RecBCD経路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 20:29 UTC 版)
多くの細菌において、RecBCD経路はDNAの二本鎖切断を修復する主要な組換え経路であり、この過程に関与するタンパク質は広範囲の細菌に存在している。二本鎖切断は紫外線や他の放射線、化学的変異原によって引き起こされる。二本鎖切断は一本鎖のニックまたはギャップを含むDNAの複製によって生じることもある。こうした状況はcollapsed replication forkと呼ばれる複製フォークの崩壊状態を引き起こし、RecBCD経路を含むいくつかの相同組換え経路によって修復される。 RecBCD経路では、RecBCDと呼ばれる3つのサブユニットからなる酵素複合体が二本鎖DNAの切断部のほぼ平滑な末端(英語版)に結合することで組換えが開始される。RecBCDがDNAの末端に結合すると、RecBとRecDサブユニットのヘリカーゼ活性によってDNA二重らせんの巻き戻しが開始される。RecBはヌクレアーゼドメインも持っており、巻き戻し過程で生じた一本鎖DNAを切断する。この巻き戻しは、RecBCDがChi部位(英語版)とよばれる特定のヌクレオチド配列(5'-GCTGGTGG-3')に到達するまで継続される。 Chi部位に到達すると、RecBCDの活性は劇的に変化する。DNAの巻き戻しは数秒間停止し、その後当初の約半分の速度で再開される。これは、Chi部位に到達するまでは速いRecDヘリカーゼによって巻き戻しが行われていたが、Chi部位の通過後は遅いRecBヘリカーゼによって巻き戻しが行われるようになるためであると考えられている。またChi部位の認識は、Chi部位でDNA鎖を切断し、新たに形成された3'末端の一本鎖DNAへ複数のRecAタンパク質をローディングを開始するようRecBCD酵素を変化させる。その結果生じたRecAに覆われたヌクレオプロテインフィラメントはその後、類似した配列を持つDNAを探索する。探索過程によってDNA二重らせんは引き伸ばされ、それによって相同性の認識は向上する(conformational proofreadingと呼ばれる)。そうした配列を発見すると、一本鎖ヌクレオプロテインフィラメントは受け手となる相同なDNA二重らせんへ移動する。この過程はstrand invasionと呼ばれる。侵入してきた3'オーバーハングは受容側の二本鎖DNAのうちの1本の鎖と置き換わり、Dループが形成される。Dループが切断された場合、同様の鎖交換によってホリデイジャンクションと呼ばれる交差構造が形成される。ホリデイジャンクション構造はRuvABC(英語版)とRecGの組み合わせによって解消され、相互作用した2つのDNA分子が遺伝学的に異なるものであった場合、遺伝子型が交差した2つの組換えDNA分子が生じる。それ以外に、侵入してきたChi部位付近の3'末端がDNA合成のプライミングを行い、複製フォークが形成される場合もある。このタイプの解消では1つのタイプの組換え分子のみが生じる。
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