と回転の自由度を除いた 3n - 6(直線分子では 3n - 5 )が振動の自由度で、基準振動の個数もこれと同数になる。分子に対称性がある場合、基準振動も対称性をもつので、それに従って基準振動を分類する。
原子核の振動
原子核の集団運動のうち、振幅が小さくて非調和・非線形の効果が小さい振動モードは、基準振動とみなすことが出来る。これらを微視的に記述する方法に、新タム‐ダンコフ近似がある。
参考文献
- 『物理学辞典』 培風館、1984年
脚注
- ^ 今野豊彦 『物質の対称性と群論』 共立出版、2001年。ISBN 4-320-03409-0
基準座標(基準振動)
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詳細は「基準振動」を参照 基準座標とは、一般的な振動を表現するときに、振動のエネルギー固有値を与える変位の座標である。この基準座標は一般的な原子核の運動の座標(平衡位置からの変位の座標)を一次変換することにより得られる。たとえば、水分子 H2O(振動の自由度は 3×3−6 = 3個)の基準座標は、二つの O-H の核間距離がともに伸びたり縮んだりする対称伸縮振動(v1)、H-O-Hのなす角が変わる変角振動(v2)、二つの O-H の核間距離が一方は伸び一方は縮むという非対称伸縮振動(v3)の3つがある。 基準座標を求める方法としては、分子内部座標から基準座標を求める GF行列法などが知られている。
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