無限遠直線
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/15 03:07 UTC 版)
無限遠直線(むげんえんちょくせん、英: line at infinity)は、幾何学あるいは位相幾何学において実アフィン平面に付加される直線である。射影平面の接続関係に閉包性を与え特殊な場合を例外なく取り扱うために用いられる。無限遠線[1]、無窮遠直線[2]、無窮遠線[3]、無窮線[4]、あるいは理想線[5] (ideal line[6]) とも言われる。ポンスレらによって研究された[7]。
幾何学的構築
アフィン幾何学やユークリッド幾何学において平行線は交わらないとされるが、射影幾何学においては任意の2直線が交わる。特に平行線は無限遠点で交わる。すべての無限遠点を含む直線を無限遠直線という[8]。
任意の直線は無限遠直線と交わる。交点は直線の傾きのみに依存する。
アフィン平面において、直線は2方向に延びている。射影平面においてこの2方向の無限遠点は同一である。故に射影平面上の直線は閉曲線である。無限遠直線もまた閉曲線である。
位相幾何学的観点
無限遠直線はアフィン平面を囲う円とみなすこともできる。ただし円上の点の対蹠点は自身と一致する。アフィン平面と無限遠直線は実射影平面ℝP2を成す。
双曲線は2つの漸近線方向の無限遠点で自身と交わり、閉曲線とみなせる[9]。同様に放物線も軸方向の無限遠点で無限遠直線と接する[10]閉曲線とみなすことができる。
複素射影平面における無限遠直線の類似物は、無限遠の複素射影直線である。しかし、2次元複素アフィン空間上にリーマン球面を付加し4次元コンパクト多様体を成すという点で、位相幾何学的に無限遠直線とは全く異なる。実射影平面とは異なり、この結果は向き付け可能である。
歴史
複素無限遠直線は19世紀の幾何学でよく使われた。無限遠直線上のある二点(虚円点)を通る円錐曲線として円を扱うことに応用された。
虚円点I, Jは円の方程式から低次の項を除いた方程式X2 + Y2 = 0の解である。通常、射影幾何学においては同次座標系[X:Y:Z]が採択される。
I = [1:i:0] , J = [1:−i:0]
無限遠直線は、Z = 0で表される[11][12]。すべての円は無限遠直線上の虚円点を通る[13]。
虚円点は任意に代表元を取っても複素点となる。ただし、射影直線は十分大きい対称変換群を持つため、虚円点の存在は特別なことではない。3つの変数からなる円の族は、与えられた2点を通る円錐曲線の決定の特別な場合としてみなすことができる。
初等幾何学
三角形幾何学において、無限遠直線は様々な特徴づけが成される。三角形の3辺の長さをa, b, cとする。無限遠直線は三線座標(p ,q ,r)においてa p + b q + c r = 0、重心座標(p ,q ,r)においてp + q + r = 0と表される[6][14]。重心の三線極線としても定義できる[15]。外接円とシュタイナー楕円はそれぞれ等角共役、等長共役によって無限遠直線に移る。一般に外接円錐曲線の、自身による平行弦共役は無限遠直線に移る[16]。
円による反転によって、無限遠直線は基準円の中心に映る。また、円の中心の極線は無限遠直線である。
出典
- ^ 渡辺義勝『図表及ビ図計算』弘道館、1938年、143-145頁。NDLJP:1875780。
- ^ 中川銓吉『近世綜合幾何学演習』共立出版、1948年、159頁。NDLJP:1063414。
- ^ ウジェーヌ・ルーシェ、シャルル・ド・コンブルース 著、小倉金之助 訳『初等幾何學 第2卷 空間之部』山海堂、1915年、62,319,459頁。NDLJP:1082037。
- ^ ウヰルソン 著、林田雷次郎 訳『幾何学』大平俊章等、1887年、77頁。NDLJP:828420。
- ^ 米山国蔵『数学之基礎 上』積善館、1925年、145頁。NDLJP:925124。
- ^ a b Weisstein, Eric W. “Line at Infinity”. mathworld.wolfram.com (英語).
- ^ 高木貞治『輓近高等数学講座 第2巻』共立社、1933年、153頁。NDLJP:1078175。
- ^ 「無限遠直線」『ブリタニカ国際大百科事典』。コトバンクより2026年2月15日閲覧。
- ^ “学問入門講座”. 青山学院大学 理工学部 物理・数理学科. 2024年8月28日閲覧。
- ^ 窪田忠彦『近世幾何学』岩波書店、1947年、53,99頁。NDLJP:1063410。
- ^ “射影平面と双対性”. 2024年8月28日閲覧。
- ^ 森本清吾『座標幾何学 (共立全書 ; 第40)』共立出版、1952年、75,77,81,89,111頁。NDLJP:1372006。
- ^ リヒター-ゲバート, J.、コルテンカンプ, U. H.『シンデレラ: 幾何学のためのグラフィックス』Springer Science & Business Media、2003年11月26日。 ISBN 978-4-431-70966-4。
- ^ 一松, 信 編『重心座標による幾何学』(初版)現代数学社、京都市、2014年、20頁。 ISBN 978-4-7687-0437-0。
- ^ Weisstein, Eric W. “Trilinear Pole”. mathworld.wolfram.com (英語).
- ^ 齋藤輝. “等角共役とシムソン線の幾何学”. 角川ドワンゴ学園 N/S 高等学校研究部. 2024年8月28日閲覧。
関連項目
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