ELVIS: 68カムバック・スペシャル
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「スティーヴ・ビンダー」の記事における「ELVIS: 68カムバック・スペシャル」の解説
NBCの役員ボブ・フィンケル (Bob Finkel) は、シンガーが提供するエルヴィス・プレスリーの番組を担当するプロデューサー兼ディレクターを探していた。フィンケルは、ペトゥラ・クラークの特番をめぐる論争を知り、ビンダーの反骨性がプレスリーにふさわしいと考えた。プレスリーの番組を制作しないかという申し出を電話で受けたビンダーがこれを断るところに、かつてプレスリーのアルバムに録音技師として参加していたボーンズ・ハウ (Bones Howe) が居合わせた。ハウは、翻意するようビンダーを説得し、ビンダーはとりあえずプレスリーと会ってみることに同意した。 面会した際、ビンダーはその率直さをプレスリーに印象づけた。プレスリーが、自分のキャリアは今どこにあると思うか、とビンダーに尋ねたとき、ビンダーは「今はトイレに入っているんじゃないですか (I think it's in the toilet.)」と答えたとされる。ビンダーもプレスリーも、この特番を制作することにはためらいがあった。プレスリーが、レコーディング・スタジオこそ自分にとってのターフ(本領を発揮できる場所)だと言ったのに対し、ビンダーは、「それなら、あなたはレコードづくりをすればいいんですよ、僕がそれに画を付けますから」と答えた。プレスリーのマネージャーであるパーカー大佐は、この時点で既にこの番組について確固たる構想をもっていたが、事はパーカーの意図したようには運ばす、「スティーヴ・ビンダーという名の若いプロデューサーの勇気のおかげで、エルヴィスは、このクリスマス特番のために、部屋を埋め尽くしたカメラマンたちを前にタキシード姿で「きよしこの夜」をクルーナーのように歌う羽目にならずに済んだ」のであった。1950年代の素のエルヴィスを再現しようという意図から、ビンダーはパーカーの意向に反して、スコティ・ムーアとD・J・フォンタナとのギグの場面を実現した。プレスリーは、黒い皮の衣装に身を包んだ反逆児のイメージを再現し、スタジオの観衆の前で、インフォーマルなセッションを行なうところをそのまま映像に撮らせた。 特番をやる事について、エルヴィスに何らかの疑念が残っていたとしても、それはビンダーのちょっとした機転で消し飛んでしまったことだろう。ビンダーはプレスリーを街に連れ出し、ほとんど誰も彼に気づかなくなっていることを見せたのである。 サミュエル・ロイ (Samuel Roy) によれば、ビンダーは「エルヴィスに周りの環境や取り巻き連中の危険さを警告しようとした」というが、プレスリーは「真剣にとりあわず、耳を傾けなかった」という。プレスリーのマネージャーであるパーカー大佐は自分の意に添わないビンダーを嫌い、ビンダーからの電話を取り次がないようグレイスランドへのすべての電話をとっていた秘書役たち命じたようであった。 シンガー社提供の特番から40周年となった2008年、スティーヴ・ビンダーは番組の制作にあたった当時の回顧録『'68 At 40: Retrospective』(JAT Productions) を書いた。
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