m6Aメチル基転移酵素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/06 06:36 UTC 版)
「DNAメチルトランスフェラーゼ」の記事における「m6Aメチル基転移酵素」の解説
m6Aメチル基転移酵素(N6アデニン特異的DNAメチル基転移酵素、A-MTase)はDNAのアデニンのN6位を特異的にメチル化する酵素である。A-MTaseは細菌の制限修飾系の3つのタイプでみられる。これらの酵素は対応する制限酵素と同じ配列特異性を持ち、DNA配列をメチル化することで自身のゲノムを制限酵素による分解から防いでいる。N末端部分にAsp/Asn-Pro-Pro-Tyr/Pheからなる保存されたモチーフを含んでおり、この領域は基質結合または触媒活性に関与している可能性がある。m6AメチルトランスフェラーゼTaqI(M.TaqI)の構造は 2.4 Åの分解能で解かれており、分子は2つのドメインへ折りたたまれている。N末端の触媒ドメインには触媒部位と補酵素結合部位が含まれ、中心部の9つのストランドからなるβシートが5本のαヘリックスで囲まれた構造をしている。C末端のDNA認識ドメインは4つの小さなβシートと8つのαヘリックスによって形成される。N末端ドメインとC末端ドメインによって、基質DNAを収容する溝が形成される。 タイプIの制限修飾系はR、M、Sの3つのポリペプチドから構成される。MサブユニットとSサブユニットはメチル基転移酵素を形成し、DNA認識配列の相補鎖の2つのアデニン残基をメチル化する。Rサブユニットの存在下では複合体はエンドヌクレアーゼとしても機能し、同じ部位に結合するがこの部位から幾分離れた位置でDNAの切断を行う。DNAが切断されるか修飾されるかは、標的配列のメチル化状態に依存している。標的部位が修飾されていない場合、DNAは切断される。標的部位の片側の鎖のみがメチル化(ヘミメチル化)されている場合、複合体は両方の鎖がメチル化されるようDNAの修飾を行う「維持型メチル基転移酵素」(maintenance methyltransferase)として機能する。 m6Aメチル基転移酵素の中には、制限修飾系に関与していないオーファンメチル基転移酵素(orphan methyltransferase)と呼ばれるグループが存在する。これらの酵素は、遺伝子発現や細胞周期を調節する役割がある。大腸菌Escherichia coliのEcoDam(英語版)やCaulobacter crescentus(英語版)のCcrMは、このファミリーのメンバーとして性質がよく知られている。近年では、Clostridioides difficileのCamAが胞子やバイオフィルムの形成と宿主への適応に重要な機能的役割を果たすことが示されている。
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