DNAとRNAの塩基対の相補性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/17 03:12 UTC 版)
「相補性 (分子生物学)」の記事における「DNAとRNAの塩基対の相補性」の解説
相補性は、核酸塩基(アデニン、チミン(RNAではウラシル)、グアニン、シトシン)の間の相互作用によって達成されている。アデニンとグアニンはプリンであり、チミン、シトシンとウラシルはピリミジンである。プリンはピリミジンよりも大きい。どちらも、異なるタイプの核酸塩基とだけ塩基対を形成する。核酸では塩基は水素結合によって結びつくが、水素結合はアデニンとチミン(ウラシル)の間、グアニンとシトシンの間でのみ効果的に機能する。相補的な塩基対A=T(A=U)は2つの水素結合を持ち、G≡C塩基対は3つの水素結合を持つ。他の核酸塩基の配置は、すべて二重らせんの形成を阻害する。DNAの二本鎖は逆の方向を向いており、逆平行と呼ばれる。 核酸 核酸塩基 相補的塩基対 DNA アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C) A=T、G≡C RNA アデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C) A=U、G≡C DNAまたはRNAの相補鎖は、核酸塩基の相補性に基づいて構築される。各塩基対、A=TとG≡Cはほぼ同じ位置を占めるため、立体的な歪みが生じることなくDNAの二重らせんが形成される。核酸塩基間の水素結合もDNA二重らせんを安定化する。 二重らせんを形成するDNA鎖の相補性によって、一方の鎖を鋳型として利用して他方を構築することが可能となる。この原理はDNA複製に重要な役割を果たし、遺伝情報がどのように次の世代へ受け渡されるかについての基礎をなしている。相補性はDNAの転写でも利用され、DNAの鋳型からRNA鎖が生成される。 校正(英語版)などのDNA修復過程も相補性に基づいており、相補的でない核酸塩基を除去することでDNA複製の差異のエラーを修正することができる。 一本鎖DNAは相補的なDNAまたはRNAと容易に結合し、ハイブリダイゼーションを行う。この原理は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの一般的な実験技術の基礎をなしている。 相補的な配列を持つ2本の鎖は、センス、アンチセンスと呼ばれる。一般的に、センス鎖は転写されるDNA配列または転写によって生成されたRNA鎖である。一方、アンチセンス鎖はセンス鎖に相補的な鎖である。
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