FGF受容体とは? わかりやすく解説

線維芽細胞増殖因子受容体

(FGF受容体 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/04 05:13 UTC 版)

Fibroblast growth factor receptor
識別子
略号 FGFR
InterPro IPR016248
Membranome 1201
テンプレートを表示

線維芽細胞増殖因子受容体(せんいがさいぼうぞうしょくいんしじゅようたい、fibroblast growth factor receptors,FGFR)は、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーのタンパク質に結合する受容体である。これらの中には疾患に関与するものがあり、例えばFGFR3英語版点突然変異軟骨無形成症を引き起こす可能性がある。

構造

3つの免疫グロブリン(Ig)様ドメインからなる細胞外リガンドドメイン、1つの膜貫通型ヘリックスドメイン、チロシンキナーゼ活性を持つ細胞内ドメインから構成され、成長因子リガンドの最大のファミリーである22のメンバーからなる線維芽細胞成長因子と結合する[1][2]

4つのFGFR遺伝子の選択的スプライシングにより、48種類以上のアイソフォームが産生される[3]。これらはリガンド結合特性やキナーゼドメインが異なるが、すべて3つの免疫グロブリン様ドメイン(D1-D3)からなる共通の細胞外領域を有する免疫グロブリンスーパーファミリー英語版に属する[4]

免疫グロブリン様ドメインD1とD2の間には一連の酸性アミノ酸配列("acid box"と呼ばれる)が存在する[5]。この領域がFGFとの結合能力を制御し、D2とD3領域がFGFを認識し結合する。FGF/FGFRの対応は多対多であり、各FGFRは複数種のFGFによって活性化され、多くの場合、FGFも2種以上のFGFRを活性化できる(例えば、FGF1は7つの主要なFGFRすべてに結合する[6])。しかし、FGF7のようにFGFR2bのみを特異的に活性化するものもある[3]。FGFRは、ヘテロダイマーおよびホモダイマーとして二量体化する事が知られている。

また、5番目のFGFRタンパク質であるFGFR5の遺伝子も同定されている。FGFR1〜4とは異なり細胞内チロシンキナーゼドメインを持たず、アイソフォームは1つのみ(FGFR5γ)で、細胞外ドメインはD1とD2のみを持つ[7]

遺伝子

これまでに、脊椎動物では5つの異なる膜FGFR遺伝子が同定されており、それらは全てチロシンキナーゼスーパーファミリーに属している(FGFR1〜FGFR4)。

  • FGFR1 (線維芽細胞増殖因子受容体1英語版も参照) (= CD331)
  • FGFR2 (線維芽細胞増殖因子受容体2英語版も参照) (= CD332)
  • FGFR3 (線維芽細胞増殖因子受容体3英語版も参照) (= CD333)
  • FGFR4 (線維芽細胞増殖因子受容体4英語版も参照) (= CD334)
  • FGFRL1 (線維芽細胞増殖因子受容体様1英語版も参照)
  • FGFR6

医薬品の標的

FGF/FGFシグナル伝達経路は様々な癌に関与する[8]

他のタンパク質も含むFGFR1~4の全てに作用する非選択的FGFR阻害剤と、FGFR1~4の全てまたは一部のみに作用する選択的FGFR阻害剤が存在する[9]。選択的FGFR阻害剤には、AZD4547、BGJ398、JNJ42756493、PD173074等がある[9]

