高度な読書力と速読テクニックの混同
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/10 02:30 UTC 版)
「速読術」の記事における「高度な読書力と速読テクニックの混同」の解説
本来、高速で理解することができる読書能力は、多くの書物を読んだ人だけが到達する高度な読書力である。それは文章全体を順に追い、著者の思考経路をたどって正確な理解を期すものであり、記憶を伴った読書力である。 しかし、1960年代頃から情報化時代が始まり、書籍の内容を思考して理解するよりも、知識を得るだけの読み方が意味を持つようになった。このような社会の動きが、早く知識を得る読みのテクニックとして速読術の登場を促した。確かに現代は膨大な情報が世に溢れており、日常生活でもビジネスでも、その情報をすばやく処理することは不可欠である。ここに、速読術の存在意義があることは間違いない。しかし、速読術のテクニックを使って、高速の情報処理ができたとしても、それが高度な読書力とは必ずしも言えない。「すばやく欲しい情報を得る」能力は高度な読書力の一面を表していることは確かだが、速読術のテクニックを使って内容を把握したとしても、高度な読書力の育成には、必ずしも結びつかないということである。 もちろん、すでに多くの読書経験を持ち、思考力や知識を豊富に有している人が、速く読む力を身につけるなら、高度な読書力の獲得に大いに役立つ。しかし、本を読む習慣のない人が速読術のテクニックを駆使したとしても、読書力の向上に役立たないだけでなく、読書の本質を見失う可能性さえある。高度な読書力を得るためには、多くの書物を読み、語彙力や知識力、思考力などを磨くことが不可欠と言える。 高度な読書力に発達するのは全ての文字を順に読んで、逐次理解しながら読んでいく読み方の読書である。この読み方(全部読み)で速く読めるようになる速読術なら、そのトレーニングは高度な読書力の育成に役立つ。一般に、速読術という言葉は、部分読みも全部読みも、また理解の低い読み方も高い読み方の意味も含んでいる。速読術を学ぼうとする人は、この点をよく考慮して方法を選択することが賢明であろう。
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