moral re-armamentとは? わかりやすく解説

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エムアールエー‐うんどう【MRA運動】


道徳再武装

(moral re-armament から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/16 07:06 UTC 版)

道徳再武装(どうとくさいぶそう、英語: Moral Re-Armament、略称MRA)は、1921年メソジストフランク・ブックマン[1]牧師率いるオックスフォード・グループ[2]が発展する形で発足した、国際的な道徳と精神を標榜する運動である。1938年に現在の名称となった[3]。以後、ブックマンは1961年に死去するまでの23年間にわたりMRAを率いた。


  1. ^ フランクリン・ナサニエル・ダニエル・ブックマン、Franklin Nathaniel Daniel Buchman、1878年6月4日 – 1961年8月7日
  2. ^ ブックマンが育ったペンシルバニア州アレンタウンは、ペンシルバニア・ダッチと呼ばれる信心深いヨーロッパ系移民の集団が居住する地域で、スイス東部サンガレンから入植したブックマンの一族もそのグループに属していた。ブックマン自身もルーテル派教会に所属し、孤児院の運営などに従事していたが、経営陣との間に軋轢を起こし、第一次大戦後渡英した。イギリス滞在中に精神的啓示を体験し、それをもとに布教活動を開始、「正直、純潔、無私、愛」の4つを絶対道義標準をもとに生活改善と世界情勢の変革を志すことを提唱した。当初の賛同者にオックスフォード大学の学生や教員が多かったことから「オクスフォード・グループ」と通称された。
    『アジアセンターODAWARA 四十周年記念一戦後の日本とMRAの軌跡』
  3. ^ a b Marc A. Rose, "Buchman and Moral Re-Armament, "Reader's Digest, October 1939, p.35.
  4. ^ 「絶対正直」、「絶対純潔」、「絶対無私」、「絶対愛」
  5. ^ これは、MRAの考え方の中核にある、「世界の変革は、自己の変革を模索することから始まる」という点に起因するものである。
  6. ^ スイスのコーに本拠地を置いており、法的かつ管理面の主体であり、各国の組織を国際連合との連携の中で束ねる役割を果たしている。
  7. ^ Official Website of Initiatives of Change
  8. ^ ブックマンは、1925年オーストラリアを訪れた際にMRAというフレーズを考案していた可能性があるが、当時はまだオックスフォード・グループという呼称で知られていた。
    また、MRAという単語は、文学界では、英国テニス界の英雄であるH.W.オースティンが約50万部を売り上げた「道徳再武装(平和への闘い)」を編集した1938年に初めて使われた、と主張する者もいる。 Lean, Garth Frank Buchman – a life, p279
    ブックマンは、1938年5月29日に欧州における再軍備の機運の高まりについて言及した際、MRAに類似した表現を使っている。
    「現下の危機は、道徳の危機である。各国は、道徳を再武装しなければならない。道徳の回復が、経済の回復の先触れであるということが大切なのだ」
    Buchman, Frank N.D., Remaking the World (London, 1955), p. 46.
  9. ^ のちにアメリカ大統領となる、ハリー・トルーマン上院議員が、上院の軍事関連契約を監督する委員会の委員長であったときに、1943年ワシントンで開かれた記者会見で、「障害は、疑念、対立、無関心、欲望に起因するものだ。こうした点に対処すべく、MRAのグループが来てくれた。そして、人々が遠巻きに批判している中で、彼らは腕まくりをして、仕事に従事した。そして、彼らは、誰が正しいかではなく何が正しいか、という原理に則り、産業にチームワークを持ち込むという点で多大な功績を残している。」と述べている。 Lean, Garth Frank Buchman – a life, p. 324
  10. ^ Lean, Garth Frank Buchman – a life, p 382
  11. ^ 歴史家のダグラス・ジョンストンとシンシア・サプソンは、この動きを「近代国家の歴史の中での最も重大な業績(すなわち戦後におけるフランスとドイツの急速な和解)への大きな貢献」と評している。 Johnston and Sampson, Religion, the Missing Dimension of Statecraft, Oxford University Press, 1994
  12. ^ Jonathan Chaplin, Gary Wilton, God and the EU: Retrieving the Christian Inspirations of the European Project, Routledge, 2015/12/14, p.54.
  13. ^ 1956年には、モロッコ国王ムハンマド5世がブックマンにメッセージを送り、「ここ最近の試練の年月の最中でモロッコのために貴殿がなされたことに対して、私は感謝の意を表します。MRAは、我々ムスリム、あなた方クリスチャン、そしてあらゆる民族を動かす誘引に違いありません。」と述べた。 Lean, Garth Frank Buchman – a life, p 454
    1960年には、キプロスの大統領であるマカリオス大司教と、副大統領であるクキュック副大統領が共同で独立キプロスの最初の国旗をコーにいたフランク・ブックマンにおくっている。これは、MRAの支援への感謝の意を示すものであった。 Lean, Garth Frank Buchman – a life, p 524
  14. ^ そして日本の保守政治家も、やはりモロッコやキプロスのように敬意を払った。
  15. ^ 国際IC日本協会 ICの歴史(詳細) ただし年表中の脚注は『軍隊なき占領-ウォール街が「戦後」を演出した』によった。
  16. ^ ジョンズ・ホプキンス大学名誉教授。元SAISライシャワー・センター東アジア研究所日本研究担当教授。CIA東アジア部・国務省で勤務。中曽根康弘元首相と親密。著書に『いかに保守党が日本を支配しているか』(How the Conservatives Rule Japan, Princeton University Press, 1969)
  17. ^ 下の名は「たかすみ」と読む。啓明学園を設立。MRAの費用で英米仏独を旅行。
  18. ^ 占領期間中、MRAの会員には、一般に許されるずっと以前から海外旅行が許されていた。