出典

  1. ^ “Fibroblast growth factors”. Genome Biology 2 (3): REVIEWS3005. (2001). doi:10.1186/gb-2001-2-3-reviews3005. PMC 138918. PMID 11276432. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC138918/. 
  2. ^ “Molecular mechanisms of fibroblast growth factor signaling in physiology and pathology”. Cold Spring Harbor Perspectives in Biology 5 (6): a015958. (June 2013). doi:10.1101/cshperspect.a015958. PMC 3660835. PMID 23732477. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3660835/. 
  3. ^ a b “N-glycosylation of fibroblast growth factor receptor 1 regulates ligand and heparan sulfate co-receptor binding”. The Journal of Biological Chemistry 281 (37): 27178–89. (September 2006). doi:10.1074/jbc.M601248200. PMID 16829530. 
  4. ^ “Receptors for fibroblast growth factors”. Immunology and Cell Biology 73 (6): 584–9. (December 1995). doi:10.1038/icb.1995.92. PMID 8713482. 
  5. ^ “The alternatively spliced acid box region plays a key role in FGF receptor autoinhibition”. Structure 20 (1): 77–88. (January 2012). doi:10.1016/j.str.2011.10.022. PMC 3378326. PMID 22244757. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3378326/. 
  6. ^ “Receptor specificity of the fibroblast growth factor family”. The Journal of Biological Chemistry 271 (25): 15292–7. (June 1996). doi:10.1074/jbc.271.25.15292. PMID 8663044. 
  7. ^ “Identification of a new fibroblast growth factor receptor, FGFR5”. Gene 271 (2): 171–82. (June 2001). doi:10.1016/S0378-1119(01)00518-2. PMID 11418238. 
  8. ^ “FGFR a promising druggable target in cancer: Molecular biology and new drugs”. Critical Reviews in Oncology/Hematology 113: 256–267. (May 2017). doi:10.1016/j.critrevonc.2017.02.018. hdl:10447/238074. PMID 28427515. https://iris.unipa.it/bitstream/10447/238074/1/1-s2.0-S1040842817300859-main.pdf. 
  9. ^ a b “Inhibition of the fibroblast growth factor receptor (FGFR) pathway: the current landscape and barriers to clinical application”. Oncotarget 8 (9): 16052–16074. (February 2017). doi:10.18632/oncotarget.14109. PMC 5362545. PMID 28030802. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5362545/. 

外部リンク


FGF受容体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/20 09:53 UTC 版)

線維芽細胞増殖因子」の記事における「FGF受容体」の解説

線維芽細胞増殖因子受容体」も参照 哺乳類線維芽細胞増殖因子受容体ファミリーFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4の4種類からなる。これらは、3つの細胞免疫グロブリンドメイン(D1から3)、膜透過螺旋ドメインチロシンキナーゼ活性を示す分子ドメイン構成されるFGF受容体D2D3ドメイン相互作用を持つ、D3との相互作用配位子結合特異性にとって最も重要である(後述)。D3ドメインヘパラン硫酸結合仲介するD1D2ドメイン間にある酸性アミノ酸残基わずかに伸長しており、自己抑制機能を示す。この「酸性の箱」とも言うべき構造ヘパラン硫酸結合部位相互作用し、FGF不在の時、受容体活性化防いでいる。選択的スプライシングが起こるため、FGFR12、3、にはそれぞれb型、c型変異型がある。この機構により、7つ異なシグナリングFGFRのサブタイプ細胞表面発現される。それぞれのFGFRは特定のFGFサブセット結合する同様にほとんどのFGF異なるFGFRのサブタイプ結合できる。FGF1は7種の異なるFGFRを活性化可能なので、ユニバーサルリガンドと称されることもある。対照的にFGF7(角化細胞成長因子、英: 'keratinocyte growth factorKGF)はFGFR2b(KGFR)とのみ結合する細胞表面でのシグナル複合体は、2つ異なFGF配位子2つ異なるFGFRサブユニット1つまたは2つヘパラン硫酸分子からなる複合体であると信じられている。

※この「FGF受容体」の解説は、「線維芽細胞増殖因子」の解説の一部です。
「FGF受容体」を含む「線維芽細胞増殖因子」の記事については、「線維芽細胞増殖因子」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「FGF受容体」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「FGF受容体」の関連用語

FGF受容体のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



FGF受容体のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの線維芽細胞増殖因子受容体 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの線維芽細胞増殖因子 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS