W・デ・シッター
W・デ・シッター
多くの人から尊敬されたオランダの天文学者
オランダの数学家、物理学者、天文学者であるデ・シッター(1872〜1934)は広範な知識とその精力的な応用によって、同じ時代のもっとも尊敬される理論家の1人になりました。高等学校時代から天文学に興味をもったデ・シッターは、南アフリカ・ケープタウンの王立天文台で博士課程を修め、オランダに戻って1901年に博士号を取得。1908年にライデン大学の理論天文学教授になり、1919年にはライデン天文台の台長になりました。
「デ・シッターの宇宙」理論で近代宇宙論誕生に貢献
1905年にアインシュタインの特殊相対性理論が発表されましたが、天文学者でそれが彼らの分野に重要であることに気づいたものはほとんどいませんでした。1911年、デ・シッターは「太陽系を構成する天体の動きが、もし相対性理論が有用であるならば、ニュートン力学にもとづく予測からどれだけはずれると考えられるか」という簡単な論文を発表しました。さらに1915年、アインシュタインの一般相対性理論が発表されると、彼は3つの論文を発表、その3番目の論文で「アインシュタインの宇宙」とは区別される「デ・シッターの宇宙」を紹介しました。彼のモデルは、のちに宇宙の創成についての定常仮説の理論的な基礎になっていきます。また、デ・シッターは、アインシュタインの方程式だけが正しいものでないことに気づき、定常宇宙でないモデルも示すため膨張する宇宙と振動する宇宙の両方について言及しました。こうして、この分野を発展させた理論天文学者の1人として、デ・シッターは近代宇宙論の誕生に貢献したのです。
地球の自転や公転のメカニズムを初めて解明
デ・シッターが重要な貢献を果たした天文学の分野は、さらに2つあります。1つは、多くの天文定数を新しいものにしたことです。もう1つは測地学と天文学のデータを分析し、地球の回転にはいくつかの変化があることを示すとともに、そのメカニズムについても示唆したことです。こうしてデ・シッターは、潮汐摩擦は地球の自転だけではなく、月の自転にも影響を与えるが、一部の要素は地球にしか影響を与えないこと等を示唆したのです。
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