  19. ^ 上智大学神学部。セント・ノーバート・カレッジ英語版へ2年間留学。さらにマーケット大学英語版の大学院で2年学んだ。1962年帰国。小坂徳三郎信越化学工業で働き始める。小坂の国会議院初当選のときは選挙運動の事務局長であった。三井物産の三井弁蔵の娘で岡部長景の孫である女性と結婚。
  20. ^
  21. ^ Glenn Davis and John G. Roberts 守山尚美訳 『軍隊なき占領-ウォール街が「戦後」を演出した』 新潮社 1996年12月 P 145-149, 154-168
  22. ^ 『アジアセンターODAWARA 四十周年記念一戦後の日本とMRAの軌跡』
  23. ^ 5階建てのビル。閑院宮家から買い取った土地を利用。三井家の別荘に隣接。数年後、渋沢雅英の援助を得て麻布へ移される。移転後はMRA Houseという表札をかけていたが、1976年日本国際交流センターに変わった。
    雅英は渋沢栄一記念財団理事長、東京女学館理事長、イニシアティブス・オブ・チェンジ顧問
  24. ^ 岸と大平正芳も会員としてオープニングへ参加。
  25. ^ 三菱電機顧問、フューチャー500会長
  26. ^ WCRP事務総長、天台宗元宗務総長
  27. ^ 上智大学社会正義研究所、国際カトリックプレス日本支部代表
  28. ^ 当時、ウィンストン・チャーチルカール・バルトは、民主主義への明確な非難を繰り返していたドイツの国家社会主義運動に対して、彼らが民主的な運動であることを証明する機会を与えようとしていた。
    当初、アドルフ・ヒトラーは、彼自身をキリスト教の守護者である、という説明をしていた。1928年には「我々は、キリスト教の考え方を破壊する者を許容しない」と宣言している。
  29. ^ Lean, Garth Frank Buchman – a life, p233-237
  30. ^ ブックマンは、国家社会主義政権の精神的な変化なくして、世界大戦は不可避であると確信していた。
  31. ^ ヒムラーへの最後の面会の数時間後に、あるデンマーク人ジャーナリストである友人Jacob Kronika, Berlin correspondent for Nationaltidende, Copenhagen and Svenska Dagbladet, Stockholm, and Chairman of the Association of Foreign Journalists in Berlinへ、ブックマンは次のように話した。
    「扉はもはや閉ざされてしまった」「ドイツは、ひどく凶悪な力の支配のもとに置かれてしまった。これに立ち向かうアクションが絶対的に必要とされている」
    Article by Kronika in Flensborg Avis, Denmark, 2 January 1962
    そして、ブックマンは、最終的に1936年にはヒムラーを「大した男」であると評した。
    The Family: The Secret Fundamentalism at the Heart of American Power,Jeff Sharlet,2008
  32. ^ New York World-Telegram, August 26, 1936
  33. ^ ブックマンのプリンストン大学時代の同僚で、そのインタビューに同席していたGarrett Stearly牧師は、「この発言には驚いた。会見の内容と全くかみ合っていなかった。」と記している。
    タイム誌は、ブックマンは、適切な者による独裁について全体的に好意を示しており、それが会見の全体に渡って現れている、と記している。 Religion: Moral Rearmament, 19 September 1938
    ブックマンは、この記事に対して反応することを控えた。というのも、そうすることで、ドイツにいる彼の友人たちを危険に晒すこととなると感じたからであった。 Lean, Garth Frank Buchman – a life, p240
  34. ^ オックスフォード・グループについてゲシュタポがはじめて作成した詳細な機密レポート(1936年11月)によると、オックスフォード・グループは、国家社会主義に対立する危険な存在と化した、と警戒している。 Leitheft Die Oxford- oder Gruppenbewegung, herausgegeben vom Sicherheitshauptamt, November 1936. Geheim, Numeriertes Exemplar No. 1
    第二次世界大戦後、ゲシュタポの資料が従来以上に明らかになることで、ナチスがオックスフォード・グループを敵とみなしていたことが明確になった。1939年に作成された資料では、「オックスフォード・グループは、国民国家に対抗する革命を説いており、キリスト教による、国民国家の反対勢力となっていることは明確だ。」としている。また、1942年の文書では、「キリスト教の特徴をもって、国家の枠組みを超えることや、あらゆる人種の壁を取り払う、ということをここまで強調するキリスト教運動は他には存在しない」と分析されている。 Lean, Garth Frank Buchman – a life, p. 242
    また、レポートでは、ボルシェビキにおけるスターリン主義者や、Catholic Actionなどのような非ナチスの全体主義の原型といえる集団についても、ナチズムにとっての脅威として分類している。 The Family: The Secret Fundamentalism at the Heart of American Power,Jeff Sharlet,2008
  35. ^ Bishop Fjellbuは、抵抗運動が原因で投獄されている。 Sermon in St Martin-in-the-Fields, London, 22 April 1945
  36. ^ 彼女は、この小説を「そのビジョンでもって、この小説に現れる生き生きとした人物の世界を可能にしたフランク・ブックマン」に捧げた。そしてこう付け加えている。「人々が自身の課題を解決できるように、そして将来訪れる事態に準備できるようにと、グループは国じゅうで活動している。このことが今後国家的な重要性を持っている、ということが明らかになるだろう。」と。
  37. ^ Lean, Garth; Frank Buchman – a life; Constable 1985 p300
  38. ^ Obituary: Mary Whitehouse, The Daily Telegraph, November 2001


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