T-双対
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/12 09:49 UTC 版)
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T-双対(T-duality)は、様々な弦理論の小さな距離と長い距離の間の関係の古典的記述[1]が、それらの特別な場合となるという場の量子論の対称性である。[2] ブッシャー(T. H. Buscher)の論文の中でこの話題の議論が始まり、マルティン・ロセック(Martin Rocek)とエリック・ヴァーリンデ(Erik Verlinde)によりさらに深められた。T-双対は、通常の素粒子物理学の中には存在しない。弦が粒子の動きとは点粒子とは基本的に異なる方法で時空を伝播する。T-双対が理解される以前には、関連がないと考えられていた異なる弦理論を関連づける。T-双対は、第二超弦理論革命の中で進化した。[3]
量的な記述
弦理論は、普通の空間次元 3と時間次元 1に加えて、余剰次元を予言する。これらの余剰次元の異なるサイズや形は、4次元の低エネルギー物理に現れる異なる力や異なる粒子となるので、異なった形の宇宙は異なった物理を持つであろう。しかし、これらの多くの幾何学が同じ物理を結果し、これがT-双対の基礎となっている。
例えば、次元の一つが半径 R の円の場合を考える。この方向へ粒子や弦は運動量を持つので、そのような状態をカルツァ・クラインモードと呼ぶ。この方向の運動量は、次を満たすことで量子化される。
半径 R を小さくすると、モードの一つで励起させるさせることにさらにエネルギーが必要となる。他方、R が大きくすると、カルツァ・クライン状態のあいだの間隔が小さくなり、半径が無限大の極限で、運動量はもはや量子化されていない。
粒子とは異なり、閉弦はまた余剰次元に巻き付くこともできる。そのような状態を巻き付きモードと言う。巻き付きモードを励起するエネルギーは、半径 R に比例して量子化されているので、半径が小さくなるにつれて、巻き付きモードが小さくなるので、半径がゼロとなる極限ではもはや量子化されない。一方、半径が大きくなると巻き付きモードを励起することに使うエネルギーは大きくなる。このカルツァ・クラインモードの振る舞いは反対で、巻き付きモードとカルツァ・クラインモードを入れ替えると、半径が小さいと大きい閉弦の振る舞いは同じになる。半径 R での物理と半径 α'/R での物理が同じになる。この関係がT-双対の例である。
ボゾン弦
T-双対のアイデアを説明するために、半径 R の円へコンパクト化されたボゾン弦を考える。弦は、純粋な運動量 p をコンパクト化された次元の中でも持っている。この粒子の場合には、運動量は 1/R の単位に量子化されているはずである。
ここに n は整数である。しかし、粒子の場合とは違い、閉弦はコンパクト化した次元の周りに巻きついているかもしれない。その次元の周りに巻き付いた回数を巻き付き数 w と言う。従って、閉弦の質量は、
となる。ここに N と Ñ は閉弦の左-(left-) と右-移動(right-mover)の励起で、α' は、傾きパラメータ(slope parameter)である。このスペクトルは次の変換の下に不変である。
すなわち、閉弦のスペクトルは半径 α'/R の背景(background)を持つ閉弦のスペクトルと同じスペクトルを持つ。閉弦の相互作用も、この変換の下に不変であることを示すことができる。このことは半径 R のコンパクト化した閉じたボゾン弦は、半径 α'/R の理論に等価であることを意味する。
超弦
T-双対のアイデアは、超弦理論のような、より一般な的な背景へ拡張することができる。T-双対は、タイプ IIの弦を互いに(タイプ IIAをタイプ IIBへ、タイプ IIBをタイプ IIAへ)入れ替える。またヘテロ弦を互いに(ヘテロ SO(32)をヘテロ E8×E8 へ、ヘテロ E8×E8 をヘテロ SO(32) へ)入れ替える。例えば、問題の方向に一度巻き付いたタイプ IIAの弦から始めると、T-双対は、その方向に運動量を持つタイプ IIBの弦へ移す。巻数 2 を持つタイプ IIA弦は、運動量の単位 2つを持つタイプ IIB弦へ移すように、ほかも同様である。
開弦とD-ブレーン
T-双対は、D-ブレーンに作用すると、その次元を +1 するか -1 するように作用する。
ミラー対称性
アンドリュー・ストロミンジャー(Andrew Strominger)、シン=トゥン・ヤウ(Shing-Tung Yau)、エリック・ザスロフ(Eric Zaslow)は、ミラー対称性が、カラビ・ヤウ空間の 3 次元トロイダルファイバー空間に適応したT-双対として理解できることを示した。
脚注
- ^ T-duality in nlab:url=http://ncatlab.org/nlab/show/T-duality
- ^ “Generalised complex geometry and T-duality”. 2013年10月29日閲覧。
- ^ superstringtheory article Looking for extra dimensions by Patricia Schwarz
参照項目
参考文献
- Becker, K., Becker, M., and Schwarz, J. H. (2007). String Theory and M-Theory: A Modern Introduction. Cambridge, UK: Cambridge University Press.
