F値とT値とH値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/22 20:02 UTC 版)
F値はレンズの明るさを示す指標として広く使われているが、レンズの透過率などの影響により、F値のみを用いて露出を正確に議論をすることはできない。 特に問題となるのは(透過率とは無関係だが)レンズが撮像面から離れるマクロ撮影の場合である。前の節の説明は無限遠の被写体の撮影が前提であるが、マクロ撮影ではその前提が大きく崩れる。レンズ面を通過する光量は同じのまま、レンズを離したことで像が大きくなっているわけであるから、一定サイズの像における光量はその分低下するという理屈である。日本の多くの(大手)メーカはマクロレンズについても通常の公称F値が示される設計としているが、ニコンはマクロレンズを実効F値が示される設計としている。安原のNANOHAx5のようにマクロ専用であるためとしてマクロ撮影時(同レンズの場合は5倍)における実効F値を仕様として公称している場合もある。 レンズの透過率が問題になる場合としては、コーティング技術がなかった時代の表面反射では、例えば1面の透過率が95%とすれば4群6枚構成のレンズで4群=8面から約66%(0.95の8乗は0.6634...)の光量しか透過しないことになる。STFレンズのようにフィルタが含まれている光学系などでも問題となる。光学系の透過率を加味した実質的な明るさを示す指標をT値と呼び、映画用高級レンズでは絞り環がT値表示されていることがある。前述のSTFレンズ等を除くとスチル写真用レンズにはほとんど存在しないがフォトン用クック・アモタール・アナスチグマット2inT2.2(F2)とクック・フィールド・パンクロ4inT2.8(F2.5)、ニコンのFマウント300mmT2.2(F2)が知られている。ただコーティング技術の進歩で表面反射が減り、またレンズを透過した後の光量を測定するTTL露出計が一般的になっていることもあり、一般用途の写真撮影においてF値とT値の差が問題になることはないと考えてよい。 イマゴンなど絞りでなくレンコン状などのグリッドで光量調整するレンズではF値が使えないため、相当値のH値が使用される。これも露出決定に際しF値と同様に扱って問題はない。
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