GMDSSへの移行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 01:34 UTC 版)
80年代に入ると船舶近代化に伴ない、衛星通信やNBDPが導入され、また通信士の資質向上も図られた。ところが最も大切な緊急時用の無線は、モールス通信など人手に頼る要素も多く、この戦前から続くシステムと新技術との乖離が問題となってくる。 90年代初頭にGMDSS(世界海洋遭難安全システム)が導入され、遭難信号を非常用位置指示無線標識装置(EPIRB)によって自動的にデジタル伝送できるようになった。モールス通信とその従事者は船舶無線の国際的な必須条件から外され、新システムに適合した通信士の資格も定められた。 日本ではこの改正に対応して、モールスの技能を要さない船舶無線用の通信士資格が新設された。また船舶職員制度の改正も行なわれ、必要な海技従事者資格も新設された。さらに他部の船舶職員が無線部の職員を兼任できるようになると共に、いわゆる大型船舶の船長や航海士に対し無線従事者資格の所持が義務付けられたので、21世紀に入ると無線を要する民間船舶の殆んどから専任の通信士が消えた。ただ海上保安庁や自衛隊などの公用船では、運航関連以外の通信は専任者によることも多い。また海事教育機関の練習船には、教官でもある船舶通信士が乗務している。 従来は通信士の手によっていた公衆通信なども、利用者が自分で携帯電話網や衛星回線を運用するようになったので、電気通信事業者の海岸局は全廃された。ただ地方自治体や漁業協同組合が運営する漁業用の海岸局が全国に存在し、電報を送受しているところもある。海運業者は所属船のため、主にVHF帯の海岸局を有しているが、海事衛星経由のデータ通信も多くなってきた。 海上保安庁の海岸局などには多数の通信士が勤務しているが、1996年以降モールス通信は基本的に使用されていない。また海上交通センター(マーチス)や自治体のポートラジオでは、係員が無線電話で運航管制などを行なっている。
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