NATの利用法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 14:57 UTC 版)
航空機は出発前に航空運行官から航路の指定を受ける。航路は、目的地、航空機重量、機種、風向、航空管制官の経路設定を勘案して決められる。その後、航空機はNAT進入前に洋上航路管制官に、NAT進入地点への予定到達時刻を伝え、航路の割り当てを受ける。場合によっては航路が混雑している場合があり、その場合には代替の航路が宛がわれる事がある。一度航路の割り当てを受けた後は管制官の許可なしに経路や高度を変更することはできない。 NATには非常時のために控えの経路が用意されている。例えば何らかの原因で航空機が速度や高度を維持できなくなってしまった場合には、NATから外れ、NAT上の航空機からの距離を保ちつつNATと並行して飛行するよう決められている。またNAT上の航空機は乱気流などを避けるため高度や速度を変更した場合航空管制官にその旨通告することが義務付けられている。 GPSやLNAVといった高度に航法の発達した現代ではあるが、それでも誤りは起こり得り、実際に起こっている。即座に危険につながるわけではないが、航空機同士の距離が、規定の距離以下になってしまうこともある。特に混雑した日には約10分間隔で航空機がNATに進入する。TCASの導入により、パイロット自身が付近を航行する航空機の位置を把握できるようになったため、以前よりNAT上での空中衝突の危険は減っている。 大西洋上にはほとんど基地局がないので、パイロットはNAT上の定点を通過する度に定点通過報告と、二つ先までの定点への到着予定時刻の報告を義務付けられている。パイロットからの報告を受け、海上管制官は航空機同士の間隔を計算する。定点通過報告は衛星通信(CPDLC)か、短波ラジオを通じて行われる。短波ラジオを使う場合には選択受信SELCALを用いる。SELCALでは消音モードになっていた場合でも、受信があった場合にはわかるようになっているので、乗組員は常時ラジオを聴いている必要がなくなる。さらに自動受動監視システム(ADS-C, ADS-B)が搭載されている場合には、音声による定点通過報告は必要なく、自動的に定点報告が送信される。この場合SECALによる定点報告は、海上に進入する際と、周波数が変わった際の、SECALの動作確認としてのみ行われる。これは自動受動監視システムが故障した場合の予備としてSELCALを用いるためで、通常の定点報告は自動受動監視システムが行う。
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