- Polchinski, J. (1998). String Theory. Cambridge, UK: Cambridge University Press
- Buscher, T.H. (1987), “A symmetry of the string background field equations”, Phys. Lett. B 194 (1): 59-62
- Rocek, M.; Verlinde, E. (1992), “Duality, quotients and currents”, Nuclear Phys. B 373 (3): 630-646
T-双対
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 05:10 UTC 版)
「ミラー対称性 (弦理論)」の記事における「T-双対」の解説
トーラスは2つの円の積であり、この場合は赤い円がピンクの円を定義する軸の周りを掃くようになった場合である。 R 1 {\displaystyle R_{1}} は赤い円の半径で、 R 2 {\displaystyle R_{2}} はピンクの円の半径である。 詳細は「T-双対」を参照 どのようにしてトーラスが複素平面の中の平行四辺形の対辺を同一視すると得ることができるかを見てみる。特別に単純例は、複素数 ω 1 {\displaystyle \omega _{1}} と ω 2 {\displaystyle \omega _{2}} それぞれが実軸と虚軸にある場合である。この場合には、 ω 1 = R 1 {\displaystyle \omega _{1}=R_{1}} および ω 2 = i R 2 {\displaystyle \omega _{2}=iR_{2}} と書くことができる。ここに R 1 {\displaystyle R_{1}} と R 2 {\displaystyle R_{2}} は実数である。上記の議論のようにして得られたトーラス上の複素構造は、数値 τ = i R 2 / R 1 {\displaystyle \tau =iR_{2}/R_{1}} により特徴づけられる。 どのようにトーラスのシンプレクティック構造が面積要素により決定されるかを、すでに説明した。平行四辺形上の座標 x {\displaystyle x} と y {\displaystyle y} を、複素数により張られる平行四辺形の各々の辺が長さ 1 を持つように選ぶことができる。すると、このトーラスの面積要素は R 1 R 2 d x d y {\displaystyle R_{1}R_{2}dxdy} であり、単位正方形上で積分し R 1 R 2 {\displaystyle R_{1}R_{2}} となる。シンプレクティックパラメータ ρ {\displaystyle \rho } を積 i R 1 R 2 {\displaystyle iR_{1}R_{2}} と定義する。 2つの円のカルテシアン積としてトーラスを考えることができることに注意する。このことは、トーラス(ピンクで表示されている)の赤道の各々の点に、経線の円(赤で表示されている)がある。 さて、トーラスは物理的理論での「時空」を表現することを想像すると、この理論の基本的な対象は、量子力学の規則に従い時空の中を伝搬する弦 (物理学)(英語版)である。弦理論の双対性(英語版)の一つに T-双対性がある。このことは、すべての一方での観測可能量は双対な記述での量と同一視されるという意味で、半径 R {\displaystyle R} の円の周りを伝搬する弦は、半径 1 / R {\displaystyle 1/R} の円の周りを伝搬する弦に等価となる 。例えば、弦のある方向への運動量は離散的な値をとり、弦が双対方向の円の周りへ何周り巻き付いているかを表す。 T-双対をトーラスの経線方向の円へ適用すると、別のトーラスにより表現される時空の中にある等価な記述が存在することがわかる。T-双対性は R 1 {\displaystyle R_{1}} を 1 / R 1 {\displaystyle 1/R_{1}} へと変換し、この変換は τ ↔ ρ {\displaystyle \tau \leftrightarrow \rho } と複素パラメータとシンプレクティックパラメータとを入れ替える。
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